今年も台湾に行ってきました。今回は社員2名も一緒でしたが、コロナ明けから3年連続で行っています。コロナ前も含めれば10回は行ったと思います。今回も台北周辺で、毎年ほとんど同じところに行き、同じホテルに泊まり、だいたい同じところで食事をするので定点観察が好きな私には結構楽しみでした。
今回とくに気になったのは、1949年に中国本土から台湾に渡り、中華民国として長く台湾を支配した蒋介石の功績をたたえるために作られた中正紀念堂でした。もう10回目くらいの訪問です。何が変わったのかと言えば、中正紀念堂の儀仗隊の交代式です。中正紀念堂の交代式は忠烈祠の交代式と並んで観光客にも人気なのですが、今年からは屋外で行われていました。これまでは、6メートルもある蒋介石の着座の巨大な銅像の前で行われていたのが、紀念堂の前の広場で行われるようになったのです。ガイドさんの説明では、新総統となった頼清徳氏がそうさせたと言っていました。蒋介石の銅像前での儀仗隊の交代式を国民が見やすい広場に移すことで、蒋介石色を少なくしたいと考えたのでしょう。
頼総統の民進党は反中国で知られていますが、それとともに、頼氏は蒋介石を独裁者と位置づけ、事実、中正紀念堂の入り口の横断幕にも大きく「独裁者」という文字が書かれていました。そのためかどうかは分かりませんが、紀念堂の内部の展示も一部が見られなくなっていました。
日本人には分かりにくいのですが、蒋介石を継いだ息子の蔣経国が1987年に解除するまで38年間、台湾では戒厳令が敷かれていました。暗い時代があったのです。韓国で尹前大統領が特別戒厳令を宣言したことに大反発した国民の怒りを買って大統領が罷免されるということがありましたが、韓国でも長い間軍政の時代があったことへの反発が今でも根強いのです。同様のことが台湾でもあるのだなというふうに感じました。
中国からの統一圧力が強い中で頼総統は独立を維持しようとしています。それに反発するために、中国軍艦が台湾の周りを取り囲むように演習をしたり、台湾の防空識別圏ギリギリを空軍機が頻繁に飛行をして、台湾に大きな圧力をかけています。頼総統としては、独立を維持し、独裁者から国を守るという意思を表しているのでしょう。
私の好きな故宮博物院では、相変わらず中国本土からの観光客は少ないようでした。ずいぶん前の親中国派の国民党の馬英九総統の頃には、中国からの観光客が大量に押し寄せ、有名な翡翠の白菜の展示などは、それこそ人をかき分けてもなかなか見ることができませんでしたが、今回も比較的簡単に観ることができました。
他の場所では、いつも通りの台湾でした。昭和レトロを感じさせるような街並みで、台湾の人たちは外食が多いので、飲食店の軒先で食事する人たちの光景はいつもどおりでした。ただ、インフレはこちらでも進んでいます。私たちが食事をした場所やちょっとしたおみやげを買ったところでも値段が上がっていました。日本も台湾もインフレですね。
これからもできるだけ台湾を訪問したいと思っています。
小宮 一慶