タクシー初乗り「410円」に思う

2017.03.14発行 Vol.290
東京ではタクシーの初乗り運賃が、今年の1月末から410円になりました。

これまで約2キロ730円だったものを、最初の1キロまでを410円とし、その後237メートルごとに80円加算され、2キロでは従前の730円と同じになります。そこまでは値下げとなりました。一方、距離や時間待ちによる加算運賃も同時に変更したため、6.5キロ以上乗車する場合は、値上げということになりました。私は、羽田空港から自宅に戻るのに、定額運賃を使うことが多いのですが、それも6600円から6900円に値上げとなりました。

私は、この運賃改定は問題があると思っています。もちろん、短い距離を乗る人には、とても良いことだと思いますが、6.5キロ以上乗る人たちには、値上げで迷惑な話です。

これにより、タクシー業界は短い距離を乗る人たちの利便性を高め、その層の顧客の掘り起こしを行おうとしていますが、それならば、単に2キロ以下の料金を下げるべきです。それで新たな顧客が増えるなら、乗車率のアップや売上げのアップにつながるからです。そうせずに、見かけ上の値下げをしながら、実質的には、長い距離を乗る優良客の犠牲の上に、新規客を獲得するという信じられないことを行ったのです。

長距離を乗る人も短い距離を乗ることもあるのだから問題ないと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの乗客は通常よく使う乗り方が決まっており、短距離も長距離も利用するという人は少ないと思います。私は、今回の表面上の値下げは、実質的な値上げだと感じています。繰り返しになりますが、顧客の利便性を高めて、自社の収益性を上げるなら、2キロ以下の料金を値下げすればいいだけの話です。

なぜ、このようなことが起こるのかと言えば、タクシー業界が既得権益を持ち、それが規制で守られているからです。小泉政権のときにタクシー業界は大幅な規制緩和が行われましたが、その後は、台数が徐々に削減され、結局は規制強化の方向に進み、物価が上がらない中でも料金の上昇が行われました。本来の望ましい競争になっていないのです。そして、今回の実質値上げです。

本来行うべきは「ウーバー」などの開放です。アメリカに行けば、随所にウーバーの看板を掲げた車を見かけます。利用者がその都度評価を行うため、既存のタクシーよりも安全でサービスが良いという声をたくさん聞きます。日本でも、規制緩和を行い、利用者の利便性を高めるべきです。

もう死語と化した感のある「アベノミクス」ですが、その3本目の矢は「成長戦略」だったはずです。その根幹は規制緩和だと首相は言っていましたが、見せかけの改革ではなく、本当の意味での規制緩和を進めなければなりません。そうしなければ、バブル崩壊以降成長を止め、この先も高齢化と人口減少に苦しむ可能性の高いこの国の経済の活性化はないと思います。

【小宮 一慶】