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トランプ関税で震撼する日本経済、世界経済

小宮一慶のモノの見方・考え方
2025.04.07

トランプ米大統領が、日本車を含む外国車に25%の追加関税を課すとともに、日本には24%が課される相互関税を発表し、世界の株式市場が大きな動揺を見せています。日経平均株価だけでなく、米国自身のNYダウも景気後退懸念から大幅な下落を経験しています。株式市場だけでなく、株価と関係する投資信託、REIT(不動産投資信託)などからもリスク回避のために資金が大量流出し、その資金は国債などの安全資産に回避する動きが顕著となり、長期金利は大幅下落(国債価格は上昇)となっています。

特に日本は自動車産業の日本経済に与える影響は非常に大きいです。米国への輸出が大きい上にすそ野の広い産業だからです。それでなくてもそれほど強くない日本経済の先行きが懸念されます。

微妙な動きをしているのはドル・円相場で、145円程度まで円高方向に振れましたが、一時147円ほどまで戻し、この原稿を書いている時点では、再び145円近辺です。これは、当初は関税強化による米国の景気後退の確率が高まったということで、米国の中央銀行であるFRBが現状4.25~4.50%の政策金利を下げる時期を早める、あるいは利下げ回数を増やすだろうとの予測から、日米金利差が縮まり円高・ドル安に向かいました。しかし、中央銀行のパウエル議長は、関税上げによる米国のインフレにも目配せする必要があるとの認識も示しています。つまり、景気後退とインフレへの対応という難しい立場に立たされており、下手をすれば、インフレ下の景気後退という「スタグフレーション」にも陥りかねない中での微妙なかじ取りが必要で、それがドル・円相場に現れているということです。

トランプ大統領はFRBに金利下げを催促していますが、中央銀行としては、そう簡単には判断ができない状況です。

一方、今回の株価の大幅下落などを受け、日銀は利上げの時期をこれまで以上に慎重に見極める必要に立たされました。株価が落ち着けば利上げでしょうが、難しい判断を迫られそうです。

また、トランプ大統領は負けを認めない本人の性格のせいで、この関税政策が米国経済へのマイナスの影響が続いても、しばらくは止めることはしないと考えられます。その裏には米国経済が日本や欧州などと違って11四半期連続でプラスという背景もあると私は考えています。

カナダやEU、中国などは、対抗措置として追加関税を米国製品に課すことを表明していますが、一方、日本政府は無策というか、徹底抗戦の構えはなく、地道に説明するという弱腰なスタンスです。コメや為替レートで譲るということかもしれませんが、トランプ政権との間で十分な人間関係が構築できていない中で、今後の展開に大きな不安を残します。

リスクマネーの逃避などで資金の動きが不安定になっている中で、先週末、当社の1階にあるマンション仲介会社のマンション価格を表示しているウインドウを見て、驚いたことがあります。「7億円」という東京のマンションバブルを象徴するような異常に高いマンションの広告が長い間出ていたのですが、それが一気に「6億3千万円」に引き下げられていたのです。もちろん、この1件だけを見てすべてのことを判断するのはとても危険ですが、ひょっとしたら東京のマンションバブルは崩壊し始めたのかもしれませんね。

いずれにしても、今後のトランプ政権の動き、それに対応する日本政府の動きや株式や為替、土地などの市場の動きを注意深く見ておく必要があることは言うまでもありません。

小宮 一慶

 


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