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バトンを受け継ぐ「経営者としての軸」を持ち、次のステージを拓く兄弟の挑戦。

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2025.05.07

株式会社サーキットデザインはちょうど創業50年、長野県安曇野市にある会社です。2025年1月に代表取締役社長に就任したばかりの丸山浩司さんと弟で専務取締役の雄司さんは、自社のこれからの取り組みが具体的にみえてきたと熱を帯びて語られます。1年前はそんな気持ちにはなかったというお二人と会社のこの1年の変化とは。

エグゼクティブコンサルタント
新宅 剛 (しんたく ごう)
中央大学経済学部国際経済学科卒業。
アーサーアンダーセン税務事務所を経て、財務会計系のコンサルティング会社である株式会社エスネットワークスにて、事業再生部門とM&A仲介事業を立ち上げ、軌道に乗せた後に小宮コンサルタンツ入社。
経営者に寄り添うコンサルタントという側面と、社内起業家という二つの側面を持ちながら、経営コンサルタントとして戦略の立案推進、経営計画の策定や実行支援、新規事業策定支援、財務戦略・資金調達支援、事業再生コンサルティング、及びM&Aの支援も通じた総合的な支援を行っている。

このままではいけないことだけは分かっていた1年前。

▲社屋前にて左から丸山雄司専務、丸山浩司社長、新宅

株式会社サーキットデザインは、無線技術をベースに様々な用途・分野に応用し続け事業を拡げてきた技術畑の会社です。浩司さん、雄司さんのお父さまが創業、共同創業者である従兄弟が2代目社長となり、会社の歴史も50年が経とうとしていました。二人とも70歳をとうに過ぎ、浩司さんに近いうちにバトンが渡されるという話は出ているものの、はっきりしない状態にありました。

丸山浩司社長「新宅さんと最初にお会いしたときに、今後のことを考えればこの会社は変わらなくてはいけないという気持ちだけは強くありました。とはいえ具体的にどうしていけばいいのか、自分も経営者としての考えがまとまっているとは言えず、カリスマである当時の社長のあとで社員とどのように接していけばいいのかなど、悶々としていたところでした。思えば愚痴っぽい話ばかり聞いてもらったように思います(笑)。」

 

新宅「お話しを伺って、承継が始まらないから・・ということで悩まれていたので、自分たちから準備をしていきましょう、というご提案をしました。経営者になるためには『経営者としての軸』を自身のなかにつくることが大事だと思うのです。まずはお二人と、自社をどのようにしていきたいのか、中長期も見据えて考えていただくことから始めました。」

自分と向き合い、兄弟で話し合い、経営についての軸を固めた貴重な時間。

そこから、浩司さんと雄司さんは、新宅から出された課題に向き合い、自分に問い続ける日々が始まりました。

丸山浩司社長「聞かれる、問答する、ということが大事なんですよね。自分だけではそこまで考えることは難しいと思います。新宅さんに聞かれて、自分にどうなんだ、と問う。それを言葉にするということではっきりしてくる感覚がありました。」

 

丸山雄司専務「私はもともと営業の席に座っていたこともあり、兄と二人で経営に関わることを話すときは、時間をとってわざわざ会議室に入って話すような形でした。日常で経営について話すような機会もあまりなかったのですが、この取り組みを始めてから、いろいろな宿題について二人で話す時間が大きく増えました。そこで二人の考えは大きくは違わないことも確認できましたし、それでも少し意見が違うところや、日々の小さなことなどについても何でも話せるようになりました。」

▲対話をして自分の考えをまとめていく時間でした

 ちなみに、浩司さんと雄司さんは16歳も年が離れていて、兄弟といっても喧嘩をしようがないような関係で育ってこられたそうです。そもそも関係性のよいお二人がとことん考えを話し合うことで、新宅が期待していた以上の成果が表れたといいます。

新宅「お二人と対話することで、お二人が目指す姿は、カリスマが引っ張る個人の力に頼らずとも、この先も会社が続いていくような『組織としての力』を高める会社づくりだということがはっきりしてきました。一通りご自身たちで考えて頂いたあとに、もう一段考えを深めていただくために、テキストを問いとして使うことにしました。弊社でよく活用させていただいているファーストリテイリングの柳井正氏による『経営者になるためのノート』(PHP研究所)です。」

 

丸山浩司社長「たぶん、少し前だったら、こういった書籍を読んでも、そうなんだなあと鵜呑みにしたりするような読み方しかできなかったと思うのです。でも、自分の考えを持てるようになってから読んだことで、なるほどと考えがさらに深まることもあれば、自分や自社は少し違う方向を目指したいと思うこともあり、さらに自身の軸がより明確になったように思います。お客さまを見るということはもちろん前提として大事なのですが、それと同じぐらい従業員を大切にしたい、というのが自分の信条だとはっきりしました。」

 

丸山雄司専務「今後50年、100年さらに続いていくためには、社員一人一人が指示待ちではなく、市場をみて自ら動いて新しい価値を作り出していくような会社にしたいと思いました。でもこれまでも、そういうことを意識して掛け声をかけてもうまくいっていなかったのです。これまでの技術を守ることも大事、新しい価値を生むことも大事、両方大事でやっていきたいのに、どうもどちらかに考えが偏ってしまったり、部署間に壁があったり・・。」

