私は大阪府堺市の生まれで、23歳まで大阪府内にいました。大学は京都だったのですが、家庭教師のアルバイトの関係もあって、ずっと堺から通っていました。ただ、44年前に就職してからは、名古屋、東京、アメリカなどに住み、現在では東京に住んで40年近くになります。
住んではいないものの、仕事の関係で大阪には頻繁に行きます。先週も当社の経営実践セミナーを開催し、他にも講演を頼まれた関係で、大阪で3泊しましたし、今週も後継者ゼミナールで週末に1泊します。
以前はもっと行っていました。毎日放送のテレビ番組にレギュラーや準レギュラーで出演させてもらっていたことや、大阪に社外役員をしている会社があり、また、もちろん講演会などは今と同じようにあったので、毎週のように大阪に行っていました。大阪に泊まって、昼に名古屋で仕事をし、また大阪に戻るというようなこともありました。
その頃は、今に比べてかなり忙しかったので、東京からの移動は飛行機を使うことが多かったです。羽田と伊丹間のフライトを利用すると、自宅からのドアツードアで30分くらいの節約になります。羽田空港からの高速道路が、山手トンネルができたことで、とても便利になったこともありました。
そういう大阪ですが、とくに梅田界隈の発展には目を見張るものがあります。先週、セミナーの関係で泊まったホテルは、もう20年以上利用しています。たまたま、先週泊まった部屋は北向きだったのですが、外の景色を見て、その変貌ぶりに改めて驚嘆しました。ホテルの高層階から北を見ると、ずっと以前には、高層建築で言うと、奇抜な形をしていて空中庭園で有名な梅田スカイビルやウエスティンホテルが見えた程度でした。その向こうには淀川が横たわり、さらに遠くには伊丹空港が見えたものです。伊丹空港に着陸する飛行機をずっと見ているのも楽しいものでした。北側に面した窓から少し西に目を向けると、大阪駅がありその向こうには、お世話になった毎日放送の少し変わった形をしたビルの先っぽとその電波塔が見えたものです。
今では、それらのほとんどが見えません。10年くらい前から開発が進み、大阪駅に大屋根ができ、その向こう側(北側)にグランフロント大阪の高層ビル群が立ち上がりました。2棟のオフィス棟、オフィスも兼ねたホテル棟、そして一番奥には高層マンションが完成しました。それだけでも景観は大きく変わりましたが、今では、大阪駅と私が泊まっているホテルの間、以前中央郵便局があったところに、kitteの巨大なビルが完成しました。それにより、ホテルからは大阪駅がほぼ見えなくなりました。もちろん、それより向こうの毎日放送などの景色も見えません。また、最近、グラングリーン大阪も、グランフロントの西側の広大な敷地に立ち上がり、特色である公園を中心に商業施設の入ったオフィスビルやニューヨークで最高のホテルのウォードルフ・アストリアも開業しました。グラングリーンやグランフロントは、元はJRの広い操車場があった場所で、大阪に古くから住んだ人間には「場末(ばすえ)」という印象がありましたが、本当に様変わりです。インバウンドも含め観光客が大勢集まっています。その大規模開発のおかげで、ホテルから見えた景色も大きく変わり、伊丹空港に着陸する飛行機も、高層ビルの合間を通る時ぐらいしか見えなくなりました。
先週末に講演をした、梅田より少し南の中之島界隈でも新しい高層ビル群が立ち並び、以前とは雰囲気が大きく違っています。
この文章だけで、大阪、とくにキタの様子が、ガラッと変わったことをお分かりいただけたかは分かりませんが、本当に大きく変わりました。うれしさとともに寂しさを感じているのは私だけでしょうか。
小宮 一慶