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「セブン&アイに対するM&A提案の今後」

小宮一慶のモノの見方・考え方
2024.09.24

アリマンタシォン・クシュタール(以下クシュタール)がセブン&アイホールディングス(以下、セブン&アイ)に対して買収の提案をしています。
クシュタールは2022年で、米国で約7100店舗、カナダで2100店舗などのほか、欧州なども含めて全世界で14500店舗を展開する小売業チェーンです。
セブン&アイは当初のクシュタールの買収提案を拒否しましたが、今後の展開はどうなるのでしょうか。

セブン&アイがクシュタールから当初の買収提案を受ける前には、時価総額は約4.6兆円でした。現在では、約5.6兆円です。約1兆円株式の時価総額が上がりました。
これは、クシュタールによる買収提案があったことと、今後、クシュタールがさらに買収価格を上げて買収の再提案をしてくる可能性があるからです。
セブン&アイとしては、最初の提案に対する拒否回答も、そして今後の決断も社外取締役を含めた取締役会で決せられることとなりますが、私は、セブン&アイがクシュタールに最終的は買収される可能性があると考えています。

まず、取締役は株主の代表者です。株主にとっての企業価値を高めるのが一義的な仕事です。
今回のような買収提案がなされた場合には、現経営陣が、クシュタールなどが提案する株式の価値を上回る価値を近い将来に出せるかどうかが一つの大きな論点となります。
クシュタールからの提案を拒否するのであれば、その提案された株式価値を将来に出すという根拠を示さなければなりません。
もちろん、企業の価値という場合には、株式の価値だけでなく、お客さまなどを通じた社会全体や地域社会に与える価値や、従業員たちの雇用、待遇などを考えなければなりませんが、それらをすべて含めた企業価値を、買収されないことで高められるのかを説明する必要が取締役会には課されます。

今回の買収に際しては、北米主体の会社が日本のコンビニを経営できるのかということや、セブン&アイには警備会社も含まれるので、国家安全保障上買収は難しいといった意見がありましたが、大きなハードルにはならないと私は考えています。
セブン&アイは北米での大規模なコンビニ事業を行っています。日本企業でも北米のコンビニを経営することは十分できています。
逆に北米主体の企業であっても、日本での経営(オペレーション)は、現在のセブン&アイの経営陣に任せるなどすれば十分にできますし、それを考えているはずです。
警備会社に関しては、買収前に売却すればいいでしょう。

クシュタールの買収に関するファイナンス上の懸念をする人もいますが、被買収企業(ここではセブン&アイ)が買収に際しての借入れを返すLBO(Leveraged Buy-out)なら、セブン&アイの収益力を考えれば可能だと考えられます。
いずれにしても、セブン&アイがクシュタールからの次の買収提案をどう判断するかは取締役会の判断によります。
クシュタールから見れば、このところ以前より少し円高に振れているので、ドル建てでの買収価格が上がるという問題はありますが、セブン&アイのコンビニ事業、とくに北米での展開に大きな魅力を感じているクシュタールから見れば、さらに買収価格を上げた提案をしてくる可能性は高いと考えられます。
そうなれば、セブン&アイの取締役会は、もしその提案を拒否するのであれば、それだけの株式価値や企業価値を出せるような戦略上の発表をすることに迫られます。
場合によっては、拒否することによりさらに自分たちに課されるハードルを高めることにもなりかねず、拒否を続けられるかは疑問です。

小宮 一慶

 


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