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結局、最強の経営戦略(Management Strategy)とは何なのか

知恵のバトン
2025.03.25

はやくも来週には4月を迎えます。多くの企業では新年度を迎えるにあたって新たな経営計画を練りに練ってその発表を行ったり、更には新たな長期ビジョンを立ち上げたり、未来をより良いものにするための活動に胸を躍らせます。立志のときです。
経営とは、方向づけ、資源(資本=利益のもと)の最適配分、そして人と組織に動いてもらうことです。まさに「方向づけ」がどれだけ解像度高く、関わる人々の目の色を変えるものかが問われます。

経営コンサルタントとして最も重視して観ることは、以下の3つです。
(1)Philosophy:哲学・私たちの存在理由=経営への思い(志)・経営目的・理念・価値観
(2)Paradigm:原理原則、理論、ものの見方・考え方⇒方向づけの根拠
(3)Policy:政策、具体的な計画、勝ち方

上記3点を貫くものが戦略・戦術です。
「私たちは何のために集い、誰にどのような価値を提供し、社会や人々の幸福に貢献するのか。ゆえに我々の成果はこれであり、そのために我々が持つべきもの(組織実行能力=付加価値の源泉)は何であり、その計画はこれである」といったいわばストーリー(物語)です。

冒頭(1)の経営哲学が善に基づくこと、公欲に基づくものかが決定的に重要なことは異論がないと思いますが、戦略としての一貫性をどれだけこだわって貫けるかが重要です。
戦略に落とし込む際に(2)の原理原則で最も重要なことは公益、つまりお客さま第一と共に働く仲間の幸せの追求を当然のこととしているかです。
利己的であってはならないということですが、経済学の父アダム・スミスの言を借りれば「いかに利己的であるように見えようと、人間本性のなかには、他人の運命に関心をもち、他人の幸福をかけがえのないものにするいくつかの推進力が含まれている。人間がそれから受け取るものは、それを眺めることによって得られる喜びの他に何もない。」
(『道徳感情論』第1篇第1章「共感(シンパシー)について」より引用)ということです。
お客さまも、働く仲間も、そしてそれを一体として捉える社会の目も、人間としての根源的な欲求を何ととらえるのかを厳しく見つめます。それが哲学というものです。
これを経営戦略という枠組みで捉えたものがマイケル・ポーターの競争戦略論の帰結としてのCSV(Creating Shared Value)競争戦略です。
ちょうど10年前に私もこの戦略を事業に応用しました。CSVとは一言で申せば「本業で社会に貢献する」ということです。
つまり、事業を通じて経済的価値と社会的価値、そして人間の根源にある普遍の価値・欲求を同時に創出・満たすということです。ゆえに希少な価値を生み出すポジショニングに帰結します。古くは自利利他、先義後利という思想に基づきます。マネーゲームの末の原点回帰といっても良いでしょう。先義後利で生み出された商品・サービスは長期的な価値を我々にもたらします。小倉昌男さんのクロネコヤマトの宅急便が代表例です。

つまり事業は戦略としても「社会的価値が優先する」でなければならないということです。ゆえに(1)Philosophyがなければ経営戦略としては成立しません。「今の時代はSDGsとかESGが重要だから」といって、そのフレームに当てはめて戦略を整理するのは本末転倒です。心の底から社会を、人々をどのように喜ばせたいのか、長期的に(持続的に)どのような価値を提供したいのか、との思いが先になければなりません。遅かれ早かれ見抜かれます。CSV競争戦略(社会的価値を優先する)はある意味、原点回帰的なものとして、裏付けのある戦略と言えるでしょう。

もう一つ、最強の経営戦略として評価されているのがジェイ・バーニーによるRBV(リソース・ベースド・ビュー)です。競争戦略論の一大学派であるケイパビリティ(capability)学派の中心にあるパラダイムです。企業の競争力は、その企業が持っている独自の資源や組織能力で決まる、という考え方です。経営現場で実際に最も有効だと証明してきたとの評価もあります。具体的にはVRIO分析と言われ、経済的価値(Valuable=差別化された価値があるか)・希少性(Rare=他社が容易に獲得できない希少性があるか)・模倣困難性(Inimitable=他社が容易に真似できないことか)・組織(Organization=上記3つ、経済的価値があり、希少で、模倣困難な経営資源を獲得するための企業の政策や組織文化を有しているか、整備されているか)の4つの問いによって経営戦略とその実践及び組織実行能力を強固に結びつけることが可能になります。バーニーは次のように語ります。

「本物のストーリーとは、心に深く根づいた価値観と信念を反映するものだ。自分の価値観や信念と相反するようなストーリーをつくっても、社員はいずれそこにある偽善に気づき、変革への本気度を疑うようになる。」
(出典:ジェイ・B・バーニー他「企業文化の変革はリーダーがストーリーを語ることから始まる」DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文)

新たな船出にこのCSV、RVBの視点を取り入れて人々の目の色を変える戦略に昇華させることは大変有用なことと考えます。
いまこのコラムを北海道帯広市で書いています。東京は24℃とやや暑い陽気でしたが、帯広は現在マイナス4℃。堪えます。季節の変わり目、皆さまもどうぞご自愛ください。

熊田 潤一

 


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