成長している企業さま、社員が自律して働いている企業さまにお話を伺っていると、いくつかの共通点があることに気付きます。
そのひとつに、「社員に経営の数字がオープンになっており、その意味がきちんと説明されていること」があります。
期初に数値目標をつくっている企業さまは多いと思います。社員としてはその部署の目標を与えられ、達成することが評価にもつながる、そういう環境に置かれていることは多いでしょう。
しかし、今回お伝えしたいのはその観点ではなく、下記のようなことをしているかどうかです。
①会社のPL、BSがわかるように全社員に公開している
②その内容について、社員が全社におけるビジネスの流れや自分の仕事の意味が分かるように分かりやすく工夫して伝えている
①
中小企業や未上場の企業では、経営層だけがすべての数字を見ている、というケースもよく聞きます。部長クラスでも、全体像は知らないということも少なからず遭遇します。
かたや、PLだけでなくBSも、包み隠さず社内にオープンな会社があります。社員さんはどちらの経営に対し、信頼できると感じるでしょうか。
オープンにしていないのは、単にオープンにする必要を感じていないだけかもしれませんが、前者の会社ではオーナーや経営者だけが利益を得ている、社員さんたちはそのために「働かされている」と感じても不思議はありません。「見せない=見せられない」のだろうと感じるのです。
ここで、本当に「見せられない」状態、つまり社員さんが見たときに不信感を感じたり、不安を感じる財務状況だからという場合は特に、経営者は危機感を持つべきです。そういう姿勢の会社で、社員さんだけ熱心に働く、などという虫の良い話はないからです。
不信感を感じるような経理処理や明らかに不適切な使途の費用(異常に役員報酬が高い、公私混同している経費が多いなど)がある場合は早急に正すこと、不安を感じる財務状況であれば、どのようにして改善するのかの道筋、計画を立てて一緒に説明することが必要になります。
②
もうひとつは、「お客さま」に貢献するという仕事の姿勢を社内に浸透させるのは大前提として、その結果としての数字、そして社員さんに支払う報酬の原資がどうなっているのか、という観点で数字の「見方」を教え、仕事との繋がりを伝えているか。
弊社で幹部研修などを行っていますが、皆さん実務の経験は豊富でも、財務諸表の見方が分かっている方が本当に少ないと感じます。教えてこられていない、勉強していない。社内でPLやBSがオープンになっていたとしても見方が分からないという状態の方も多いのです。
日々行っている仕事が、どのようにお客様に評価され売上につながっているのか、生産活動がどのような原価として見えているのか、様々な社内コストは何にどれほどかかっており、自分たちの給与の源泉である一人当たり付加価値はどれくらいあるのか。最終的な利益はどれだけ残っており、それがキャッシュとして財務的な安全性につながっているか。未来に向けた投資はどうか。十分な投資や財務の安全性のために、今後もしっかり昇給していけるように、今あげている利益を増やすなら、自分たちにできることは何か。
難しく伝えるのではなく、自社の事業に即して、いかに分かりやすく伝えるかの工夫も大事です。
冒頭申し上げたような企業さまにおいては、経営者がこれらのことを意識して行われることで、社員さんが一人ひとり自分の仕事の役割を意識して、自分たちがこの会社で長く働き続けることに能動的に関わっている状態まで持ってこられていました。
数字数字・・・という目標だけを追いかけさせるのではなく、お客さまへの成果とその対価の意味、自分たちの仕事や人生にどうつながるのか、とうことまで社員さんに理解していただく。そこまでやる姿勢が差を生むように思うのです。
本コラムを読んで頂いている方には現場社員の方もいらっしゃると思います。苦手意識を持っている方ならなおさら、財務会計は自分に関係ないと思わず、簡単なことからでよいので勉強してみてください。自分の仕事が会社を存続させ成長させることにどう繋がっているか、数字からも理解してみると、ひとつ視点をあげることができるように思います。