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後継者必見「経営がうまい社長が気づいていること・やっていることとは?」

知恵のバトン
2026.04.09

(弊社所属のコンサルタントによる長編コラム「KC文集2026」掲載記事)

■はじめに
小宮コンサルタンツに入社して丸11年が経ちました。その中で感じていることは、小宮の言う「良い会社」をつくることの難しさです。

小宮は「良い会社」をこう定義しています。

この3つが同時になされている会社を「良い会社」と言っています。さらに加えると、「永く続いていること」も良い会社の要素だと考えます。会社をつくったらつぶさない。つぶれてしまうと、取引先や社員・関係者に対して多大な迷惑をかけてしまうことになります。「永く続いていること」も加えた4つのことを同時に成し得ることは、本当に簡単なことではありません。良い会社になるためのいくつもの変数を見つけ、それに対して効果的な手を打ち、それが絡み合って積み重なって効果を発揮していく。その方程式はとても複雑です。

いわばこの方程式を解くことにこれまでのコンサル人生20年以上試行錯誤してきました。社員教育から始まり、採用、人事評価制度、営業強化、マーケティング戦略、投資戦略、経営計画書の策定・実行といった支援を経営の現場で伴走させて頂きながら実践をしてきました。

そうした中、ここ数年で見えてきたことがあります。それは、経営のうまい経営者は気づいているけれども、経営がうまくいっていない経営者は気づいていないことがあるということです。そこで今回は、「経営がうまい社長が気づいていること・やっていることとは何なのか?」ということについてお伝えできればと思います。

■ある後継社長との会話
ここでひとつ、事例をご紹介いたします。以前、ある後継社長とお話をさせて頂いた際に、次のような会話をしました。


さて、この会社の本当の課題は何だと思いますか?
管理職のテコ入れをすれば、この会社は良くなるのでしょうか?

私はこう考えます。この後継社長が言っていることには大きな矛盾があると。どういうことかというと、後継社長も管理職も客観的に見ると「目の前のことをやっていて、何か問題ありますか?先のことを考えるのは後回しでいいでしょ?」という状態であることがわかります。しかし後継社長は「管理職に対しては先々のことを考えろ」と言いつつ、自分は「先々のことを考えるのは大変だからやりません」と言っているわけです。矛盾していますよね。しかしこの後継社長は、そこに気づいていませんでした。私はそこが課題なのではないかと考えたのです。

では、なぜ社長は気づかないのでしょうか?そしてなぜ、このようなことが起こるのでしょうか?

■社長に起こる錯覚
このような状態になってしまう背景に、「社長に起こる錯覚」があると考えています。

中堅・中小企業の経営者は、プレイングマネージャーとして事業にかかわることが多くあるため、目線が短期になりがちです。短期的なことは、ある程度、具体性があり、取り組みやすいため、そちらを優先的に手を付けることが多くなります。それを続けていると、短期的な視点でしか事業を見れなくなっていきます。また、そちらのほうが社長として仕事をしている感が得られやすく、なかなか離れられなくなっていきます。裏を返せば、長期的なことを考える機会や時間はどんどんなくなっていき、長期的なことを考えることを忘れていき、「短期的なことを考え、実行することが経営という錯覚」に陥ります。

また、中堅・中小企業は大企業に比べると、組織が十分に整備されていないことが多いため、日々様々な問題が起こります。経営者もプレイングマネージャーのため、その問題へ対応しなければなりません。そのうち、経営者は「日々起こる問題に対応することが自分の仕事であり、経営であるという錯覚」に陥ります。そして、「自分がいないと会社はまわらないという錯覚」に陥っていきます。

これは経営者が悪いということではなく、中堅・中小企業は、経営者がプレイングマネージャーであるという環境が多いため、このような錯覚が起こりやすい状態にあると言えます。

しかし、このようなことが錯覚であると気づかないと、経営はうまく進まない。経営がうまい社長はこの錯覚に気づいているけれど、うまくいかない社長は気づいていません。「経営をしていると思っていたのに、それは経営ではなかった」と気づけるかどうかにかかっています。

