対話を通じて会社の未来を共に考えるコンサルタント
▲コンサルティング事業部 馬場秀樹
私は、経営者の方々のいろいろな話を聞いて相談を受けながら、経営課題の解決に取り組んでいます。
最近は、次の経営人材をどうつくるかという案件が多いです。一人ひとりの経営者と話し、それぞれのビジョンに寄り添いつつ、知識や経験を持って、その経営者が進みたい方向性に沿うようデザインするということをやっています。例えば、栃木の漆喰メーカーの経営者の方とは、幹部候補を交えて会社の未来像や人材像を描きながら、成長の基盤となる経営計画を考えています。
研修や講義などで次世代の幹部を育てるというよりは、来期の経営計画を検討することを通して、ミーティングの中で彼らが学んでいくことを支援しています。経営計画自体は仕事で必要になるものなので、それを通じて会社の考え方や経営の原理原則などを一緒に考えるスタンスです。
私は、「人が学ぶ環境にはどういうものがあるのか」を追求してきました。その中で、これだなと思っていることは「人は潜在的に互いを賢くする能力を持っている」ということです。企業という場も学びの場であり、私も企業での経験から、新しい事業や未来を考えるということがまがりなりにもできるようになりました。
その過程で、ティーチングよりも寄り添ってファシリテーションをするやり方や考え方が磨かれたと思っています。
「人が学ぶことを科学する」──教材制作会社時代に出会った認知科学
大学卒業後に入った会社が2年しないで傾いてしまったため、第二新卒として転職活動をしてたどり着いたのが、企業研修のビデオやデジタル教材をつくっているプロダクションでした。当時はWindows95が出たばかりのころです。大手通信教育会社が教材をCD-ROMでつくったりしていました。なので、そういう教材の制作の委託を受けて、ディレクターとして仕様を決めたり、演出を考えたりということをやっていました。
それなりに自分に仕事がハマったのですが、ちゃんとした動機で入社していなかったこともあり、これ以上いても学ぶことがないなと思っている最中、提案していたコンペで落ちて仕事が暇になってしまったことがありました。そこで、時間を持て余していたので、ふらっと大学の図書館に行ったんです。そこで目についた本が、「人を賢くする道具」という認知科学の本でした。その学問がおもしろくて、また私たちが落ちたコンペで採用された会社が、こういったアカデミックなバックグラウンドに基づいて提案したという話を聞いていたこともあり、さらに興味を持ちました。
私は教職課程を取っていなかったので、教育のバックグラウンドはありませんでした。そんな中で認知科学に出会ったんですが、「人が学ぶことを科学する世界があるんだ」という発見が、何よりもおもしろいものでした。その後、教材のわかりやすさを探求してみようと考え、認知科学についてネットで調べていたら、たまたま中京大学大学院で社会人学生を募集しているという情報を見つけました。そして、本当は教授に会いに行って話を聞かなければいけないのですが、研究計画を提出したら、面接に呼ばれ、その大学院に受かったんです。
そうして2004年から大学院で勉強を進めていく中で、教材のわかりやすさを追求していくと、「人のこと」がわからないとダメだなと思うようになったのです。人がなぜ成長するのか、学ぶのかに興味が芽生えました。そこで、人は学ぶときに本や研修からではなく、社会で学ぶ生き物であり、人と関わるからこそ学んでいくということを学んだのです。
私が師事していた認知科学の大御所である三宅 なほみ先生は、コラボレーションの研究をしていました。三宅先生が言っていたのは「人は潜在的に互いを賢くする能力・本能を持っている。対話する中で互いに学び合ったり気付き合ったりする、そういう本能を持っている」という話です。そこで、そういう学びが起きているのがどこかなと考えたときに、「企業だ」と思ったんです。
企業には、目的や目標があって、社員は好む好まずに関わらず、同じ方向に進まなきゃいけない。そこではやらされ感がある人もいて、それで仕事がつまらなくなっていることもある。一方で、自律的に刺激し合い、ひとつの方向に向かっていく組織もあります。
私はこうした学びを実践しながら探求できる場所で活かしていきたいと思い、2007年にNTTラーニングシステムズへ転職しました。
私が所属していた部署は、IT系の教育システムからスタートしたのですが、「それだけでは企業は良くならない」ということで、組織や人材コンサルタントに事業をシフト。コンサル事業の立ち上げに立ち合い、10年くらいそこで仕事をしました。
NTTラーニングシステムズは、ITのプロダクトをつくっていたので自由な社風でしたが、NTTグループという大手なりの課題もありました。一方、何か変えていくには認め合う、お互いを大事にするという組織風土が大事であることなど、いろいろなことを学びました。
