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経営理念をつくるときは、それを語る「ここぞの場面」を意識する

経営のお役立ち情報
2020.12.08

創業者のあとをどう引き継ぐか、これは大きなテーマだと感じています。良くも悪くもその社長さんの会社になってしまっていて、「わたし達の会社」になっていないことがその難しさを生んでいるように思います。たとえ、幹部だとしても、一社員としてオーナーシップを持つのは難しいところがあります。

わたしのお客様の一人も半年前は、次期社長だったのですが、今年度に入って、正式に社長になりました。中途で入社されて、18年近くこの会社で働いてきました。営業部隊をまとめてきた大番頭です。先代の社長さんは、50を過ぎてこの会社を立ち上げ、とある分野でシェア日本一になりました。勉強熱心で、そして行動力もあるやり手です。しかし、年齢のこともあり、いよいよ次の世代にバトンタッチしたいと考えたのでした。お声かけいただき、色々お話した結果、新社長とともに経営理念をアップデートしていくことを依頼されました。ここ半年ほど、新社長と月2回のコーチングセッションを行ってきました。ここへきて、ようやく彼の考えるこの会社らしさや仕事の在り方が、経営理念として形になってきました。

「あなたが社長の座を譲る時には、どんな社長になっていたいですか」

最初のセッションで、あなたが社長の座を譲る時にはどんな社長になっていたいですかと問いました。答えは「大きな決断を下せる人間になっていたい」でした。これだけ読むと覚悟が決まっているように見えますが、「なりたい」というより「ならなきゃいけないんですよね…」という感じでした。今までは、決断をするのは(先代の)社長であって、自分ではなかったという現実が重くのしかかってきているようでした。

最近になって、同じ質問をしてみました。すると「的確な、思い切った決断ができる責任者になっていたい」とお答えになりました。最初は漠然と「大きな決断」と言っていたのが、「的確な、思い切った決断」に変わりました。そして、自分のことを「責任者」と表現しています。この回答を聞いて、「覚悟が決まったんだな」と感じました。これは、半年かけて、会社のあるべき姿や自身が大切にしている仕事への思いをセッションの中で語ってきたのが大きいと思います。それによって、自分の中にある仕事や会社への思いと深く向き合うことができたのです。また、これまで以上に経営課題について、判断を求められる場面が増えていました。特に4月に入ってからは、コロナショックもあり、売上もあり得ないレベルで減少しました。新社長として焦りや不安もあります。それでも「こんな時だからこそ、うちの会社が今やるべきことを何か」を幹部と共に考え、前に進んできました。結果として、今まで進まなかった、ある業務の画期的な改善が進みました。
自社が何をすべきか考え、いくつもの小さな決断を下すなかで、彼の覚悟が育ったのだと思います。

「どのような場面で経営理念を語りたいですか」

この半年間、伴走してきたわたしが意識していたのは、経営理念をどのような場面で語りたいかを考えていただくことでした。経営理念は様々に使われます。ホームページに載っていたり、会議室に飾られていたり、毎朝社員が唱和していたり。普段使いとしてはそうでしょう。ただ、本当の価値が問われるのはどんな時でしょうか? 今回のコロナショックような有事に遭遇した時、社内でも意見が割れるような時、様々にステークホルダーがいる中で利益が相反する時など、経営者として決断を迫られる時ではないかと思います。その時、拠り所になるのは何でしょうか? 現状分析や過去の類似の状況での実績、他社の動向、リスクを想定したシミュレーションなど的確な判断材料が必要です。ただ、そこにある正解は一つとは限りません。正解がないケースもあります。そんな時、今までなら「で、どうします?」と先代の社長に聞けば良かった。これからは、「で、どうします?」と聞かれる立場になるわけです。その決断をする時に根拠とすべきなのが経営理念です。

経営理念は、社員の行動につながって初めて価値を持ちます。だから伝え方、伝わり方が大切です。ポイントは、それを語るべき「ここぞの場面」を意識することです。もちろん、ここぞという場面でブレてしまっては、社員はシラケるばかりです。例えば、理念の中で「お客様第一」と言っておきながら、「売上第一」のような決断をしたらどうなるでしょうか。こうした一つひとつの決断の積み重ねが風土を作り、その会社らしさを作っていきます。社員みんなが、納得して行動に移せるよう、語る場面を意識しながら、自分の言葉で紡ぎあげていくことが大切なのです。

経営理念を語り継いでいくことが「わたし達の会社」の強みを作り、社会を進歩させる

特に、ご紹介した社長さんの場合は、「部下にもよく言うんですけどね…」と部下に仕事や会社のあり方を語る場面をイメージされているときが一番イキイキとしています。彼の情に厚い人柄が現れています。恐らくそういう側面があるから、「決断できる人間になりたい」とおっしゃったのだと思います。時にはクールに決断しなくてはならない、と。ただ、わたしは、この方の良さがそれでは生きないだろうなと思いました。彼が彼だけが持つ思いを語るからそれを聞くみんなの会社になっていくのだと思ったのです。

これからの時代、正解がますます一つに定まらない一方、AIやビッグデータなどの活用で判断材料が高度化してくる側面もあります。そして、精度の高い最適解が示されるようになるでしょう。その時に、それを根拠に「判断」した積み重ねは、コモディティーしか生まない可能性もあります。確かに最適なのかもしれないが、そこにその「会社らしさ」はない。つまり、差別化されないのです。向き合うべき葛藤に向き合い、決断し、その時に語られる思いが大切です。そのような差別化がなされないのであれば、世の中に健全な切磋琢磨は生まれません。経営の面白さは、その決断の積み重ねによって確かに社会の進歩に貢献しているという実感にあるのではないかと思います。


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