明けましておめでとうございます。今年1号目のメルマガです。
今年の日本経済ですが、賃上げにかかっている部分が大きいと考えます。
もちろん、もうすぐ誕生するトランプ新政権が関税などで今年の日本経済に影響を与える可能性があることは間違いありません。
就任後に具体的にどういう政策をどういう優先順位で打ち出すかに注意せざるを得ないことは言うまでもありません。
そのこととは別に、賃上げの動向が今後の日本経済に大きく影響を及ぼします。
このところの消費者物価上昇率(生鮮除く総合)は2%台半ばから後半ですが、現状の給与の伸びは、それとほぼ同等程度で、インフレを考慮すると、実質的には賃金はほとんど伸びていない状況です。
実際、インフレを加味した「実質賃金」はここ4か月マイナスです。
ですから、GDPの5割強を支える家計の消費支出は、2024年はふた月を除いてマイナスの状況が続きました。
ただ、インバウンドが過去最高だったコロナ前の2019年を超える勢いで、家計の支出の低迷をカバーしているというのが現状です。
こうした中、大企業では人手不足もあり、5%程度の賃上げを表明しているところも多くありますが、働く人の7割を抱える中小企業の賃上げがひとつのカギを握ると考えられます。
今年は、企業経営、とくに中小企業には結構厳しい側面もあります。
金利が上昇するからです。昨年、日銀はマイナス金利を解除し、7月には政策金利(短期金利)の上限を0.25%まで上げました。
長期金利(10年国債利回り)は1.2%近くの水準まで上がっています。
そして、今年はさらにそれが上がると予想されます。(1月23日、24日の日銀の政策決定会合に注目です。)
日本のインフレ率は11月で前年比2.7%ですが、この先も企業の多くは、値上げを考えています。
事実、日経新聞が主要企業100社の社長に行ったアンケートでも90.8%の企業が検討中も含めて値上げをする意向とのことです(1月9日付朝刊)。
今年は消費者物価が大きく下げることはなかなか考えにくい状況です。
こうした中、中小企業がどこまで賃上げができるかに注目したいところです。
短期的に景気を下支えしそうなことがあります。それは政権基盤がぜい弱なことです。
「政権基盤がぜい弱」なら経済には悪い影響が出そうですが、少数与党なので、野党の意見を多く聞かなければならない状況となっています。
103万円の「壁」についての議論が活発になされましたが、今は予算案などを通すために、石破内閣は多くの妥協を行っています。
この妥協はかなりの確率で、バラマキです。野党の主張の多くは「国民の手取りを増やす」ということを主眼としているため、こちらは短期的には景気対策となります。
自民党としても、7月に参議院選挙を控え、野党に押されてバラマキをするというよりは、自分たちが主導的に行っていると見せたいでしょうから、いずれにしてもバラマキ的な政策が増えがちです。
そのことを考えると、短期的には景気はある程度底支えされると考えられます。
しかし、法人税の好調などで税収が少し増えているとは言え、先進国中最悪の対名目GDP比の財政赤字を抱えるこの国の財務体質は、バラマキによってさらに悪化することは明らかです。
人口減少や財政赤字の拡大など、中長期的な問題の解決には政権は当面目を向ける余裕がないことがとても残念です。
小宮 一慶