ここのところ、中期経営計画の策定や実行を促進するお仕事が続いています。経営者や幹部の皆様とディスカッションをしながら、会社のありたい姿を描き、実現に向けた取組みや道筋を考える仕事です。
そのなかで改めて大切だと思ったことがあります。それは、自社の存在意義を語り合い、言葉にしていくことです。
この「存在意義」については様々な呼び方がされています。経営理念だったり、ミッションだったり、パーパスだったりします。いずれの場合であっても、どのような存在として社会やお客さまから憶えられたいのかということです。加えて重要なことは、そのような存在であることに経営者も社員もしっくり来ていることです。どこの会社のものかも分からない格好だけが良いものでは原動力になりません。それに、この軸が定まらないといくら外部環境分析をしても「これだ」という戦略がでてきません。
原動力も進むべき方向もないとすると、普通に考えれば停滞してしまいます。それでも日々、お客さまに商品・サービスを提供してきているので、良くも悪くも慣性が働いています。また、明確になってはいないものの、日々のお客さまとの対話を通じて、「ウチはこういう会社だ」という潜在的な意識はあるものです。
私が関わらせていただいている会社様は、いずれも社歴が長く、すでに創業者から次の代に引き継がれています。会社の歴史や創業時の思いは、商品・サービスやビジネスモデル以上に大切な財産です。ところが、普段はなかなか語られません。会議室に先代の頃から唱和されている「経営理念」はあるものの、ただの評語になってしまっています。
皆様の会社はいかがでしょうか。こうした状態を放置すると、いつか慣性は惰性となってしまい、組織は求心力を失うばかりです。「私たちは、何者なのか」「どうありたいのか」という思いを言葉にしていく機会を「狙って」つくる必要があります。そのような機会によって、意思決定のよりどころとなる価値観が明確になり、マネジメントチームのチームビルディングも進んでいきます。
ある会社様では、創業期から発行してきた社内報をもとに自社の存在意義を議論しました。社内報には、毎回先代の社長から「わが社のありたい姿」が語られていました。その内容を幹部で読みながら以下のようなテーマでディスカッションを繰り返しています。
・わが社がどのような考え方や価値観を大事にしてきたか
・先代はどのような言葉を語ってきたか
・過去にどのような外部環境の変化があったか
・それに対してどのように対応してきたか、あるいはできなかったか
・では、今後、どうあるべきなのか、ありたいのか
こうした議論を繰り返すことによって、同社の存在意義が少しずつ言葉になってきています。まだまだ、部署によって存在意義の実現度にばらつきはあるものの、拠り所にすべきことが明確になったことで課題に対する取り組みにスピードが出てきました。
私たちは、つい短期的な結果に捉われてしまいがちです。解決のスピードをあげようとペダルを漕いでも、長期的な軸がなく空回りしていることも多々あります。また、それに気づかないことも多いです。漕げば進むと思い込んでいるからです。時に立ち止まって、振返り、お客さまや社会に役に立つための軸をみんなで明確にしていく。そのような大きな視座に立ったマネジメントを行いたいものです。