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順調なときこそ、原点を忘れない

知恵のバトン
2025.05.13

弊社にお電話をされたことがある方はご存じかもしれませんが、弊社では電話に出る際に必ず「ありがとうございます。小宮コンサルタンツです」と言って受けています。一見すると、それほど珍しい電話の受け方ではないかもしれません。しかしこの言い方は、毎朝の朝礼で唱和している経営計画書にも記載されているほど、大切な思いが込められています。

小宮コンサルタンツの創業当初、ほとんどお客さまがいらっしゃらなかったそうです。事務所の電話が鳴ることは滅多になく、営業電話ですらありがたく感じたといいます。今となっては、多くのお客さまに支えていただき、電話が鳴らないということはありません。しかし当時のお客さまに対する感謝の気持ちを忘れないようにと、その思いを経営計画書に記し、今でも「ありがとうございます」という電話の受け方を続けているのです。

私自身、初めて仕事をいただけたときの感謝の気持ちは今でもよく覚えています。食品メーカーのキユーピーに新卒として入社した私は、研修の一環として飲食店への飛び込み営業を経験しました。発売されたばかりの新製品をクーラーボックスに入れ、支社のある渋谷周辺の飲食店を片っ端から訪問するというものです。学生時代からさまざまな困難を乗り越えてきた自負があり、「営業くらいできるだろう」と高をくくっていましたが、2か月経ってもまったく成果が上がらず、途方に暮れていました。

そんな中、あるチェーン店で本部の商品開発担当者につないでいただける機会を得ました。入念に準備をして商品プレゼンを行いましたが、フィードバックは非常に厳しく、「飲食店ビジネスをまったく分かっていない」と痛烈なダメ出しを受けました。またダメか……と落ち込みかけたそのとき、その担当の方が、これまでの苦労話や入社の動機など、いろいろと耳を傾けてくれたのです。

「また勉強して出直してきます」と告げて帰ろうとしたところ、「ちょっと待て。今日持ってきた商品の中で、君の一番のおすすめは何だ?」と聞かれました。私は「この商品です……」と答えました。すると、「それじゃあ、君という人間を信用して、この商品で何かメニューを開発しよう」と言っていただき、初めての新規導入が決定しました。あまりの嬉しさに、涙が出そうになったのを覚えています。

仕事がない時の恐怖を忘れてしまうと、仕事があることが当たり前になり、次第に傲慢さがにじみ出てきます。仕事が順調になればなるほど自信を持つ一方で、謙虚さを失いやすくなるものです。 

「治に居て乱を忘れず」。
順調な時こそ、不遇だった時代を思い出し、素直に、謙虚に生きていきたい。私は、そう思っています。

平野 薫


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