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教えありて類なし

今週の「言葉」
2025.06.26

『論語』「衛霊公 第十五 三九」(金谷治訳注 岩波文庫版)より

今週の「言葉」は、孔子とその弟子たちの問答集である『論語』からの一節です。「子の曰わく、教えありて類なし」(子曰、有教無類)とは、「教育による違いはあるが、生まれつきの類別はない。」との意味で、誰でも教育によって立派になる、と孔子は言っているのです。

孔子はまたこうも言っています。「性、相い近し。習えば、相い遠し」(『論語』陽貨第十七 二)と。これは「人間、生まれつきは似通っているが、しつけ(習慣や教養)でへだたる(違いが生まれる)」という意味です。

経営として、良い会社であるためにも、偉大な会社に変革を遂げるにも、「良い教育」「良い習慣」が欠かせません。そしてそれは立場の上の者から行われていなければなりません。会社は魚と同様に頭から腐るからです。人間は教育によって良くも悪くもなるわけですから、良い会社にしようと思えば、自ずと経営者は無論のこと、共に働く仲間たちの人生を左右しかねない上司の教育がなっていなければ、その会社の社員は育ちません。まずはリーダーだと自覚する方々の成長がなければ『大学』にあるように本末転倒になってしまいます。

忙しい、と言い続けて教えなしの会社・事業の末路

経営戦略で最も統計的に実践的効果が認められるものにリソース・ベースド・ビュー(RBV)というものがあります。自社の経営資源に着目することで競争優位性を見出していくものです。人的資本経営が再び脚光を浴びていますが、長期的に見れば経済がインフレ局面に入るとお金の価値が下がり、人の価値が上がるので、当然と言えばそうですが、日本の場合は深刻な人財不足に陥っている業界・企業が多いのが実情です。人口が減少していくことはドラッカー先生流に言えば、すでに数十年前からわかっていた「すでに起こった未来」だった筈です。人手不足倒産(後継者がいない、社員がいない)は労働集約型の産業からその勢いが増していますが、これはすべて企業にとっての長期的な価値は何かを重視せずに短期的な利益を追い求め続けた結果です。お金の価値が上がり、人の価値が下がった長いデフレ時代においても、先人の教えを守り、人財の育成をはじめ、人を大切にしてきた会社は多くが生き残り続けています。

経営も政治も真の保守を目指す

安岡正篤先生の『活眼 活学』に拠れば、実践的兵書である『呉子』の中に、「保守」ということについての卓越した考えが記されているとあります。その部分を引用します。

保守とは「保業守成」即ち業を保ち、成を守るという意味の言葉で、「創業垂統」を承けるものです。これは『孟子』にありますが、一世が業を創め、統を垂れる。即ち、立派な第一代が苦心して仕事を始め、その仕事を後々まで継承されるように伝える、これを創業垂統という。自分一代で駄目になるような軽薄なものではなく、二世も三世も自分の遺す方針に従ってゆけば、ちゃんと事業を続けてゆける──つまり歴史を作ることができるようにすることが一世の使命である。この先代の創業垂統を継いで、その業を保ち、先代の成功をよく守り栄えてゆく。これが保業守成で、保守の意であります。

出典:安岡正篤『[新装版]活眼 活学』(PHP研究所)

因みにアップルの創業者、スティーブ・ジョブズは亡くなる前に「Apple University」を創設し、アップルの基本精神がジョブズ亡き後も失われることがないよう願っていたそうです。そこでは大学の講義形式でアップルの「価値観や美意識」とプロダクトの開発手法を紐づける内容が叩き込まれるとのことです。

「危機の時代」とか「変革の時代」とか毎年同じことを異口同音に叫ぶ人が後を絶ちません。私も言ってしまっていた時代がありました…。自分一代で終わることのない大きく広い志とビジョンを持ち、そこからバックキャストして限られた時間と共に「今」を大切に実践したいものです。リーダーと自覚する者としてもう少し、安岡先生が仰っていた思考の三原則、すなわち長期的、多面的に全体、そして根本的に思考する習慣を持ちたいものです。


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