昨今のトランプ関税の影響で、経営として大きな影響や先行きの不安を受けている会社様もいらっしゃることと思います。
今回のトランプ関税に関わる取り組みだけに関わらず、今後の外部環境において大きな変動に直面する際の経営の取り組みにおけるポイントをいくつか整理してみたいと思います。
(1)ダウンサイドリスク(最悪の状況)を知り覚悟すること
経営において大切なことは、心の準備をしておくことです。
トランプの追加関税などに伴う交渉の結果として、自社が被る可能性がある最悪の状況を認識することです。
数値的な面で言えば、関税に伴い日本から米国に輸出されるものや他国を経由して米国に輸出される商品サービスを提供している会社については、売上の減少に見舞われる可能性があります。
また、売上が減少しないまでも相応の価格低減圧力がかかる可能性があります。
上記のような状況におかれるお客様へのサービス等を提供する会社は、お客様の経営環境の悪化による需要減退が想定される可能性もあります。
更に、上記のような経営環境の悪化が引き金となって、取引先が廃業する可能性もあるかもしれません。
いずれにしても、可能性としてあり得るダウンサイドリスクを認識しておくことは経営において必須の心構えです。
(2)財務的なシミュレーションをすること
上記のダウンサイドリスクについての覚悟はあくまで心の覚悟です。
その上で、自社の経営状況、財務状況に当てはめてダウンサイドリスクが実現した場合の自社の経営状況を認識します。
普段からの【ダム経営(松下幸之助さんが提唱した経営手法で、企業が余裕のある状態を保ち、危機に備えるための経営)】によってゆとりがある場合にはそのままの状況でも経営上において影響がない場合もあるかもしれません。
一方で、大半の中小中堅企業さんにおいては、最悪の想定としてのダウンサイドリスクが発生した場合にそのままで乗り越えられる会社は決して多くはないでしょう。
このような場合に備えて、特別融資やコスト低減策など必要な手を想定しておくことも必要でしょう。
状況が大きく変化してからの取り組みも必要ですが、上記①の心の準備ができたならば、財務的な面におけるシミュレーションもしておくとよいでしょう。
(3)その上で、前向きな取り組みを検討すること
経営においても何にしてもですが、起きうるかもしれないリスクを考えて前向きな取り組みの機会を逃してしまうことはできれば避けたいところです。
しかし、お客様にも、社員とその家族にも責任のある経営をしている以上、無責任にリスクを取るわけにもいきません。
そのため、リスクを覚悟した上で健全な姿勢で経営に臨むためにも、上記(1)(2)のステップが必要になると考えます。
冷静に最大リスクを認識し、どこまでいってもそれ以上になることは想定しづらい、という状況においての打ち手を検討しシミュレーションした上で、前向きに日々の経営に向き合っていくというスタンスです。
このことは、デール・カーネギー著の「道は開ける」にもある人生の悩みを解決するための魔術的公式にも共通するものがあります。引用しますと、
1.「起こりうる最悪の事態とは何か」と自問すること。
2.やむをえない場合には、最悪の事態を受け入れる覚悟をすること。
3.それから落ち着いて最悪状態を好転させるよう努力すること。
とあります。
大きな変動は経営には付きものではあるものの、不確実性という意味においてはワクチンが普及する前のコロナ禍以降で最も高い状況ではありますが、VIX指数についてもコロナ禍のピーク85.47、リーマンショックのピーク96.40には至っていません。
人は、損失回避性(プロスペクト理論)といって不確実性のある状況においては利得よりも損失をより回避する傾向にあります。
皆さんの不安は、世間の不安と共通しています。皆さん同じです。
最悪を覚悟しつつ、冷静に前向きに経営に向き合っていくことで世間が過度に不安になっているタイミングで冷静に経営に向きあうことができればその分大きな機会につながるはずです。
新宅 剛