日本銀行の政策決定会合が2025年6月16日、17日に開催されました。
結果として、政策金利は0.5%で据え置かれ、国債買い入れの減額ペースは、現状の四半期ごと4000億円から2026年4月以降は四半期ごと2000億円へと緩和されることになりました。
これまで日銀は、イールドカーブコントロールとして10年物国債の買い入れにより長期金利の水準をコントロールしてきましたが、その買い入れ水準は2024年から減額が進んでいます。
一方で、日銀の国債保有残高はピークから10兆円程度しか減少しておらず、依然として国債保有の割合は50%以上という異常な状況が続いています。
プライマリーバランスの黒字化が先送りされる中、国債発行残高は増加が見込まれています(2025年度末の普通国債発行残高は前年から約24兆円増加し、1,129兆円に達する見通し)。日銀による買い入れ額縮小は、日本の財政に対する市場の厳しい評価にさらされることを意味しています。
参議院選挙では消費税の減税や交付金などの議論が取り沙汰されていますが、財政規律の重要性は単なる掛け声ではなく、国債の市場での信認という形で実質的に問われる状況となっています。
日銀は政策金利(コールレート翌日物)を0.5%で据え置いていますが、かつてイールドカーブコントロールで抑制してきた長期金利は、市場原理の影響を強く受け、財政状況に敏感に反応するようになってきています。
企業経営において重要なのは、短期的にも中長期的にも金利上昇と物価上昇が継続するという前提で考える必要があるということです。
政策金利の引き上げこそトランプ関税の影響による経済の先行き不透明感から先送りされていますが、すでに長期金利の上昇が企業の借入金利上昇に波及し始めています。
実際、日本銀行が5月26日に発表した2025年3月の国内銀行(都市銀行、地方銀行、第二地方銀行)の「貸出約定平均金利(新規)」は1.262%と、前月(1.022%)から大幅に上昇しています。
政府は備蓄米などによる消費者物価抑制策を実施していますが、構造的な物価上昇を抑制するには力不足です。
人手不足による人件費上昇は、トランプ関税による企業業績への影響で一時的に緩和される可能性はありますが、時間の経過とともに上昇傾向は続くでしょう。消費者物価上昇下では実質賃金の引き上げが不可欠であり、そうでなければスタグフレーションのリスクが高まります。政策的支援や大企業の採用競争力強化の動きは依然として継続すると見られます。
一部企業では大きな影響を受けているものの、米中の関税交渉の進展もあり、企業業績への影響は当初懸念されたほど深刻ではなくなってきています。ただし、7月の交渉期限(延長も想定)まではまだ予断を許さない状況です。
特に中小企業経営では、今後の金利上昇動向を注視しつつ、物価上昇の適切な価格転嫁(商品サービスのQPSバランスを考慮)、投資や資金調達の意思決定の質とスピードを向上させることが重要です。
資金調達を伴う投資が必要な場合は、金利上昇前の迅速な意思決定が求められます。ただし、これは拙速な判断を推奨するものではありません。
つまり、必要な投資については、早期の意思決定が有利になる環境に変化してきているということです。
金利水準が低位に抑えられている段階での投資により、投資対象の価値上昇(投資対象からのキャッシュ・利益の増加)が期待できます。
ただし、これには投資対象が生み出す商品サービスについて、インフレによる物価上昇を価格に転嫁できることが前提となります。これにより、設備投資や企業買収(M&A)案件からの期待収益が向上し、投資効果がより高まることになります。
このように、これからのインフレ時代では、経営判断とパフォーマンスの優劣が成果により明確に表れ、企業間の優勝劣敗が進むと考えられます。
厳しい経営環境ではありますが、先を見据えた準備と経営力の強化がより一層求められる時代となってきています。