今年もよろしくお願いいたします。箱根駅伝、今年も青学強かったですね。過去11年で8度目の優勝です。
原監督はインタビューで「最近は私がガミガミ言わなくても、学生たちが自らトレーニングや寮生活をしっかり取り組んでくれている。
『ありがとう』と言いたい」とおっしゃっていたのが印象的でした。
よく知られた話ですが、原監督は、就任して3年経っても結果が出なくて、とにかく競技成績のよい高校生をスカウトしたことがありました。
ところが、この選手がトレーニングや寮生活の規律を守らない。結果としてチームの成績は前年よりも落ち、崩壊の危機にあったといいます。
その教訓から「表現力豊かで、勉強もしっかり取り組める心根のいい選手」をスカウトするようになったそうです。
この話から連想するのは「成功の循環モデル」です。
簡単にいうと、結果を出すことをスタート地点にしてもロクなことがない。「関係の質」を高めることから始めなさいというものです。
関係の質が高まれば、思考の質、行動の質が高まり、良い結果が得られる。そして、さらに関係の質も深まっていくのです。
では、原監督は関係の質をどのように高めたのでしょうか。
インタビューの言葉を裏返すと「ガミガミ」言ってたのですね。関係の質というと「ほめる」「傾聴する」といった行動をイメージしますが、そればかりではないようです。
過去のインタビュー記事や著書でも「ウチは監督が絶対というチームではない」とも言っているのですが「ガミガミ」言っていたということになります。
何に対してガミガミ言っていたかといえば「規律」ということになるでしょう。
そして、ここには原監督の「人間性を育てるのが指導者の役割」という信念があるように思います。
「お子さんをお預かりする以上は、責任を持って陸上の成績が伸びるように全力を尽くします。
しかし、あくまでも生身の体で勝負するのが陸上競技です。箱根駅伝に出場して活躍できるかどうかは正直、100%の約束はできません。
ただ、社会に出ても恥ずかしくない人として成長させることは約束します」
これは、原監督がスカウトする選手の親御さんに必ずする話だそうです。
どんなに心根のよい選手であっても、人間は弱いところがあります。自分を律し続けるのは簡単ではありません。だから、指導者の役割として「ガミガミ」と言う。
その目的は、陸上の成績ではない。社会に出て活躍できる人間性を育てること。それが、親御さんに約束した幸せな人生のための4年間である、というわけです。
この大切さを実感しながら実践をつづけている原監督もまた幸せなのだと思います。そのことは、選手たちに「ありがとう」と言っていることからも分かります。
さらに印象的なのは、選手同士の間でも「ありがとう」と伝えあっていることがテレビ中継の中で何度も見られたことです。
規律を軸にコミュニケーションをとることで、関係の質が高まり、互いの貢献や存在そのものに「ありがとう」という思いが湧いてくるのでしょう。
こうした「ありがとう」の頻度をチームがうまく行っているかどうかのKPIにしたいと思いました。
馬場 秀樹