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ミスを怒ることは効果があるのか?

経営のヒント
2025.08.12

スポーツでも仕事でも、ミスをしたことに対して、怒って正そうとする行為を目にすることがあります。そこで今日は、仕事やスポーツにおけるミスについて考えたことをお伝えできればと思います。

■ミスについて考えたきっかけ
私の子どもが地元の野球のクラブチームに入っていて、土日はその野球チームのお手伝いをしています。そうした中、守備練習中にコーチから、「なんでそのゴロをミスするんだ」、「ポロポロ、ポロポロ、ボールをこぼすの、治らないな」という指摘が選手たちにありました。

以前であれば、あまり違和感を感じなかったのですが、今回は違和感を持ちました。その理由を考えると、以前の選手たちは、守備がまだままならず、ミスも多く、シンプルに実力がともなっていなかった状態でした。そのため、ミスについて指摘されることにあまり違和感を持っていなかったのかもしれません。

一方で、今は6年生になり、選手たちも上達し、以前にくらべるとミス(エラー)をすることが少なくなりました。ある程度の実力がある状態になりました。

仮に下手な状態であれば、ミスを指摘されることを受け入れられるかもしれませんが、ある程度、実力が伴ってきた際にミスを指摘されると、素直に受け入れられない、もしくはミスをしないようにと体が委縮してしまう。そして、またミスをしてしまうという悪循環に陥る可能性が高い。

「以前と同じように練習中にミスを指摘するという行為は、正しいのか?」
そうした違和感が自分の中に浮かんだのでした。

■ミスに対する考え方
そもそも練習という場は、どういう機会なのでしょうか?

そう、ミスをする機会であり、そのミスを改善して、うまくなるための機会であり、上手なプレーを披露する機会ではない。練習は、試す場。自分自身を上達させるために、自身の目標や課題を改善するために、チャレンジをする場。そのよう場で、ミスをしたら怒られるというのは、確かに理不尽に思ってしまいます。

では、練習で怒ることがあり得るとするとどういう場面になるのでしょうか?

それは、「試そうとしていないとき」ではないでしょうか。もしくは、「ミスをしたときに、考えていないとき」ではないでしょうか。言い換えれば、受け身で言われたことだけをやっている状態のときは、怒ったほうが良いのかもしれません。

そう考えると、選手に目標を持たせることや課題を考えさせることは、とても重要な意味と持つと考えます。さらに言えば、自分で主体的に考えて、行動できる選手に育てることが、練習の持つ本来の意味と言えるのではないでしょうか。

■どうしてミスを指摘してしまうのか?
上記のように考えると、「練習でミスをしたら怒る」という行為は、選手の育成に対して効果性が低いと言わざるを得ません。一方で、なぜ指導者は、ミスを直接的に指摘したり、怒ったりしてしまうのでしょうか?

海外でサッカーの指導経験を持ち、スペイン男子クラブで初の女性監督となり、今は久保建英選手も在籍したことがあるスペインのビジャレアルCFの育成年代のコーチを務めている佐伯夕利子さんはこう指摘しています。

「指導者(大人)が主で、子どもは従うもの」という思考がそこにはある。

佐伯さん自身も、コーチ自身のコーチングを映像に録画するというプログラムを通して、「逆サイド見てなかったね」と起きたミスを指摘する自分の姿と向き合うことで、いかに自分が無自覚的に指導してきたかということを痛感したと言います。

ビジャレアルの育成年代のコーチ組織中で、佐伯さんは次のことに気づきました。

「指導者は、選手の学びの機会を創出するファシリテーターに過ぎない」

「選手にとって一番のストレスは、他者から強要されることだと理解した。選手が「何を感じているのか」「何を求めているのか」に意識を向け始めると、彼らが必要としているものが見えるようになった。そして、それらのニーズにアプローチすることで成長を支援できるようになった。」

そして、「選手を威嚇し、恐怖を与えたりしてはいけません。そんなことをする人は「支配者」であり、決して「指導者」ではありません。」と言っています。

■まとめ
指導者という定義で言えば、ビジネスの現場では上司や管理職の人がその役割にあたります。そうした方々の多くは、トッププレーヤーだったことが評価され、役職が上がり、指導する立場になっている人も多いと思います。しかしながら、そうした人たちは、仕事ができるだけに、部下やメンバーに対して「何でそんなこともできないの」と思いがちです。そうなると「ミスを指摘する・怒る」ということにつながります。

そう考えた際に「ミスについての考え方」というものを指導する立場の人は知っておく必要があると、今回のことを通して実感しました。そして、佐伯夕利子さんの言う「選手(相手)には何が見えているのか」、「そこでどんなことを考えていたのか」を聞くというスタンスを私自身も身につけていきたいと思います。佐伯夕利子さん、すごい方です。

金入 常郎

 


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