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推薦図書:『「顧客消滅」時代のマーケティング ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方 』(小阪裕司著/PHPビジネス新書)

経営のヒント
2021.09.30

本書は今年の2月に発刊され既にベストセラーとなっているマーケティングに関する本です。Amazonでは「★コロナ時代の新マーケティングバイブルとして大反響! 続々増刷決定!」と謳われている通り、既にお読みになった方もおられるのではないでしょうか。

 

◆このような方におススメ
自社のマーケティングマインドが弱い、自社のマーケティング・イノベーション(顧客の創造)の仕組みを見直したい。営業で思うように成果が上がっていない。或いはコロナ禍で業績が落ちた…等、お客さまとのつながり方にお悩みの方に是非おススメです。

 

◆内容はリレーションシップ・マーケティングの本質とその事例
本書をお読み頂くと(マーケティングマインドの豊かな方であればタイトルを見ただけでも?)、KC会員さま、KCクラブの皆様であれば、「ああ、リレーションシップ・マーケティングのことではないか!?」と気づく方も多いのではないでしょうか。その通りです。本書に紹介されている事例はコロナ禍で大打撃を受けている筈の飲食店や街の小売店、そしてB2Bビジネスの事例まで幅広く紹介されています。この非常時にこそマーケティングや経営の本質が見えて来る、そのことを実感できる良書です。マネジメントの父、ピーター・ドラッカーが示す通り、企業の目的は「顧客の創造」です。お客さまのいない会社やお店は存続できません。そのために企業が持つべき機能はたった2つだけです。つまり「マーケティング」と「イノベーション」です。コロナ禍にあってもこの2つの活動に対する質の違いが運命を分けたことは経営や事業のマネジメントをされている方であれば肌で感じた1年半ではなかったでしょうか。

 

元来、コロナ禍に関わらず、ずっと前から我が国の経済をマクロでみてもミクロで見ても20年以上GDPが横ばい、或いはこの25年間で見てもOECD(経済協力開発機構)加盟諸国の統計(「Average annual wages」)によると、主要13カ国の1994年と2018年の名目賃金上昇率は日本だけがマイナス4.54%とマイナス成長となっています。つまり豊かになっていないのです。“貧すれば鈍する”とはよく言ったものですが、何故か心まで寂しいといったことまで社会学者たちからも漏れ聞こえます。この原因は様々想定されますが、個人的な意見が許されるならば、大企業も中小企業も効率性ばかり重視して、顧客にとっての「付加価値」を高める事への関心と実践が減退しているのではないかと肌身で感じています。労働生産性の話ですが、効率を高めることは大切です。しかし一方の付加価値の向上や創造の方が、社会の生成発展や本書でも語られているようなワクワクした人生、弊社で大切にしている「働く喜び」を世の中に増やすと信じます。生産性の議論の前に大原則としてあるのは先にも紹介したドラッカー先生が言うところの「人間への敬意、尊重」です。本書にはそうした事例が豊富です。

 

 

◆マーケティングの本質と本書から得られる示唆
本書ではコロナ禍にあってその企業、店舗或いは事業の命運を分けたこととして、「フローではなくストックの顧客を持っているか」と結論付けます。フローとストックは会計用語としてよく使われますが、貯金ならぬ“貯客”というのがこのマーケティングにおけるストックの意味だそうです。もっとシンプルに言えば、コロナ禍以前からファンがいたかどうか、ということです。リレーションシップ・マーケティングで言うところの最終親密顧客である「パートナー」です。「パートナー」とは自社の商品・サービスを“言葉で応援してくれる”「代弁者」のさらに上位に位置する顧客のことです。その会社や商品・サービスを心から気に入って、その価値を広めることを直接支援してくれる顧客のことです。詳しくは『小宮一慶の実践!マーケティング』等を併せてお読み頂くとより理解が深まるかもしれません。本書でも語られているコロナ禍でも影響を受けなかった、むしろその価値を見直された本質としてリレーションシップ、つまり「つながり」の重要性を説いています。

 

本書で学ぶことのできるマーケティングの本質は何もリレーションシップ・マーケティングにとどまりません。より重要なこととして「バリュープロポジッション」の見直しが挙げられます。紙幅の関係上あとはお読み頂ければと思いますが、簡単に言うと、自分たちのミッション(使命)の発見と顧客にとっての「価値」へのフォーカスをしているかどうか、ということです。自分たちの利益や効率ばかりを重視した自己都合の経営や商品・サービスになっていないか、このコロナ禍はお客さまがその「真偽」を見極めるきっかけになったことは間違いありません。本書で紹介される言葉を拝借すれば「コロナ禍でわれわれは、『必要なもの』と『不要なもの』の間に、実は『大事なもの』があることを知った」と。

 

そもそも“ニューノーマル”という言葉は不可思議な言葉です。常に世の中は諸行無常、変わり続けるのです。早いか遅いか、大きいか小さいか、その違いはありますが、VUCAと言われ続けて10年以上、本書を通じて不易流行の本質的なお客さまとのつながり方を見つめ直す機会になれば幸甚です。


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