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合理的な戦略だけでは組織は動かない

経営のヒント
2025.05.28

最近関わっている、ある会社での話です。
この会社には、コツコツと業務に取り組む良さがあります。決められた役割をしっかりと果たし、淡々と進めていく。派手さはありませんが、そうした積み重ねによって長くビジネスが続いてきたのだと思います。

一方で、経営層は「このままで未来は大丈夫なのか」と危機感を持っています。市場や顧客の変化に対応するためには、これまでとは異なる方向に踏み出す必要がある。そうした不安や焦りもまた、当然のことです。

私たちも、その意見には共感します。「もっと外に目を向け、新しい取り組みを始めていく必要があるのでは」と伝えます。ただ、現場からすると「そんなことを言われても」というのが正直な感覚なのだと思います。

現場の方々は、いま目の前にある仕事を、いまの枠組みや仕組みの中でどう成立させるかを考えながら動いています。それは、決して受け身な態度ではありません。むしろ、現場がこれまで積み重ねてきた工夫や知見の中で、最も効率的で安定した方法を選んでいるともいえるでしょう。

つまり、そこには現場なりの“合理性”があるのです。

それにもかかわらず、「君たちは主体性がない」「未来を見ていない」と言われてしまう。場合によっては、それが評価にも影響する。こうしたすれ違いが起きたとき、私はなんとも不幸な構図だと感じます。

経営層が描く戦略には、もちろん合理的な根拠があります。市場動向、競合の動き、事業構造の変化。変革の必要性は明白です。そしてその戦略は、多くの場合、制度や計画といった「仕組み」として形になります。

ただ、それだけでは人は動きません。

その戦略に対して、「なぜ自分たちがやる必要があるのか」「何のためにやるのか」という納得や意味づけがなければ、実際の行動にはつながりません。そこで必要になるのが、“揺らぎ”や“問い”です。

たとえば、利害の異なる部門どうしで考えをぶつけ合う場をあえて設ける。もしかしたら衝突するのを避けて向き合うべき問題に向きあえていないのかもしれない。あるいは、「普段のKPIを一旦脇に置いて、未来のことを話す時間」を意図的に設ける。そうした余白がないと、目の前の合理性だけが優先されてしまうのかもしれない。

一見、滞りなく業務が進んでいるように見えて、心の中は滞っている。
矛盾を抱え、感情に揺れ、曖昧なまま動けずに立ち止まる。人間はそんな“非合理な存在”です。合理的な戦略だけでは組織は動きません。実行する我々人間が“非合理な存在”であることを前提にしたときに、はじめてマネジメントの意味が見えてくるのではないでしょうか。


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