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一歩踏み込む

2013.10.22発行 Vol.209

先日、あるところで講演をしていたら、「上手(かみて)にホワイトボードを置きます」と言われた。それで大丈夫だと思っていたら、私が思っていたのと違う方向に、ホワイトボードが置いてあった。私は「上手」というのは、お客さまから見て「右側」だと思っていたので、そのことを講演を担当してくれた人に尋ねると、「講演者が登場する方が上手だと思っていました」というのです。

私は、年に200箇所近く、講演や研修をしますが、大きなホテルなどで登壇する時には、お客さまに向かって右から出る時も左から出る時も、どちらもあります。ホテルの部屋の状況などによって違うからです。「講演者の登場する方」が上手なら、その場その場で上手が違ってしまいます。

また、「右側」、「左側」と言っても、お客さまから見てなのか、自分から見てなのかで方向が逆になってしまいます。そういう、混乱をなくすために「上手、下手」という言い方が工夫されたのだと思います。

このことで思ったことは、何事にも一歩踏み込んで物事を考える習慣をもつことが大切だということです。人の言うことをそのまま鵜呑みにせず、まず、なぜそのような言い回しになっているのか、なんのためにそのようなことをしているのかということを考えなければなりません。ルールを決めた裏には、何か理由があったはずです。

そして、それに疑問を感じたら、人に聞くなり、自分で調べてみることも大切です。今ならネットで多くのことを調べられるので、手間はほとんどかかりません。もちろん、ネット上の情報には、それほど信ぴょう性が高くないものもありますが、信頼できる情報もたくさんあります。本で調べるのももちろん良いことです。

ただ単に、言われたことを鵜呑みにするのではなく、一歩踏み込んで調べてみるのです。このことは、ものを調べるだけでなく、物事を頼まれた時にも、言われたことをそのままやるのではなく、さらに何かできないか一歩踏み込んでやる習慣につながります。

若い頃は、言われたままのことをそのままある程度やっていればそれで一定の評価を得られるかもしれませんが、地位が上がれば上がるほど、自分で考えなければならないことが増えます。そうしたときに、普段から一歩踏み込む習慣をもたない人、つまり、言われたことしかやってこなかった人は立ち往生します。

松下幸之助さんは「素直」というのは、人の話を単に「ハイ、ハイ」と聞いているのではなく、人の話を一旦受け入れた上で、前向きに対応することだとおっしゃっていますが、私もその通りだと思います。

かくいう私も、思い込みや浅い知識しかないことも少なくありません。一歩踏み込むことを自分にも言い聞かせています。


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