突然ですが、皆さんの会社では、20代の社員が減り続けていないでしょうか。また、全社の年代別社員数において、20代の社員が占める割合が下がり続けていないでしょうか。
もちろん、20代の社員数が増え、構成比率も上昇している企業もあるかもしれません。しかし、私が経営コンサルタントとして関わる企業の中では、そのようなケースは決して多くありません。
そもそも、各種調査でも若年層の労働人口が減少し続けていることが明らかになっています。ですから、このような状況自体は驚くべきものではありません。また、人手不足感が強まる中、初任給の引き上げなど採用競争が激化し、とりわけ中堅・中小企業では20代社員の減少がより深刻になっているかもしれません。
こうした状況下で、経営者や経営幹部が特に気をつけるべきことは何でしょうか。もちろん、採用競争力を高め、若手社員を増やす努力は欠かせません。しかし、それだけではなく、現在の若手社員の減少という現実を踏まえたうえで、企業としてどのような対策を講じるべきか。本記事では、その点について考えていきます。
まず、大前提として、
「現在の若手社員を取り巻く環境は、経営者や経営幹部(40代~50代)が20代だった頃とは大きく異なる」
と考えるべきでしょう。
では、具体的にどのように異なるのか。
まず、同期や同年代の同僚が少ない という点が挙げられます。その結果として、若手社員は必然的に年上の世代に囲まれることになります。実際、一つの部署に20代が一人しかいない、という状況は決して珍しくありません。さらに、中間層の社員が少ない場合、若手社員はかなり上の世代と直接仕事をすることもあります。
この状況がどのような問題を引き起こすのか。
経営コンサルタントとして現場で感じる課題を、3つご紹介します。
1点目:同期や同年代との切磋琢磨の機会が少ない
かつて20代の社員が多かった頃は、同期が活躍したり昇進したりする話を聞くことで、良い意味での「焦り」を感じ、それが成長のエネルギーになっていました。しかし、同期や同年代の社員が少ないと、こうした切磋琢磨の機会が減少し、成長意欲が高まりにくいという懸念があります。
2点目:若手社員に過度な負担がかかる
特に、中間層の社員が少なく、ベテランと若手社員のみで構成される組織では、若手に業務負担が集中しがちです。一見すると、若手社員が重要な役割を担い、早くから活躍しているように見えるかもしれません。しかし、その裏で不満が蓄積し、突然の退職につながるケースも少なくありません。
3点目:同世代の相談相手が少ない
同期の人数が減っていることにより、同世代の相談相手が少なくなっている という問題もあります。かつての若手社員は、同期と飲みながら悩みを共有し、愚痴を言い合うことでストレスを発散し、前向きに働くことができました。しかし、現在はそのような機会が減少しています。
誰にも相談せずに退職代行を利用して退職する若手社員が増えている背景には、こうした状況が影響しているのかもしれません。
では、これらの問題に対処するためにはどうすればよいのでしょうか。私は大きな方針として、次の2点をおすすめしています。
①社内外を問わず、同世代と交流する機会を提供する
②経営層・経営幹部自身が、若手社員と会話する機会を増やす
① 同世代と交流する機会を提供する
この取り組みは、前述の 「切磋琢磨の機会が少ない」(1点目)および 「相談相手が少ない」(3点目)という課題に対応するものです。同世代との交流が増えることで、刺激を受けたり相談相手を見つけたりする機会が自然と増えていきます。
具体的な施策として、若手社員向けの社外研修への参加促進や、社内研修の開催 が挙げられます。他社・他業界の若手社員との交流を通じて、視野を広げるとともに、自分の成長意欲を高めるきっかけになるでしょう。また、社内研修であっても、普段は関わりの少ない他部署の同世代社員との接点を増やすことができます。
さらに、懇親会などのカジュアルな場を設けることで、相談しやすい人間関係を構築する ことも期待できます。
社外研修に参加すれば、他業界・他社の若手社員と交流する機会を得ることができます。また、社内研修であっても、普段は関わりの少ない他部署の同世代社員との交流が生まれる ことが期待できます。
② 経営層・経営幹部が若手社員と直接会話する機会を増やす
この取り組みは、前述の 「若手社員に過度な負担がかかる」(2点目)の課題に対応するものです。立場や世代の壁があるのは当然ですが、社長や経営幹部が若手社員と直接対話する機会(年に一度の個別面談など)を増やすことで、普段は聞こえてこない本音を知ることができます。
こうした地道な対話が、若手社員の不満を軽減し、負担を適正な範囲に収めるきっかけとなります。単なる「意見を聞く場」ではなく、経営層が若手社員の声を受け止め、組織の在り方に反映させることが重要です。
若年層の労働人口は今後も減少し続けます。このような時代だからこそ、若手社員の存在は企業にとってますます貴重なものとなります。
彼らが会社の中で活躍し続けられる環境を整えることが、組織の持続的な成長につながります。本記事で紹介した取り組みが、皆さまの企業にとって参考となれば幸いです。