 50周年を機についに渡されたバトンと幹部を巻き込んだ怒涛の3か月のセッション。

そんな取り組みを続ける想いや姿は、当時の会長や社長にも伝わったようです。創業50周年のイベントをきっかけにして、経営のバトンタッチは急に動き出しました。

丸山浩司社長「私たちが経営者になる準備に取り組んでいることは見てくれていました。引き継いでいい、そのほうがいいだろう、とやっと本気で思ってもらえたのではないかと思います。」

晴れて社長と専務の立場になった二人と新宅がこのタイミングで始めたのが、幹部や次世代メンバーを巻き込んでの経営計画の策定です。

 

新宅「やっと環境が整ったということですぐに始めました。就任が1月、新年度が4月と大変タイトでしたが、思い切って新年度に間に合うよう、ぎゅっと濃密にやることにしました。組織の力を高めるということを目標に、自社が目指す姿、取り巻く環境、自社の課題、とるべき方向性や具体策、そういったことを部署を超えて話してもらうことに主眼を置くようにしていきました。」

▲月に数回に及ぶセッションの様子

 参加メンバーは12名。3人で相談し、毎回の議論のチームメンバーを組み替えたり工夫しながら、あとはチームに任せる形で課題について検討し、皆で集まって議論をする、という形態で進めたとのこと。

丸山浩司社長「結構大変なスケジュールだし課題も多いので、最初は泣き言をいう人もいましたし、本当にやれるのか、皆でまとまってくれるだろうかと正直なところ不安もありました。参加メンバーも、えらいことが始まった、と内心思っていたと思います(笑)。それが、結果的にこの3か月間は私たちも良い意味で驚かされてばかりで、一気にチームとして成長したし個々人も成長してくれたと思います。新宅さんが、心理的安全性を持って議論を進めるために、本を選んでくれて全員がそれを読んでからスタートしたことも良かったのでしょう。議論のときも、第三者としてコメントしてもらえるので、みんな課題に対して客観的に観られるようになるのです。そして、部署を横断して議論のチームを作ったことで、部署が違っても同じ課題感を持っていたことを理解し、協力して解決しようという機運が生まれてきたのです。」

 

丸山雄司専務「嬉しかったですねえ。こんなに意見が出てくるものなのかと。こういう取り組みをしたらどうでしょう、こんなふうに組織を変えたらどうでしょう、という提案が出てくるのです。ひとつ、本当に感動した話があるのですが、ある部長が自分の部署の優秀な部下を、全社課題である技術継承のためにその担当に異動してもらったらどうかという提案をしてくれたのです。普通なら、自分で抱えて外に出したくないような部下です。でも自分の部署はなんとかするから、会社のことを考えたらそうするべきだと提案してくれた。本当に有難いことです。もちろんその提案を喜んで受けました。」

出来上がった経営計画の発表と、この先への目線

▲北アルプスを眺める安曇野の自然のなかにある本社

そうして皆の意見を入れてまとめ上げた経営計画は新年度の4月に発表されました。

丸山浩司社長「私も、昨年からとことん考えた自分の信念を自分の言葉で社員に語りました。経営計画書は社内のイントラに載せているのですが、少しずつ気にして見てくれている人が増えている実感があります。同じ人が何回も見てくれているのも分かって、それも嬉しい。まだ発表したばかりですが、社員のなかにも、計画書に入れた言葉を使って話してくれる人も出てきています。始まったばかりです。これからじっくり取り組んでいきたい、と思っています。」

 

丸山雄司専務「放置しておいたらすぐ元に戻ると思うので、いかに働きかけを続けるかが大事だと思っています。週に1回、役員と部長での定例会議があるのですが、それを、課題をどんどん解決する場としてスピード感をもって運営することを始めました。それまでも同じ会議は行っていたのですが、決まったことを通達する場でしかなかったんですよね。ここまでの時間で、皆で認識も共有しているので、余計な話に入り込まず、建設的な議論と判断ができています。」

 

丸山浩司社長「部署間の壁があったといいましたが、心理的だけでなく、事務所にある物理的な壁も撤去してフラットな職場にする計画です。奥まった役員室も透明なガラス張りにしようというアイデアも出しています。会社の業績も可能な限りオープンにします。事業開発を行う部署を活性化させ、また一般社員からのいろいろなアイデアや気づきの種を受け取る企画検討会という仕組みもつくりました。これからが正念場ですし、やることはたくさんありますが、やるべきことははっきりしています。」

ちなみに、前社長(現顧問)は元々スーパーエンジニアだった方。今は楽しそうに現場で技術研究をなさっているそうです。

新宅「お二人に任せて安心、と思って頂けたのでしょうね。お二人の関係性も人柄も素晴らしいことが、今回のご支援を通じて、ここまで組織に変化が生まれたことに繋がっていると思います。経営者としての軸をしっかり持つこと、会社の未来に一緒に幹部を巻き込んで自分ごと化していただくこと、今回のご支援で大切にしたのはこの2つです。これからの会社の未来、お客さまへの貢献、そして何より社員一人一人への想いが社員さんにも伝わっているように思いますし、だからこそ社員さん一人ひとりが会社の新しいステージに期待して自ら関わろうという変化が起きているように思います。」

丸山浩司社長、雄司専務の二人の挑戦は始まったばかり。それでも、経営者としての確固たる意思を持ち、力強くこれからのことを語られる姿に、きっとどんな困難も組織の力を活かして前に進んでいかれるだろうと感じました。


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