先日の環境省による伊藤環境大臣と水俣病被害者団体との懇談の様子を見て、憤りを感じた方も少なくないと思います。
被害者やその関係者からの説明を3分で打ち切るために、発言している人のマイクを切ったのです。
当日の進行マニュアルにそのことが書いてあったと報道されましたが、事務方が発言者に配慮することなく、「事務的に」処理してしまったのです。こういう場合に、相手の気持ちを考えることなく処理してはいけないことは明らかです。役人などしょせんこの程度の人間なのかとも思いますが、水俣病などを対応する担当なら、もっと「ましな」人をあてるべきです。
マイクを切ってしまったことに対して、被害者側はもちろん抗議をしますが、その抗議のさなか、今度は伊藤大臣がそそくさと席を立ってしまいました。心のない事務方の対応に、大臣が何かを言うこともなく、席を立ってしまったのを見て、本当に情けないと思いました。この大臣は頭が悪いのか、人の気持ちが分からないのか、その両方かは分かりません。もちろん、このような人は世の中に少なくないとは思いますが、この国の政府の大臣なのです。
こんな人しか大臣を出せない自民党やこの国の政治家の人材の枯渇に愕然としました。
後日、大臣も担当した役人も謝罪に行っていましたが、世間から非難されたからやるというのでは、恥の上塗りでしかないないでしょう。いずれにしても、官僚や政治家の劣化は言われて久しいですが、いみじくも今回の事件はそれを露呈しました。嘆かわしいことこの上ありません。しかし、批判しているだけではどうにもなりません。まず、わが身や自社を振り返ることが大切です。
当社でもクレームなどに対しては、「処理ではなく対応」ということを話します。もちろん、社内の人に対することも対応です。
お客さまや社員など、人に対することは「処理」ではなく「対応」なのです。つまり、決められた通りにやればいいということではなく、相手の気持ちや事情などを考えたうえで、臨機応変に対応しなければならなのです。
上で説明した環境省の役人のように、冷たく「処理」をしてはいけないのです。
伊藤大臣からも学ぶことが少なくありません。もちろん反面教師としてです。私も社員17名ほどの小さな会社の社長ですが、
社員が行っていることが、本当にお客さまのためになっているか、会社の社員への対応も本当に正しいのかを考えなければなりません。もちろん、会社全体だけではなく、自分自身の行動に対してもです。
今回の環境省の水俣病被害者団体との懇談の件は、マスコミにより大きく報道されたので私たちの知る所となり、それにより多くのことを考えるきっかけとなりましたが、ひょっとしたら自分や自社も含めて同様のことが起こっていないとも限りません。当事者は、それでいいと思っているかもしれないのです。
「自社の常識は社会の非常識」だと思い、自身たちだけでチェック・反省するのではなく、
お客さまや社外役員などの外部の方たちからも客観的な意見を求めることも大切なのではないでしょうか。
【小宮 一慶】