松下幸之助歴史館をご存じですか。大阪・門真市のパナソニックの敷地内にある松下幸之助さんの経営と人生について学ぶことができる資料館です。
この歴史館では松下幸之助さんの数々のことばが印刷されたカードが展示とともに設置してあり、来場者はそのカードを手に取り持ち帰ってよいことになっています。
研修で先日訪れたときに、気になって手に取ったのがこのことばでした。
「自修自得」
例えば経営学というものをとってみよう。経営学は人から教わったり、本で読んだりすることができる。しかし、万巻の経営学の本を読んだからといって、それで経営というか、仕事が完全にできるというものではない。それはいろいろな面で参考になるかもしれない。しかし生きた経営なり仕事というものは教えるに教えられない、習うに習えない、ただみずから創意工夫をこらしてはじめて会得できるものである。
その自得するとう心がまえなしに、教わった通り、本で読んだ通りやったとしても、一応のことはできるかもしれないが、本当のプロにはなれないと思う。自得していこうという前提に立って、はじめてもろもろの知識も生かされ、人の教えも役に立つわけである。
出典『その心意気やよし』松下幸之助
研修やセミナーをさせて頂く機会が多いため、学びとそれが身につくことについてよく考えます。身につくだけでなく、自分のものにされている方、それを自由自在に発展させておられる方にもお会いすることがあります。そして自分自身も学びの過程です(たぶんずっと)。
経営や仕事は、マニュアル通りにやれば全員同じ結果になるものでもなく、原理原則だけでいきなり何かを動かせるわけでもありません。そこにある環境や要素、多種多様な人、そのつながりなど、個別の状況は異なります。だからこそ、個別に考え体感しながら動かしていくことしかない、そう思います。
ただしその時に悩み苦しみ、考え抜くにあたり、助けになるのが学んだことです。よい学びとは、そのときに「問答」できるものであるように感じます。個別の状況において、そのテキストと対話しながら自分の考えを深めることができるか、迷いを晴らし、道を決めることができるか、そういう対話や壁打ちの相手となりえるものが良い学びだと思います。
ですから、悩みが本当に悩みでないうちは、悩むほどにまだ実践がないうちは、学びはどうしても表面的にならざるを得ません。
例えばユニクロの柳内さんは、その問答の相手はドラッカーの本が多かったようです。
こういった経営学的な本以外でも、優れた経営者の自伝から、選択や行動の在りたい姿を問う方もいらっしゃいます。
皆さまにとって、そんな対話できるテキストは何でしょうか。
そして何より、自得したいという切迫感のある気持ちをもっていかに経営や仕事に向き合えているか。こちらは常に自身に問いつつ、皆さまにとっては部下や他の社員の気持ちに火をつけることも大切な役割だと思います。