ひとつ事例をご紹介します。その経営者は、自分がかかわらないと会社がまわらないと思い、様々なことに首を突っ込んでいました。そしてそこに自身の存在意義を感じ、心地よさを感じていました。あくる日、その経営者に病気が発覚し、急遽、数週間入院することになりました。会社からたくさん電話がかかってくるかもしれないと待っていましたが、電話はぜんぜん鳴らない。そこでその経営者は気づきました。自分がいなくても会社はまわるんだと。そして、自分は経営をやっていたようでやっていなかったと気づき、その後、経営をすることに注力することで、会社をさらに伸ばすことができたということでした。

■経営がうまい社長が気づいていること
経営がうまい社長は、この錯覚に気づいているのですが、具体的にはどのようなことに気づいているかを見ていきたいと思います。

ひとつは、経営がうまい社長は「経営と執行は違う」ということに気づいていて「経営とは何か?」ということを理解しています。では「経営をする」ということは、何をすることなのでしょうか?その点について「経営と執行の違い」から見ていきたいと思います。


「経営」は、企業の存在目的を実現するための中長期的な将来像の実現のための活動。「執行」は、現業による運営をより良く実現していくための活動。

「経営」についてもう少し具体的に言うと、「経営」は中長期で広範囲が大前提。中長期を考えると、今の事業が存続していけるかは、絶対とは言えません。安泰とも言えない。なぜかと言えば、外部環境や内部環境が変化するからです。お客様が求めるものが変わるかもしれない。競合が新たな打ち手で巻き返してくるかもしれない。また、社内の組織の年齢構成も高齢化が進みます。そうしたことを予測しながら、既存事業の更なる深掘りをしたり、新規事業領域の検討をしたりしていくことが経営になります。

それに対して「執行」は時間軸が短期で考える範囲が狭い。執行は、目の前のことをより良くしていくことが求められます。一方で、目の前のことは引力が強いので、そこに意識が偏りがちになります。執行に偏ると、経営がおろそかになっていきます

次に、経営がうまい社長は「中堅・中小企業の社長は忙しいのが大前提と考えないといけない」ということに気づいています

先述したように、中堅・中小企業の社長はプレイングマネージャーとして動かなければならない環境にいることが多いため、執行をまわすことに追われがちです。一方で、社長の本来の仕事は、執行を回すことではなく、経営をすることです。執行もやって、経営もやってと社長がやらないといけないことは多岐にわたります。ですので社長は「忙しくなくなるということは永遠に来ない」と考える必要があります。「時間がなくてできません」は言い訳でしかありません。

さらに、経営がうまい社長は「社長の時間が一番重要な資源」であることに気づいています。言い換えれば、社長としての影響力の大きさを知っています。組織の誰が変化・成長すれば、この原理が一番働くかを知っています。

なぜ社長が変化・成長することで組織に大きなインパクトを与えるかというと、社長が一番大きな権限を持っていて、多くの意思決定ができるからです。プロ野球やプロサッカーリーグを思い浮かべて見ると、下位に低迷していたチームが、監督が変わることによって劇的に強くなるということがあります。トップの影響力は、良くも悪くも組織に大きな変化を与える力になります。

その影響力を発揮するためには、社長として自身の時間をどこにどう使うかが問われます。多くの経営者を見ている経験から、会社の命運はここにかかっていると言っても過言ではないと考えています。

最後に、経営がうまい社長は「経営をうまく進めるための4つのステップがある」ということに気づいています。そのステップがこちらです。


これは、社長の時間をどのタイミングでどこにどう使うのかを示したものです。どのステップの際に、何に優先順位をおいて時間を使っていくかを見える化しています。

経営をしなければならないと気づいたとしても、経営をするための時間をつくれていないというケースが多くあると感じます。なぜ、そのようなことが起こるかというと、社長がいないと執行が回らないという状態だからです。そうした状態であれば、第1・第2ステップから取り組み、そこがクリアできて初めて経営に取り掛かることができるようになります。

経営がうまい社長は、先述の気づきからこの4つのステップがあることに気づき、実行することができています。次から、この4つのステップについて細かくお伝えしていきます。

■なぜ「後継者必見」としたか?
その前に、タイトルに「後継者必見」と入れた理由についてお話します。これまで多くの後継社長に会ってきました。一概には言えませんが、後継社長には以下のような傾向や特徴があると感じます。

