東京駅で新幹線を利用された方は、目にしたことはあるかもしれません。
新幹線ホーム上で整列して一礼している方々がいます。この方々は車内清掃を担っている方で、取組みがかつて各方面で話題となり、ハーバードビジネススクールのケーススタディでも取り上げられたこともある、テッセイ(株式会社JR東日本テクノハートTESSEI)さんです。
冒頭の言葉は、同社の組織変革が始まった頃に、意識・意欲が変わり始めた女性従業員が主体的に発表したものです。
かつて同社では、清掃業で言われることもある「3K(きつい・汚い・危険)」なども背景として、従業員自身が仕事に誇りを持ちにくかったり、定着率の低さ、多数のクレーム発生、本社部門が現場をしっかりと見ていない・把握していないという「会社と現場の乖離」などが問題となっていたようです。
対応策の詳細は組織変革を主導した矢部輝夫氏(元専務取締役)の書籍や様々な公開記事に譲りますが、意識改革やミドルマネジャーの育成、認め合う文化の醸成などのための取組みを日々徹底し続けてきたことで、変革が実現されたとのこと。
重要な成果の1つは、自分達の仕事が「清掃業」を超えて「サービス業」であるとの意識が社内に浸透したことです。自分達は新幹線利用者とともに素晴らしいシーンを作っていく役目を担い、「『掃除』というメンテナンスで新幹線を支える『技術者』である」「業務の時間は『清掃の時間』ではなく『新幹線劇場のショータイム』である」との再定義がなされました。
意識が変わることで、現場改善のアイデアが現場から次々と出てくる組織への変化、仕事への誇りの実感、お客さまにも頼られる存在への転換などがなされていったようです。
テッセイさんの経営事例からは豊かな教訓が得られると思います。
個人的には特に意識改革のところです。多くの企業様は、作った実行計画を担う社員自身の意識が変わることこそが重要だと思っていても、肝心のそこがなかなか変わっていかない中、同社では単に「○○の意識を持て」などの掛け声的取組みではなく、「自分達は何者なのか」というミッション・仕事の再定義のプロセスを通じて実現していった点に感銘を覚えます。