お客さまの組織課題を解決する際に意識していることがあります。それは、「仕組み」「仕掛け」「仕切り」の3点セットで解決策をデザインすることです。
◆「仕組み」について
日常的に私たちは、「仕組み」を使って自分の行動をマネジメントしています。たとえば、手帳などがそうです。アポイントの計画や自分がやるべきことを時間軸にそって管理しています。手帳がないと人との約束を忘れてしまうし、思いついた端から実行するので終わりが見えません。
◆「仕掛け」について
仕組みがあっても、実際に行動を起こさせるような「仕掛け」がないと人は動かないものです。
私のお客さまで、「クロージングコンペ」という仕掛けをしているマネジャーがいました。
クロージングとは「この製品を使うとしたらいつからになりますか」と購買の意思決定を促すような言動です。ただ、こういった最後のひと押しができない方もいます。
そこで、営業日報にクロージングのひとことを言ったら1ポイント、受注できたら2ポイント…のようにポイントを決めて、チーム内で競わせるようにしました。これによって、みんなが提案後のクロージングを意識して行うようになり、受注率が高まりました。
◆「仕切り」について
仕組みと仕掛けで行動は変わっていきます。ただ、このとき全員を一様に捉えることはできません。パっと動く人もいれば、じっくり考える人もいます。新しいものが好きな人もいれば、いつものやり方を続けたい人もいます。
そうなってくるとリーダーが「仕切る」必要が出てきます。仕切るといっても従わせるのとは違います。意見を聞いたり、フィードバックをしたりと一人ひとりに働きかけるのです。
このように「仕組み・仕掛け・仕切り」を3点セットで活用することで、人の行動をより良い方向に変えて行くことができます。
では、なぜこの3つが必要なのでしょうか。
最近、気づいたのはある隠れた前提です。それは「そもそも人は多様である」ということです。ことさらに「多様性を活かす」というまでもなく、そもそも人は違っているし、違っていて良い。にもかかわらず、経営者は一様に管理してしまうことがあります。
なぜなら、その方が楽だからです。ところが、長い目で見るとうまくいかなくなります。それぞれの持ち味が活かせないし、互いから学ぶことができないからです。つまり進歩しなくなるのです。
そのための具体的な方法論が「仕組み」「仕掛け」「仕切り」の3点セットです。「仕組み」によって多様な私たちに企業の方向づけが共有され、「仕掛け」によって互いから学ぶ機会が生まれます。ところがうまく乗れない人もいるので「仕切り」によってフォローするのです。
私たちは、変わるのが嫌なのではありません。「変えさせられる」のが嫌なのです。
それぞれの多様なあり方を受け入れることで、自らの行動を良い方向に変えるための環境をデザインするのがマネジメントの本質です。