①経営とは何をすることかを知らない
「経営とは何か?」を教わることなく、代替わりし社長になるケースが多くあります。創業者は厳しい現実の中でもまれ、気づき、経営が実践できるようになっていくのですが、後継者にはその経験がないため、経営を知らずに経営をしているケースが見受けられます。

②社長としての時間を何に使うか整理ができていない
社長になると、自分で時間を自由に使えるようになります。一方で、社長は何をやる仕事なのかを教わったことがないので、そうなると、これまでの延長線での時間の使い方をしてしまう。営業をやってきた方であれば営業に時間を割き、技術的なことをやってきた方であれば技術に時間を割くという風に。そして、社長になると誰からも怒られなくなり、指摘されなくなります。そのため、社長としての時間の使い方が合っているのかどうか判断がつかずに過ごしてしまっているケースが見受けられます。

特に創業者や先代の作った顧客基盤が安定しているとそれがずっと続くので、「自分は経営ができている」と錯覚してしまうことがあります。それだけに後継者の方は、経営がうまい社長が気づいていること・やっていることをぜひ参考にして頂きたいと思っています。

■経営がうまい社長がやっていること ~4つのステップ~
▼第1ステップ:『社長が入り込み、執行がまわる状態をつくる』
1ステップは言い換えると、「安定した業績をあげることができる状態をつくる」ことが目的になります。

そのために欠かせないのは、良い商品があるということです。良い商品というのは、小宮の言うQPS」で他社と差別化ができているということです。「Q:製品・商品そのもの」、「P:価格にかかわること」、「S:その他の特徴」を通して、競合他社と差別化が図れていることが大前提になります。良い商品がないということであれば、社長はまずはここに時間を注ぐ必要がありますが、弊社の会員企業様は、この点でうまくいっている会社が多いように感じます。

一方で、良い商品は持っているのだけど、「集客⇒見込み客フォロー⇒販売⇒顧客化」の活動が機能していないために、会社の業績が安定しないという課題が多くあるように感じています。

「集客」は、お客様となる対象に自社や商品を知ってもらい、興味を持ってもらうための活動。「見込み客フォロー」は、興味を持ってもらった対象にさらに知りたいと思ってもらうための活動。「販売」は、買いたいと思ってもらうための活動。「顧客化」は、リピーターになってもらうための活動。組織の中の強みと弱み、社長の強みと弱みを見極めて、どこに社長の時間を使っていくのかを決めます。例えば、集客のところに組織としての弱みがあるのであれば、そこに社長が入り込み、人脈づくりや宣伝活動に注力することになります。

この際のポイントは「徹底」です。「徹底」を具体的に言うと、「やることを決める」・「決めたことをやる」・「成果が出るまでやり続ける」ということです。「成果が出るまでやり続ける」の意味合いは、結果とプロセスを振り返り、何がうまくいっていて、何がうまくいっていないかの要因分析とその対策を成果が出るまでやり続けるということです。「徹底」ができていないがために業績が安定しないという会社が多いと感じます。

このステップでは、短期的な結果を出していくことが求められますが、注意しなければならないのは、売上・利益至上主義にならないことです。大事なのは現金です。会社にどれだけの現金を積み上げられるかが勝負所になります。会社は、現金がなくなれば倒産します。小宮の言う「手元流動性」をしっかりとウォッチしていきます。手元流動性とは、月商(年間の売上を12ヶ月で割ったもの)の何か月分の現金を持っているかという指標になります。23か月を基準とすることをお勧めします。

▼第2ステップ:『社長がいなくても、執行がまわる状態をつくる』
2ステップのポイントは、仕組み化です。社長がいないと動かなかった組織を、仕組みで動く組織へと転換させます。

1.社長が今期の方針・目標・そのための打ち手を決め、発信する
そのためにまず社長がやらなければならないことは、単年度の数値目標と方針・打ち手を掲げることです。

自社の分析をして、どこに課題があるかを整理します。例えば、売上は前期と比べて上がったのか下がったのか?その要因は?利益は上がったのか下がったのか?その要因は?単価は上がっているのか?その要因は?コストはどうか?リピート率はどうだったか?など、結果(数値)と組織の行動がどう関連しているのかを分析していきます。そうすることで、組織としてうまく進められたことや逆に進められなかったことがわかってきます。

