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小泉農水相の登用は自民党の起爆剤となるか

小宮一慶のモノの見方・考え方
2025.05.27

先日、昔からの知り合いの自民党国会議員と食事をしていて「このままでは参院選は自民党は惨敗」という話をしていました。3%台のインフレが終息する気配もなく、なかでもコメの価格の高騰が国民生活を苦しめています。そんな中で、江藤前農水相が「コメを買ったことがない」発言が飛び出し、それでなくともコメ価格のコントロールもできない上に、資質を疑わせるような発言をしたのですから、事実上の更迭は当然のことでしょう。石破内閣の支持率も低迷しています。

そこで登場したのが小泉進次郎新大臣です。さっそく備蓄米の放出価格を消費者が買う段階で5キロ「2000円」にすると発言し、反響を呼んでいます。石破首相はコメ価格については「3000円台」との発言をしていますが、小泉大臣は備蓄米の放出分に限ってですが、「2000円」と断言しました。

よくよく考えてみると、備蓄米の放出については随意契約を行うということですから、その契約相手が2000円で再販するということを承諾さえすれば、それはそれで成り立つ話です。

しかし、重要なのはその後で、備蓄米の放出分を2000円で買える人たちは良いと思いますが、このところの高騰で高値でコメを買い入れている流通業者も少なくないと考えられ、簡単にコメの価格が市場全体で下がるのは難しいかもしれません。これまでの備蓄米の放出分も小売価格が3500円程度ですでに販売されています。小泉大臣は、備蓄米を2000円で売れるように無制限に放出するとも述べていますが、市場に大きな混乱をもたらす可能性があります。

備蓄米を2000円で販売した後に、実際には一般的なコメの流通価格が石破首相が言っているような3000円台になるかどうかが焦点です。

国民感情としては、3000円台と言っても3900円ではまだまだ不十分な気分でしょう。せめて3500円くらいでないと、1年前には今の半額程度でしたから、下がったという実感はないのではないでしょうか。

農家の立場から見ると、一般的なコメ専業農家の収入は低く、今般のコメ価格の値上がりは、農家にはかなりの収入増になると思われます。資材費やエネルギー価格の高騰で農家の生計も苦しい中でのコメ価格の上昇ですから、恩恵はあると思われます。また、コメ農家の平均年齢は70歳程度と言われており、後継者が見つかるような収入の確保も必要です。

私としては、コメ価格が急騰したことはもちろんとても大きな問題で、家計への圧迫は相当のものだと考えています。しかし、これまでのコメ農家の窮状を考えれば、5キロ当たり小売価格で3000円台半ばくらいでコメの価格が落ち着くのが、この国の食料の安定供給上も望ましいのではないでしょうか。あまり、コメの値段が上がってしまうと、コメ離れが起こる可能性もあり、また、関税を支払ってもまだ現状の日本のコメ価格よりも安いと言われているカリフォルニア米が大量流通するきっかけとなることも考えられます。一方、農家が普通に生計を立てられるような価格である必要もあります。そういうことを考えれば、コメの価格が3000円台半ばくらいで落ち着くのが望ましいのではないでしょうか。

小泉農水相の備蓄米放出の「2000円」という価格設定が市場にどういう影響をもたらすのかに注目です。そして、その後のコメの価格がその基盤となる農業政策を含めてどうなるのか。それらが消費税減税とともに参院選に大きな影響を与えると考えます。

小宮 一慶

 


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