当社は、コンサルティングやセミナーなどの場で、「目的」と「目標」の違いについてお話しさせていただくことがあります。
当社代表の小宮一慶の著書『経営者の教科書』などによると、「目的」とは存在意義であり、「目標」とはその実現に向けた通過点や、目的達成の手段とされています。
同書の中では、経営コンサルタントとしての目的は「かかわる人に成功していただくこと」であり、目標は「単著を100冊出版すること」と書かれています。
企業においては、良い商品やサービスを社会に提供し、お客さまに喜んでいただくことが目的の一つであり、その結果としての売上や利益は目標となります。
ここで一つの問いを立ててみたいと思います。
商品やサービスを一定期間、定額料金で提供する「サブスク」は、売上や利益を安定化できるため、経営者にとって非常に魅力的な仕組みです。
そのため、経営計画の中で「サブスクで顧客生涯価値を高める」をスローガンとして掲げることがあります。
顧客生涯価値とは、1人のお客さまの生涯から得られる売上・利益の総和のことです。サブスクであれば、顧客生涯価値を高めることは可能です。
それでは、「サブスクで顧客生涯価値を高める」は目的でしょうか。
結論から言えば、これは目的ではありません。1人のお客さまから得られる生涯の売上・利益を高めるという、あくまで目標に過ぎないのです。
では、この場合の目的は何でしょうか。
私は、「お客さまが生涯にわたり利用したくなる商品・サービス(QPS)を提供し、喜んでいただくこと」が目的になると考えます。生涯にわたり利用したくなる商品・サービスを提供すれば、結果として顧客生涯価値は高まるのです。
「当たり前のことではないか」と思われるかもしれません。
しかし、「サブスクで顧客生涯価値を高める」こと自体が目的となり、お客さまが生涯にわたり利用したくなる商品でないにもかかわらず、定額料金で提供しようとして失敗するケースは、世の中に数多く存在します。
サブスクの歴史を振り返ると、PDFなどを提供しているアメリカのAdobeが、イラスト編集ソフトを定額料金で提供したことが始まりの一つとされています。
イラスト編集ソフトは、クリエイターにとって必要不可欠なものでしたが、従来は高額な買い切りが必要でした。そこでAdobeは、サブスクとして提供することで、クリエイターが低額で継続的に利用できるようにしたのです。
ここで重要なのは、顧客であるクリエイターにとって、イラスト編集ソフトが長期にわたり利用したくなる商品であった点です。
だからこそAdobeはサブスクモデルを成立させ、安定した売上と利益を実現することができたのです。
「売上や利益を上げる」ことが目的ではなく目標であることは理解しやすいと思いますが、「サブスクで顧客生涯価値を高める」となると、目標ではなく目的として捉えてしまうことも少なくありません。
このような誤解を避けるためには、目的が常にお客さま視点に立っているか、お客さま第一の立場になっているかを確認することが重要だと考えます。
増田 賢作