それらのことを踏まえて、次の期の数値目標とそれを実現するための方針・打ち手を検討します。例えば、前期の数値分析の結果、売上は上がっていたけれど、それは世の中的な物価高の流れで単価を上げることができたことが要因で、販売数量を見てみると減少していたということがわかった。そこから今期は、販売数量を増やすことが方針で、そのために、同じ取引先の違う部署にアプローチをかけることや前期販売が好調だった企業と同業界の他企業へ提案を展開することなどを打ち手として考えます。そして、そのための社内体制を検討し、検討したことを全社員へ発信します

2.目標と打ち手の進捗状況を追い、軌道修正を図る会議体を運営する
次に社長がやることは、今期掲げた数値目標とそのための方針・打ち手の進捗状況を把握し、その軌道修正を図るための会議体をつくり、運営をすることです。

社長主導で、関係者が集まる時間を定期的に設定し、その会議の目的・アジェンダ(話し合う議題)を事前に決め、告知します。この会議の目的は、報告会ではなく、数値目標達成のための改善策を出し合い、話し合うことです。うまくいっているのであれば、なぜうまくいっているのか、もっとうまくやる方法はないか。うまくいっていないのであれば、なぜうまくいっていないのか、うまく進めるためにはどうすればいいかといったことを話し合っていきます。

ここで社長として大事なアクションは、起こっている事実・状況をきちんと聞くことです。結果に一喜一憂して喜んだり、イライラしたり、社員の話を最後まで聞かないということではうまくありません。ここでは、どうしてそうなったのかという事実を把握して冷静に判断することが求められます。せっかちな社長や短気な社長は注意が必要です。

3.各部長を巻き込み、各部長に部門目標の責任を委譲する
ここまでできたら、社長主導でやっていた数値目標と打ち手の軌道修正の会議体を徐々に各部長に任せていきます。そして、社長は各部長からの報告を受ける体制に移行していきます。移行の初期段階では、社長はオブザーバーとしてその会議に同席をして、部長の運営の様子を見守ります。部長の気になる点や良い点をメモしておきます。会議終了後に部長と時間を取り、メモしたことをフィードバックします。次回のミーティングの際に改善がなされているかを確認していきます。その繰り返しを行ないながら、会議体を部長に任せていきます。そのタイミングで、各部長からの数値目標の進捗状況とそれに対する打ち手について報告を受ける体制へ移行します。報告を受ける際に、社長としての意見や指示を伝え、部長のサポートを行ないます。

ここでのポイントは、各部長に対して、部長が担っているプレイングの部分の業務の一部を部下に降ろして、それでも部の業務が回る体制を作らせることです。ここが進まないと、部長の業務量が溢れ、そこがボトルネックとなり、執行がうまく進まないということが起こります。

ここまで順調に来ると、ようやく社長が経営をするための時間がつくれるようになります。

3ステップ:『社長が経営を考える時間と機会をつくる』
2ステップまでは、目の前のことを何とかすることで対応可能でしたが、第3ステップはその延長線上にありません。第3ステップは、経営者の意思が問われます。難易度がグッと高まります。

110年後、どんな会社にしたいかを考え、自社のビジョンを描く
いよいよ本格的に経営について考えるステップに入ります。では、経営について考えるにあたって、どこから始めれば良いのでしょうか?

3ステップで社長がまずやるべきことは、外部環境・内部環境分析です。重きを置くのは、将来の外部環境・内部環境がどうなるかということ。おさらいですが、経営は中長期で広範囲。業界はもとより、国内の景気や海外の動向、人口動態や技術の進展、政治の影響など、検討する範囲は一気に広がります。また、時間軸については、第2ステップまでは単年度のことを検討できていればよかったのですが、ここからは3年後、5年後、10年後、自社がどうなっていくのか、業界はどうなっていくのか、国内はどうなっていくのかを検討することが必要になります。また、時間軸が長くなると、自社内部も変化します。当然ながら、社長も含めた社員の方々の年齢が10年経てば10歳歳を取ります。10歳歳を取ることで、強みとなっていた社員の方が引退し、強みを失ってしまうことも考えられます。そうした未来の外部環境・内部環境から、自社にとっての機会と脅威を洗い出し、それらを踏まえて、5年後、10年後にどんな会社にしたいのかというビジョン(中長期の事業構想)を検討します。

