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円滑な事業承継のために幹部育成に本気で取り組むべき理由

時事トピック
2025.12.09

「投資の神様」ウォーレン・バフェットが、今月でバークシャー・ハザウェイのCEOを退任します。40年以上企業価値を高め続けてきた名経営者の引退は、世界中の投資家にとって一つの時代の終わりを感じさせるニュースでした。
後任は副会長グレッグ・アベル氏。20255月に次期CEOとして発表され、バフェット本人も「アベル氏の手腕に株主が自信を持てるまで、自社株を持ち続ける」と支援姿勢を示しています。しかし、長年カリスマが率いてきた組織だけに、後継体制への不安が完全に拭いきれないのも事実でしょう。

日本でも同じ構図は見られます。ニデックの永守重信氏(81歳)、ニトリHDの似鳥昭雄氏(81歳)など、名経営者たちが依然として現役で采配を振るっています。しかし直近では株価も冴えず、市場から世代交代を求める声も強まっています。

実はこの課題は、私が日々関わる中小企業でもまったく同じです。
オーナー経営者の強みは、即断即決で組織をリードし、チャンスを掴んできたことにあります。一方で、そのスピード感が裏返しとなり、「部下が自分で考える機会」が極端に少なくなってしまい、幹部の主体性が弱い企業が非常に多いのです。特に現場系企業は上意下達が色濃く、「いいから言われたことをやれ!」で仕事を回してきたこともあり、この傾向が顕著です。

その結果、承継を目前にして「後継者は決まっているが、支える幹部の地力が足りない」という企業が少なくありません。しかし、私が多くの企業を見てきた中で強く感じるのは、カリスマ後継者でなくとも「幹部が育っている会社」は事業承継がうまくいくという点です。だからこそ重要なのが幹部育成です。
「育成」と聞くと研修をイメージされるかもしれませんが、それだけでは不十分です。むしろ日常の会議やプロジェクトの中で、指示ではなく問いを投げかけ、考えさせる場を意図的につくることが必要です。そして育成で最も大切なのは、半年・1年で成果を求めないことです。

人材はそんなに早く変わりません。焦らず、正しい方向で粘り強く取り組むことが必要です。実際、私が支援している企業でも、10年前は言い訳ばかりしていた管理職が、いまでは視野の広い立派な幹部に育っている例がいくつもあります。そうした企業は、研修だけでなく、会議で「まず自分の考えを述べさせる」文化を徹底し、定期的な合宿や社内旅行で一体感も育んでいます。

幹部育成は『7つの習慣』でいう「重要だが緊急ではない第2領域」です。放置しても明日困るわけではありません。しかし、後回しにすると10年後、確実に大きな問題になります。

バフェット引退のニュースは、「カリスマ経営者引退後も継続的に成長できる組織になっているのか?」という問いを投げかけているように思います。だからこそ、いま幹部育成を経営課題として本気で取り組むことが、円滑な事業承継の最重要テーマだと考えています。

平野 薫

 


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