私は2024年にプライベートも含めて年間136泊ホテルに宿泊しました。2024年は過去最多でしたが、ここ数年は毎年100泊程度ホテルに宿泊しています。そんな私にとって気になっているのはホテルの宿泊費です。出張の多い方は実感があると思いますが、最近ホテルの宿泊費がどんどん上がっています。
総務省が発表している消費者物価指数を確認すると、2020年を100とした場合、2024年(年平均)の「宿泊費」は、なんと154.1と約1.5倍になっています。ここ最近、インフレを実感することがありますが、2024年(年平均)で「総合指数」が110.7であることを考えると「宿泊費」が突出して上がっていることが分かります。
なぜホテルの宿泊費が突出して上がっているのか?人手不足で人件費が高騰しているからという原価の要因もありますが、同じく人手不足で悩んでいる「外食」は同指数が111.8と「宿泊費」ほど上がっていません。インバウンドなどの影響で稼働率が上がっているということも要因としてありますが、それ以外の要因を思いつきますでしょうか?
私は「宿泊費」がこれほど上がっている理由は“ダイナミックプライシング”の影響だと思います。ダイナミックプライシングとは、商品・サービスの需要に応じて価格を変動させる仕組みで、変動料金制とも呼ばれます。現在の多くの宿泊施設は宿泊する時期や予約をするタイミングで価格が異なります。出張の多い方ならご存じかと思いますが、地方都市で人気アーティストのライブや学会がある際は宿泊費が高騰します。普段1万円で宿泊しているホテルが平気で3万円になることもあります。それ以外でも桜や紅葉の時期の京都や雪まつりの時期の札幌、GWやお盆、年末年始なども驚くほどの金額になります。このように価格が変動する商品・サービスは、消費者にとって元々いくらなのか把握しにくいため、値上げがしやすいという特徴があります。
また、上記のような一般消費者向けの小売り価格だけでなく、企業間のBtoBでも上がりやすいものとそうでないものがあります。中小企業庁が昨年12月に発表した『価格交渉促進月間(2024 年9月)フォローアップ調査結果について』を見ると、対象業種の中で最も価格転嫁が遅れているのが「トラック運送」です。人手不足が社会問題になっているので意外に思う方もいるかもしれません。これは業界的に3次下請け・4次下請けが当たり前の構造であることが要因です。極端な話ですが4次下請けが値上げをしてもらうためには、3次下請け・2次下請け・元受けが許可した上でやっと発注者である荷主が値上げを認めてくれます。途中の段階で断られたら、値上げをすることができません。
このように価格が決まる上で、値付けの仕組みや業界の構造が影響しています。京セラの創業者である稲盛和夫さんも「値決めは経営」という言葉を残していますが、価格が決まる世の中の仕組みを理解することも大切です。