ここでのポイントは、10年という時間軸です。時間軸を長くすることで、会社のビジョンが考えやすくなります。どういうことかというと、例えば、日本国内に目を向けると、人口減少で市場は縮小傾向。現事業を続けていても事業が伸びていく可能性は低い。そうなると、新たな市場や事業への参入を検討する必要があります。しかし、3年の事業計画では現実的に考えてしまい、新たな事業のアイディアが出てこない。一方で、10年で考えると、10年というスパンがあれば時間軸が長いため、こんなこともできるんじゃないか、あんなこともできるんじゃないと発想を拡げることができます。そして、ここでのポイントが強みを活かすということです。組織としての強みをどう活かせばいいかをベースに考えることで、さらに発想が拡がり、且つ打ち手の精度を上げることができます。そうすることで、自社のビジョンを描くことができます。

そしてそこから「何のために経営をするのか?」、「自社はどのような存在意義があるのか?」を問答します。ここが経営者の意思の部分にあたります。そこには答えはありません。ここが明確にならないと、中長期の取り組みは、うまく進みません。中長期の取り組みは、すぐに成果が現れません。成果が現れないと、間違っていたのではないかと疑心暗鬼になり、方向性を変えてしまうことがあります。経営者の意思が明確でないとブレてしまうのです。また、経営者の意思は、会社の判断軸となります。その意思があいまいだと社員が判断する際に迷いが生じ、パフォーマンスの低下やミス・トラブルを引き起こす要因になります。社員のパフォーマンスが低い原因を社員側に求めていませんか?もしかすると、経営者の意思があいまいなためにそうなっているのかもしれません。

経営者の意思は、考え続けて、自問自答し続けなければ、明確になりませんAIやコンサルタントが支援することもできるのですが、最後に決めるのは社長です。

2.そのビジョンを実現するための計画を立て、実行する
10年後のビジョン(中長期の事業構想)を描いたら、次にそのための計画を検討します。計画の中には、組織体制、数値目標、スケジュール(マイルストーン)が含まれます。ビジョンを実現するための体制・数値目標を見立てて、その体制や数値目標を実現するための課題を洗い出し、その課題を解決するための案を洗い出していきます。その解決策を短期・中期・長期で振り分けます。そこから、直近の1年で何を実行するかを整理し、単年度の実行スケジュールを決め、誰を責任者・担当者として進めるかを決定します。そして、ここまで検討したことをパワーポイントなどにまとめ、全社員へ発信します。

ここでのポイントは、社長自身がやること・やらないことを決めるということです(社員に伝えるかどうかは状況次第で決めます)。ある社長は、次のように定義をしました。


明確に決めることによって、10年後のビジョンに向けた施策を優先度高く進められる状態がつくられます。決めていないとついつい現場に首を突っ込みたくなり、執行中心に逆戻りしてしまいます。そうではなく、この経営者の言葉にもある通り、新しい事業の「起点」となる役割を社長が担うことが重要になります。新しい事業や取り組みは、とにかく難易度が高いため、苦戦します。社員に任せていてはなかなか前に進みません。社長が率先垂範で取り組み、社員を巻き込みながら進めていくことが必要になります。

▼第4ステップ:『社長と幹部で経営を考える時間と機会をつくる』
3ステップを順調に進めることができたら、いよいよ最終ステップの第4ステップです。第4ステップでは、経営をするためのチームをつくります

1.幹部の役割を明確にする
3ステップでは、社長1人で経営を引っ張ってきましたが、4ステップではチームで経営を引っ張っていきます。そのためにまず取り組むことは、経営チームに入る幹部に何を期待し、何をしてもらいたいのかということを定義することです。ここは非常に大事なところで、なぜかと言うと、私が見てきた多くの中堅・中小企業は、この定義がされていませんでした。幹部は執行の責任者止まりで、褒賞的な意味合いで役員にしたというケースも多く、「経営」にかかわる幹部の役割を決めている企業は本当にまれです。

ここを定義せずに、経営メンバーとして迎え入れるとどのようなことが起こるかというと、「意見を求めてもなかなか出てこない」、「意見があっても自部署を守る発言しか出てこない」、「忙しい中、何で自分がやらないといけないのかという後ろ向きな態度を取る」などとても一緒のチームという雰囲気にはなりません。

