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利下げで景気を下支えする米国、景気停滞の中利上げが必要な日本

小宮一慶のモノの見方・考え方
2025.09.09

今回は経済のお話です。9月16日、17日に米国の中央銀行(FRB)のFOMC(連邦公開市場委員会)が開かれます。日銀の政策決定会合にあたるもので、金融政策の決定が行われます。

多くの市場関係者は、このFOMCで米国では利下げが行われると予想しています。私も高い確率でそうなると考えています。トランプ大統領は、FRBのパウエル議長に「クビにする」とまで脅して利下げを迫り、また、利下げに慎重な理事の解任まで持ち出していますが、それとは関係なしに9月のFOMCでは利下げが行われると考えられています。

ひとつは、米国の雇用がかなり落ちていることです。2回前のこのメルマガでも説明したように、米国の非農業部門の雇用増減数は世界中のエコノミストたちが注目する数字です。数か月平均で15万人程度の雇用増があれば米国経済は巡航スピードだと考えられていますが、先月に発表になった7月の数字や改訂された5月、6月の数字が、大きくそれを割り込むものでした。そして、今月5日に発表された8月の速報値も2.2万人ととても巡航スピードと言える数字ではありません。改訂された6月の数字はマイナスでした。失業率も4.3%と少し悪化傾向です。

そうした中、現状の政策金利(1日だけ銀行間で資金を貸し借りする金利)は4.25~4.5%と高く、また、インフレ率はトランプ関税の影響が今のところそれほどなく2%台後半で推移しています。

このことを考えれば、FRBは高い確率で9月16日からのFOMCで金利を下げると考えられます。それにより、短期の市中金利が下がるとともに、長期金利も下がりやすいと考えられます。そうすると、長期金利に連動して動く、住宅ローンや自動車ローンの金利も下がります。現状少し停滞している住宅着工や自動車販売にも良い影響が出ると考えられます。住宅、自動車は米国では巨大産業ですから、その業績が上がれば、景気を下支えし、景気浮揚にプラスに働きます。

一方、日銀の政策決定会合は、米国のFOMCより少し遅れて今月18日、19日に開催されます。政局が大きく動いていることもあり、そこで利上げが行われるかは微妙だと思っていますが、日銀には利上げを行うべき理由がいくつかあります。

ひとつは、日本のインフレ率です。現状、代表的なインフレ指数である「生鮮除く総合」で、前年比で3%程度です。7月にインフレを加味した「実質賃金」が7カ月ぶりにわずか0.5%ですがプラスになりましたが、これは賞与の影響が大きく、秋以降には再びマイナスになる可能性は低くありません。そして、7月以前は6カ月連続で実質賃金はマイナスでした。これでは、GDPの半分以上を支える家計の支出は伸びません。インバウンドによって支えられてきた百貨店の売上も今年に入って前年比割れとなっています。

そうした中、日本の政策金利は0.5%で、これではインフレを抑えることはできません。早急な利上げによるインフレ抑制が必要です。

また、日本の個人金融資産は約2200兆円ありますが、そのうちの預貯金は約1000兆円です。現状の預金金利では、3%のインフレ率よりも大幅に低く、日本全体では年間数10兆円目減りし、家計は損をしています。もちろん、これは望ましい状態ではありません。

これらのことを考えれば、利上げは必要です。政府は1000兆円を超える国債を発行しており、利上げが財政を悪化させることを心配する人もいますが、国債の半分以上は日銀が保有し、日銀が利上げで得られる金利は、政府に還元させることができます。

借入れの多い企業が大変という声も聞きますが、長年低成長を続ける一つの大きな原因のゾンビ企業が淘汰されやすくなるのは望ましいと私は思います。M&Aなどをうまく活用すれば、ゾンビ企業もより強い企業と一緒になれますし、そこで働いている人たちもより良い企業に転職できるのではないでしょか。

小宮 一慶

 


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