「POP」(Point of Parity)=同等ポイントという概念があります。
「Parity」という言葉は「同等性」や「等価性」などの意味合いで使われます。例えば為替相場では、1ユーロが1スイスフランに近づくなど1:1に近くなる局面で「パリティに近づく」などと言われます。
POPは、POD(Point of Difference)=差別化ポイントと対比させるとわかりやすいです。
・POD(Point of Difference)
自社ブランドだけが持っている、他社にはない特徴
消費者から「選ばれる理由」になりえる独自の価値
・POP(Point of Parity)
競合する他社ブランドと共通して持っていることが認められる要素
消費者から「最低限求められる」前提条件
チョコレート製品(以下「チョコ」)を適当な例として考えると、あまりに奇抜なチョコだと、PODを満たすかもしれませんが、POPを満たさない可能性があります。そもそもそれがチョコだと認知されないと、チョコを求めるお客さまから選ばれようがない、ということになります。チョコだと認知してもらえるようなパッケージ、チョコのカテゴリーに相応しい賞味期限の設定、価格帯であることなど、最低限満たすべきポイントを網羅していることで、チョコを購入しようとする人の選択肢に入ります。これがPOPです。POPあってのPODだというわけです。
「POPはPODほど強調されないが、もっと意識されてよい重要なポイントである」と指摘するマーケティング専門家もいます。
このPOPの概念、商品・サービスに限らず、組織のメンバーにも応用可能だと考えられます。
多様な人材が活躍することによって組織の活性化、成果の創出を目指す企業も多いわけですが、人材の多様性と包摂性を無限定で認めるのがよいかというと、そういうわけでもありません。
書籍『ビジョナリーカンパニー2』が「まずはじめに適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに行くかを決める」と示唆している通り、自組織に所属するに適切であるべき一定の人材像が存在するはずで、その人材像から外れた人をバスに乗せるべきではないということです。
このことは、POPの概念に当てはまると言えます。自社に属する人材なら共通して具えているべき要件を持てていることがPOP、その上で各人の強みや個性をPODとして発揮しながら活躍する、ということです。
私たちは、似た者同士のほうが楽ですから、同じような属性や思考特性、行動特性の持ち主同士、あるいは自身の意見に賛同し続ける人材のほうが「分かってくれる」「話しやすい」となります。それを乗り越えて、多様性を活かして事業、組織の発展を目指すのであれば、マネジメントが苦しくなるのは必然と言えます。その苦しさは、リーダーをはじめとするメンバーが受け入れるべき産みの苦しみだとも言えます。
そのうえで、本来自組織に所属すべきでない=POPを満たしていない人材がそこに入り込むと、たいへんなことになります。ただでさえ難しい話し合いが機能不全となることが容易に想像できます。
ですので、「自社に参画してもらうメンバーが外してはならないPOP」が何なのかを明確にし、運用することは大切だと言えます。自社への理念の共感なのか、特定のスキル要素なのか、マインド要素なのか。そして、それらの有無をどうやって判断するのか。
「最低限満たすべき同質性があっての多様性」を整理しておくことは、ますます多様な雇用形態の活用、多用な属性や事情を抱えた人材の採用候補者が出てくるこれからの環境においては、大切な取り組みになると考えられます。
藤本 正雄