多くの中堅・中小企業の幹部育成にも関わってきた中で、私が考える中堅・中小企業の経営幹部の役割は以下の通りです。

経営幹部の役割①『社長と一緒にビジョン(中長期の事業構想)を検討する』
最終的に社長が決めるのですが、より良いビジョンにしていくためには、経営幹部からの意見が重要です。社長の考えが必ず正しいと限らないので、社長の意見に反対することも時には必要になります。社長も人間なのでブレることもあります。そこに気づいて意見を言えるのが良い幹部と言えます。

経営幹部の役割②『ビジョン実現のための計画の実行を引っ張る(角度をつける)』
計画の実行は、幹部の下の役職の方に担ってもらい、その実行を引っ張るのが幹部の役割。具体的には、幹部の下の役職の方を巻き込み、その方がうまく計画を実行できるように支援をします。幹部がいつまでも実務を担っているのではなく後任を育成し、経営幹部としての役割を果たす時間をつくることが重要になります。

経営幹部の役割③『存在意義・ビジョンの宣教師となる』
「自社は何のために存在しているのか?」、「何を目指しているのか?」を浸透させる役割があります。存在意義・ビジョンの浸透は社長の役割ではありますが、それをかみ砕いて社員へ伝えるのが幹部の役割です。社長よりも、より近い立場だからこそ伝えられることがあります。良い会社は、幹部が社長の分身となり、存在意義やビジョンを浸透させています。

経営に関する幹部の役割を検討する際の参考にして頂ければと思います。

2.幹部候補を選定し、経営の勉強をする機会を与える
幹部の役割が定義できたら、次は幹部候補となる人材を選定し、その人材に「経営とは何か?」を学ぶ機会をつくります。方法としては、課題図書を設け、その課題図書を読み、レポートを書かせた上で、幹部候補と社長で理解のすり合わせをするというやり方があります。また、理解をすり合わせるだけではなく、その気づきから具体的に取り組むことを決めて実践をして、振り返りをするというやり方もあります。経営を学ぶための課題図書としては、小宮の「経営者の教科書」やユニクロの柳井正さんの「経営者になるためのノート」、稲盛和夫さんの「経営12か条」がお勧めです。社長が講師役になり、幹部が考えたことを整理したり、深めたりするための支援を行ないます。また、経済分析の発表をさせる方法もお勧めします。具体的には、日経新聞を読んで、気になる記事を深掘り、レポートを書かせ発表をさせる。小宮の言う「関心の幅」を拡げるためには、日経新聞を読む習慣を持つことが必要になります。

そうした勉強会を繰り返す中で、経営幹部としての適性を見極めます。そのポイントを私はこう考えています。
時間軸が長くなってきている(長期を見据えた発言や行動が出てきているか?)
視野が広くなってきている(自部署だけではなく、他部署や会社全体のことを考えた発言や行動が出てきているか?)
自分を変えようと動いている(これまでの自分の考えに固執せず、わからないことを受け入れ、難しいとわかりながら前向きに取り組む行動が取れているか?)

経営幹部を選定する際の参考にして頂ければと思います。

3.幹部を自社のビジョン・中長期構想の検討・作成に巻き込む
経営幹部の選定ができたら、いよいよそのメンバーと経営について考える時間と機会をつくります。具体的には、自社のビジョンの検討とその計画づくりに巻き込みます

まずは社長から幹部に対して、定義した経営幹部の役割を伝え、経営チームをつくる目的を伝えます。目的の例は以下の図のようなイメージです。


その後、将来の外部環境・内部環境分析を行ない、機会と脅威を洗い出し、それらを踏まえて、5年後、10年後にどんな会社にしたいのかというビジョン(中長期の事業構想)を検討します。

社長は、幹部とのミーティングの際、ファシリテーターの役割を担い、幹部に対して意見を促したり、意見を掘り下げたりしていきます。それらの意見を幹部とすり合わせをしてまとめていき、最終的な意思決定を行ないます。

