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「日本の自動車市場に関する考察」

知恵のバトン
2024.09.24

街中で外国車が走っているのを目にされることが時々あると思います。中には外国車に乗られている方もいらっしゃるかもしれません。日本の新車販売台数における外国車(外国メーカー車)の割合は約6%(2022年、四輪車)であり、それらは海外から自動車運搬船で日本に輸入されてきた車ですが、日本が輸入車にかけている関税が何%かご存じでしょうか。5%や10%ではありません。答えはゼロ、すなわち無関税です。「関税がかかっているから外国車は高い」と思われていた方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうわけではないのです。また、乗用車だけではなく、トラック、バス、自動車用部品も同様に無関税です。乗用車に対しアメリカは2.5%、中国は15%EU10%(対域外)の輸入関税を課していることと比較しても、日本は国内メーカー同士だけでなく、外国メーカーの車とも同じ土俵で戦う非常に競争的で開放的な市場といえるのです。

 

一方世界市場に目を転じると、世界の新車販売台数における日本メーカー車の割合は約28(2022)と、販売台数の4台~3台に1台を日本メーカーの車が占めています。様々な理由があると思いますが、上述のように他国とも同じ土俵で戦う競争環境が国内に存在することが、日本の自動車メーカーがこれまで世界で高い競争力を発揮してきた一つの要因といえるのではないでしょうか。産業政策という観点でみると、自国産業保護のために高い関税を課すのは合理的ですが、世界市場への展開まで視野に含めると、そうした保護政策を続けることは、世界に伍する競争力の育成という意味ではむしろ足枷になる可能性があります。もちろん雇用への影響や安全保障面のリスク等とのバランスを考慮する必要はありますが、基本的には自由な市場で世界と戦うことが、長期的な日本の産業競争力向上につながるものと考えます。

 

目下、各国でのEV(電気自動車)の販売減速が報道されており、ハイブリッド車を得意とする日本メーカーには追い風となっているようです。しかし、2023年の世界の新車販売台数に占める電動車(EVおよびプラグインハイブリッド車)の割合は2割近くに迫り、同2%程度の日本市場とは大きく異なるスピードで電動化が進行しつつあることには留意すべきです。脱炭素の大きな流れが続く限り、今後も中長期的には自動車の電動化が進んでゆくと私自身は考えており、今までのような競争環境が一変する事態は避けられないと思います。競争的・開放的な日本市場では、海外メーカーの競争力が相対的に高まれば一気に攻め込まれる可能性もあります。日本の基幹産業たる自動車産業がわが国経済に与える影響は大きく、日本メーカーがこれまで培った競争力を維持発展させ、100年に一度といわれる大変革期にどのように対応してゆくのか、今後も注目してゆきたいと思います。

小宮 弘成


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