今週は、株式市場をはじめ相場が大荒れとなりました。私の周囲でも、経営者や投資家の方から嘆きの声が聞こえてきました。経済活動の現状を映すそうした指標の日々の動きを確認しながらも、一喜一憂せず、長期的、本質的に向き合うことが大切だと思います。
そのことに関連してポイントになってくるのが、「投資」と「投機」の概念、両者の分別だと思います。
投資は「資産に投じる」と読めます。
「資産に投じる」の意味合いは、将来的に付加価値を生み出すと期待できる有形無形の資産に対して、自分の資金や時間を投入する行動だとくみ取ることができます。資産が高い付加価値を生み出してくれれば大きなリターンが得られます。投資する側としては、そのような資産かどうかを見極める判断力が重要です。
投機のほうは「機会に投じる」と読めます。
為替、株式、国債、商品先物などの上昇・下落のトレンドを読んで、それを機会として取引し、利益獲得を目指す行動だと言うことができます。
加えて、不動産や株式の現物などであれば資産としての実物がありますが、レバレッジを利かせる信用取引などは実物がありません。実物を伴わないものに資金や時間を投入するのは、「投資」になりようがなく「投機」になることが明白だと言えます。
投資と投機、どちらが正しい・間違い、どちらだけにすべき、ということではないと思います。そのうえで、個人として、経営として、いずれにも共通して、長期的、本質的に取り組むべきは、基本的に投資のほうだと考えられます。投機は機会が変わってしまえば無効になりますし、その機会も長続きしないからです。
適当な例ですが、投機活動の一例がタピオカビジネスかもしれません。時々社会全体で突如ブームになって膨大な消費量・市場が起こりますが、そのうち元に戻っていきます。短期のトレンドに乗っただけで、戦略もなくタピオカビジネスを始めてしまうと、いずれ立ちいかなくなってしまいます。
もちろん、すべてのタピオカビジネスが投機活動というわけではありません。例えば、一時のブームに左右されるのではなく、もともと飲食業を営んでいた自社の強みを活かしたタピオカメニューを新たな商品戦略の一環として描き、販売予測や損益分岐なども想定したうえで必要な設備を購入するなら、投資活動になりえます。
企業活動では、「外部環境分析」が重要になります。今後の社会経済・自社が身を置く業界・競合などの動向を想定し、事業機会を見出して自社の戦略策定につなげていきます。外部環境の想定から事業機会を見出し、資金や時間を投入して取り組むべき事業だと判断して、設備、人材などに投資することで、企業は発展できます。この場合の「機会」は、長期的、本質的な意味での環境要因のはずです。
一方で、1~2年程度など短期間しか続きそうにないブームのようなものは投機の「機会」でしょう。期間の限定的な投機の機会を本質的な事業機会と混同し、ブームに乗った何かに極端な資金や時間を投入する、すなわち投機するのは、問題があると言えます。
このような投機活動でなくても、結果として投機と同じような状態に陥っている場合もありえます。例えば、仕入れの輸入や完成品の輸出の量が多く、為替レートの動きいかんで利益が大きく影響を受けてしまう企業などです。この場合は、為替予約をすることなどで、一定のリスクヘッジができます。
例えばM&Aも、既存事業との相乗効果など自社の戦略に根差した案件になるかどうかを十分に評価したうえでの「投資」の場合もあれば、「よさそうな買い案件の紹介があったから」と勢いで進める「投機」になってしまっている場合もあります。
自社で行っているのが、長期的、本質的な投資になっているか。近視眼的な投機になっていないか。振り返ってみたい視点だと思います。