ここでのポイントは、経営幹部に事前に自分の考えをまとめさせることです。事前の検討なしでビジョンを検討するためのミーティングを実施すると、経営とは何かの勉強をしていたとしても、幹部から意見が出てこないということが起こります。また、幹部が実際に自社のことを考えようとすると、なかなか考えが整理できない、まとまらないということが起こります。事前に社長が、次のミーティングまでに考えてほしいことを設問として用意し、それを幹部へ伝え、準備をしてもらいます。

さらに、もうひとつのポイントは、幹部は社長ほど当事者意識がないということを認識することです。幹部とミーティングをしていると「何で幹部たちは、こんな意見しか出せないのか」、「本当に会社を良くしたいと真剣に考えているのか」とイライラすることが出てきます。社長は、当然のことながら、会社・仕事のことを自分事として捉えています。同族経営なら、なおさら強い。一方で、幹部も含めた社員はそうではありません。当事者意識については、経営者と社員では、圧倒的な差があるのが実情です。ビジョンを考えるミーティングに参加してもらうこと自体が、幹部に当事者意識を高めてもらうための機会となるので、イライラをグッとこらえて、時間をかけて、幹部としての成長を促していくことが大切になります。

4.ビジョンの実行計画の進捗を追い、軌道修正するための会議体を運営する
ビジョンが決まったら、それを実現するための課題と解決策の案を洗い出して、短期・中期・長期に振り分けていきます。それに対して、直近の1年で何を実行するかを絞り込みます。各幹部はここまでの検討を踏まえて、自部署のビジョン(35年後)と単年度の目標・実行策・実行スケジュール・担当者を検討します。ここまで検討した内容を社長がパワーポイントなどにまとめ、全社員へ発信します。その後、各幹部は部署ごとに、社長が全社発信した内容を自部署向けにかみ砕き、自部署が力を入れること、自部署の社員に期待すること、自部署の目標をまとめ、発信します。

その後、ビジョンに向けての実行計画の進捗を確認・軌道修正をするための会議体を設定します。社長と幹部が参加し、各部署の取り組み状況を把握し、実行度を高めるための意見交換を行ないます。

ここでのポイントは、社長が幹部に対して改めて何のための計画なのか?これを実現することで自社がどうなるのか?幹部の役割は何だったのか?ということを繰り返し確認し、幹部に思い出させることです。なぜかというと、幹部には執行の風圧(目の前のことが優先されがちになる状態)があり、どうしても目の前のことが優先され、長期的な施策・取り組みを後回しにしがちです。そうならないためには、その目的を思い出させ、認識してもらうことが必要になります。社長は、幹部に対して、存在意義・ビジョンに対する理解を促すことをし続ける必要があります。

■最後に
ここまでお読み頂き、有難うございます。気づいた方もいるかと思いますが、良い会社にするための変数の中で、一番大きな変数は「社長の行動」です。社長の行動が、組織に対して大きな影響力を持ちます。ひとつの事例をご紹介します。

A社は見事なまでに良い会社でした。利益の出づらい業態でありながらも高収益で、売上も右肩上がり。社員の方々はとてもイキイキと働いています。A社はいろんな施策を行なっていましたが、社長の話を聞く限り、やっていることは他の会社がやっていることと大きく変わりません。私は、なぜここまで良い会社になっているのかが腑に落ちませんでした。その後、社員の方に個別に話を聞かせて頂く機会があり、そこで私は「どの施策が一番効果を発揮していると感じていますか?」と質問をしてみました。そうしたところ、その社員の方は「社長が一番がんばっているんですよね。新しいことをやるときは、一番勉強していますし、挨拶や掃除でも一番、一生懸命やっているんです。それを見ていると自分ももっとがんばらないとと思うんです」と。いじわるな私は、「でも、そこまでできないよと思う社員の方もいるんじゃないですか?」と質問してみました。すると、「そうですね、そういう社員もいると思いますが、たぶん少ないと思います。社長への感謝の気持ちも強いですからね」と。

社長の行動が大きな影響力を持っていることについて、この事例から感じて頂けたのではないでしょうか。冒頭で述べた「良い会社」にできるかどうかは、社長自身が「社長の影響力の大きさを意識できるか?」、「それを良い方向に使えるか?」にかかっていると言っても言い過ぎではないと今は確信しています。そして、そのために重要になるのが「社長の時間の使い方」です。今回お伝えしたことを通して、その時間の使い方を見つめ直すきっかけになればうれしく思います。


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