先日行われた米ワイオミング州ジャクソンホールでの世界中の金融関係者が集まった会合での米国の中央銀行であるFRBのパウエル議長の発言から、9月17日、18日に開かれるFOMC(公開市場委員会:日銀の政策決定会合に当たるもの)で利下げを行うことがはっきりしました。
そのため為替市場は少し円高方向に進んでいます。この原稿を書いている時点では142円台です。
市場が注目していた8月の米雇用統計が9月6日に発表されました。
失業率は若干改善し、4.2%、世界中のエコノミストが注目する非農業部門雇用者数は14.2万人の増加で予想よりも低い数字だった上に、前月分も8.9万人に下方修正されました。
一方、消費者物価の上昇率も2%台後半と、FRBが目標としている2%程度よりは幾分高めなものの、比較的安定していることから、9月のFOMCでの利下げは確実とみてよく、注目は、下げ幅が0.25%なのか0.5%なのかということです。
インフレ再発の懸念が遠のき景気を刺激するなら0.5%が妥当でしょう。
一方、米国では11月5日に大統領選挙が行われます。トランプ氏はFRBのパウエル議長をかなり厳しく批判しています。
そうした点を考えると、パウエル議長は心情的にも、ハリス氏や現政権を「応援」したくなるものです。
9月のFOMCの次のFOMCは11月6日、7日で、大統領選後となるため、9月のFOMCでの利下げ、それもできるだけ大幅な利下げを予想することもできます。
というのは、私の米国の友人は、「共和党や民主党の熱烈な支持者でなければ、大統領選当日の懐具合で現職を選ぶかライバルを選ぶかを決める」という人もいるくらいだからです。
消費が美徳の米国では、経済情勢がとても大きなポイントなると考えます。
一方、日本では9月19日、20日に日銀の政策決定会合が開かれます。こちらは、次期首相を実質的に決める自民党総裁選の27日より前です。
日銀としては2%台のインフレが続いていることや、何よりも金利ひいては金融を正常化することを考えれば、現状0.25%を上限としている政策金利を上げたいと思っているはずです。
しかし、日銀としては自民党総裁選前に政策金利を上昇させることで市場を混乱させたくないことや、現状も株価や円相場が比較的大きく動く日があり、先日日銀の内田副総裁が大きく相場が動く間は利上げをしないと発言したことを考えれば、9月の利上げは難しいと考えられます。
その次の日銀の政策決定会合は、10月30日、31日ですが、次期自民党総裁は、総裁選後それほど長くない時期に衆院を解散し、総選挙に持ち込むと考えられます。
現在の衆議院議員の任期が来年10月までで、そこまでには必ず選挙が必要なことと、そこまで待つとまたスキャンダルが出る恐れがあるからです。
そうすると、総選挙期間やあるいはその直前ということで、10月末の政策決定会合での利上げは難しく、結局12月18日、19日の今年最後の政策決定会合での利上げの可能性が高いと考えますが、これも総選挙の日程次第です。
そして大きな経済的変動がなければ、日銀は将来的には1%程度まで金利を上げたいと考えていると思われます。
いずれにしても、米国は利下げ、日本は利上げのトレンドがしばらく続きます。
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【小宮 一慶】