6月14日付日経新聞朝刊の「大機小機」欄に、「フューチャー・デザインの重要性」という記事があり、興味深く読みました。記事で取り挙げられていたのは、今日の政策を決めるにあたり、現在世代だけでなく将来世代も取り込んで実施する、「フューチャーデザイン」という手法です。
「フューチャーデザイン」とは、1.まず、○○年後の仮想将来人、将来世代を設定し、対象の人々に将来人になりきってもらう 2.その人々には将来世代の立場で今日の政策を考え、判断してもらう 3.現在世代と将来世代での議論を重ね、将来から現在を見た持続性を重んじ、合意形成・政策決定する と記事では紹介されていました。
こうした政策決定の考え方を知ったのは初めてだったのですが、フューチャーデザインにおいては、「将来世代になりきって考える」というところが重要なのではないかと考えます。今を起点に「将来世代のために」と考えても、現在得られる便益や利得との相反が生じた場合、どうしても現役世代側の考えに引きずられてしまうでしょう。将来世代になりきることで、そうした相反から離れ、純粋に持続可能な政策を考えることが出来るはずです。
これは、政策だけではなく、企業や組織においても言えることではないでしょうか。今を起点に考えると、現状の延長線上の施策に終始してしまう可能性が高いですが、将来像からバックキャストで考えることで、将来に向け今本当にしなければいけないことが見えてくるはずです。
また、「なりきる」という点も大切だと考えます。例えば「お客さまのために」と自社起点で考えるのではなく、お客さまになりきって、「お客さまの立場で」考えると、本当に必要な商品・サービスがリアリティをもって見えてくるのではないでしょうか。
政策の観点に戻ると、冒頭の記事では、「困っている人々に手を差し伸べるのは当然だが、今日のことだけを考えて、バラマキを求めれば、先々そのツケがわが身に降りかかる。長寿時代とはそういうことだろう」と、長寿化により現役世代と将来世代が接近していることを指摘しています。今夏参院選が予定されていますが、各党による減税や補助金などのアピール合戦の様相を呈しています。しかし、国地方合わせて1300兆円を超える債務残高の日本において、将来世代(未来の我々含め)の立場から考えて本当に持続可能な政策は何か、何に投資していくべきなのか、を改めて考える必要があるのではないでしょうか。
小宮 弘成