また、その中で組織や人を育てるだけでなくて、企業には事業という軸があるので、そこにも興味を持つようになりました。経営戦略を考えたり、新規事業を立ち上げたりするためのワークショップなどを担当し、教育という軸がありつつも事業の中で人や組織を育てていくというところにシフトしていきました。
その後、監査法人系のコンサルティングファームに入社しました。若いコンサルタントが多く、しっかりとコンサルができる事業を立ち上げたいという話で入社したのですが、その事業がうまく立ち上がりませんでした。
そうして、営業の仕事をあてがわれて、おもしろみを感じなくなっていたところ、NTTラーニングシステムズで一緒に仕事をしていた熊田 潤一と飲みにいく機会があり、彼が今働いている会社がとても良いという話を聞きました。その上で、熊田は私に「また、馬場さんと一緒に仕事がしたい」と声をかけてくれたんです。彼とは志も一緒で、楽しく仕事をしていた仲でした。
経営コンサルタントへの転職、同志からの誘い
熊田は、私が入社した1カ月後にNTTラーニングシステムズに入ってきました。右も左もわからない中でコンサルをやって、一緒にお客さまのところへ行ったり、プロジェクトを行ったりしていました。そのとき一緒に学んだり、話をしたりしたことが今に生きています。熊田と一緒に仕事をすることで、考え方ややり方が磨かれてきたと感じています。
大事にしてきた考え方は、「お客さまの一番のファンになること」。
お客さまの「こうしたい」を理解して、「どうやったらそこに一緒に行けるか」と考えることで、自分の知識や知見が役に立つものになります。そうやってお客さまから学ぶことを熊田と一緒にやっていたんです。
だから、彼は私のことを同志だと思ってくれていて、「また一緒に仕事したい」と言ってもらえたときは、本当に嬉しかったですね。
小宮コンサルタンツに入社したときは、「帰ってきたな」という感覚が強かったことを良く覚えています。お客さま第一という言葉がありますが、何でもお客さまの言うことを聞くのではなく、お客さまのことを理解して、より良くなるためにはどうしたらいいかを考える。そして、時には厳しいことを言ったり、厳しい経験もしたりしながら実践していく。形に拘っていなかったり、良くも悪くも数字に拘っていなかったりと、やりたいことができる環境に戻ってこれたなと思いましたね。
企業と世の中をつなぐ小宮コンサルタンツで、組織の理想を追い求める
小宮コンサルタンツで仕事をするようになってから、一番の変化は、経営者と仕事をする機会がかなり増えたということです。それに伴って自分の価値観が大きく変わりました。以前は、大きめの会社の人事部長や経営企画室長に対して、プロジェクトベースで課題解決の提案をしていました。しかし、経営者が相手となると、その人には後ろがいない。経営者が決断するしかないところは、これまでと全然違うなと思いましたし、関わり方も違いますね。
小宮コンサルタンツのお客さまには、経営者の全人格や考え方、覚悟でその会社をつくっている感じがします。その考え方がしっかりされていて、世間から人をはじめとした財産を預かっていて、それを世間に還元していく、貢献していくことを考えられている方が多いんです。私たちはそういう人たちに認められる存在じゃないといけないなと思うんです。
小宮コンサルタンツのお客さまである経営者の方々は、ただ利益を上げるのではなく、世の中に役立つということを真剣に考えています。会社をつぶしたらいけないというプレッシャーの中で安易に逃げず、未来のことを考えている。そのために、経営者の方々が向き合うべきことに向き合わせるのが私たちの仕事だと思うようになりましたし、そうアプローチをするように少しずつ変わってきました。
小宮コンサルタンツには、代表の小宮 一慶がいることで、意識の高い「良い会社を残していきたい」という経営者が集まっていて、上質な会社が多いなと思います。お客さまも含め志を同じにした人が集まっているので、そういう人たちと事業をつくり、企業をつくることを通じて自分たちも成長していきたいですし、それによって世の中の役に立つ会社が増えるとか、そこに関わることができるとか、そういうことができたらなと思っています。
そして、小宮個人の会社ではなく、小宮コンサルタンツとして仕事を依頼される状態を我々がつくっていかないといけないという想いもあります。小宮からも、それぞれのコンサルタントが経営者から信頼されるような会社になってほしいという期待もあります。
実力を高めるためにも、例えば本を出すとか、世間的にも名前が認知されるとか、何かしらのプラスアルファが必要でしょう。私がやりたいのは大学の先生です。現場で学んできたことを還元したいという想いがあります。そうすることで、今付き合っている人たち以外の方ともつながりができて、やりとりができますからね。
一般的には50歳になったら「こんなもんでいいか」となる方も多いでしょうが、私は企業・組織の理想を探求・追求しながら、「この領域の第一線には馬場さんという人がいる。話を聞いてみよう」と思われる人になっていきたいです。