最近の外食産業の変化は、私たち消費者として直接目にする機会が多く、その影響を肌で感じることができます。
特に、外食産業や100円ショップなど、社会的な変化を受けやすい店舗を定点観測することは、経営者やビジネスマンにとって非常に有益です。
例えば、牛丼屋のセルフオーダーシステム。学食のようにオーダーを自分で行い、料理ができたらカウンターに取りに行き、食べ終わったら自分で下げるシステムです。
しかし、サラダと卵をセットすると900円くらいになる現状に驚かされます。
以前は、人がオーダーを取り、運んでくれて、同じ料理が600円ほどで食べられたのです。わずか5年、もしくは3年前の話です。
顧客としては手間が増え、値段も上がっていますが、結果的に日本人の「安い、早い、うまい」に慣れすぎた感覚を変えようという試みにつながるのかもしれません。
これが一時的には消費者としては価値の低下に見えるかもしれませんが、将来的な社会の変化に適応するための一歩として歓迎すべきことかもしれません。
また、サイゼリヤの例も面白いです。言わずと知れたコストパフォーマンスが良く、努力が見える企業です。
最近ではキャッシュレス化やセルフレジの導入が進んでいます。明らかに店舗運営にかかる従業員の数は減っているように見えます。
それでも、店舗運営に大きな影響は出ておらず、提供が遅くなることもあまりありません。企業努力が感じられます。
私自身も家族とよくサイゼリヤを利用します。家族と出かけて、帰りが遅くなった時など今更食事を作り、皆で食べる手間やコストを考えると、ついついサイゼリヤに行ってしまいます。
家族での食事後、先に家族を返し、ひとりで残ってちびちびと飲む時間もまた、落ち着くひとときです。その時にセルフレジでひっそりと帰ることができるのも便利です。
このように、外食産業のQPS(品質、価格、サービス)が大きく変わってきています。上場外食産業の賃上げ率も10%を超える企業が出てきています。
しかし、これを表面的に捉えて賃上げを同様に行う必要があるかというと特に大規模チェーンの外食産業は前述のように省力化(学食化的な)がものすごいスピードで進み、残った人が行う仕事をしている従業員の生み出す付加価値を上げて、結果賃上げにつながっているのです。
全体の労働分配率がどうなっているかをしっかりと見ていく必要があります。
一方で、先日行われたスイスの海外視察セミナーで聞いた話では、物価の高さに驚かされました。
ペットボトルの水が900円、サンドイッチ一つでサイゼリヤで家族6人分の食事代になるほどの生活格差を感じました。
当たり前ですが国が違えば社会構造も違い、それが外食産業も含めて様々な環境に現れます。
日本だけの視点で、日本の将来の社会構造だけを考え、日本での目に見える環境変化だけを見ても気付かない視点です。
サイゼリヤで穏やかに過ごしつつ、牛丼チェーンの学食化と価格変化に驚き、海外の話を聴いたり行ったりして国レベルの格差の広がりを実感するとともに自らのスケールの小ささを経験しながら、経営感覚・ビジネス感度・国際感覚を磨いていかねばと思う日々です。
【コンサルタント:新宅 剛】