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「エンゲージメント」と「モチベーション」の違い

経営のヒント
2025.02.05

先日、ある経営者様との対話の中で、次のような問いかけがありました。「最近「エンゲージメント」という言葉を聞くことが増えた。自社でもエンゲージメントサーベイに取り組んでいる。以前は、似た言葉で「モチベーション」をよく聞いていた。両者はどう違うのだろうか」

日経新聞で「エンゲージメント」という言葉を含む記事は、(私の手元の検索結果によると)2024年の1年間で251件掲載されていました。5年前の2019年は、1年間で80件です。企業活動において年々注目度が高まっている概念だと言えそうです。

エンゲージメントの高い従業員は、仕事に対する情熱をもち、自分の役割を超えて会社全体のために積極的に貢献しようとするといったことが指摘されています。たしかに、モチベーションと似ている感じもします。

「日本の人事部」のサイトを参照すると、エンゲージメントは「個人と組織の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合える関係」と説明されています。

モチベーションについては、デジタル大辞泉で次のように説明されています。
1 動機を与えること。動機づけ。
2 物事を行うにあたっての、意欲・やる気。または、動因・刺激。「—が上がらない」「高い—を維持する」

これらの言葉も参考にすると、両者では「対象」と「時間軸」の2つの点で違いがあるのではないかと考えます。

エンゲージメントは、自分や仕事の中身に加えて、上司、働く仲間などを含めた組織全体が対象の範囲になると考えられます。そして、長期的な組織への関与やコミットメントを指していそうです。

一方のモチベーションは、個人の内的な動機に焦点が当たっています。また、長期的というより、短期的な目標やタスクに対する意欲を指していそうです。

「今回のプロジェクトはモチベーションが上がるなあ」「今週頑張ったら、前から予定してた旅行に出かけると思うと、モチベーションが上がる」といった言い方はするかもしれませんが、「今回のプロジェクトはエンゲージメントが上がる」といった言い方は聞きません。

ここでポイントにしたいのは、「エンゲージメントは結果として高まるもの」だということです(モチベーションも同様に捉えるべきものだと考えます)。組織活動で成果を上げてお客さまに貢献できれば、結果的に売上や利益が後からついてくるのと同じです。順序が入れ替わって、利益が目的になることはありません。

時々「エンゲージメントを高めるために○○ツールを導入する/評価の調整をする」といった話を聞くことがありますが、これは物事の整理の順序が入れ替わってしまっていると感じます。

「個人と組織の成長の方向性が連動していて、互いに貢献し合える関係」を実現するためには、以下のような要素が必要になると考えられます。

・組織がどのような方向を目指して成長していこうとしているのか、言語化され、明確になっている。その内容を、従業員が知っていて、深く理解している。

・各従業員が、職業生活を通してどのように成長していきたいと思うのか、言語化され、明確になっている。その内容を、本人が認識し、行動の動機にまでできている。そして、各従業員の望む成長の方向性を組織の側も理解している。

・組織と各従業員にとっての成長の方向性が合致する仕事ができていて、本人も手ごたえを感じることができている。組織のパフォーマンスも上がっている。

このような状態を実現するためには、
・上記のような組織、個人、双方が目指すことの言語化、可視化
・それらを理解し合うための対話
・個人の適性や強みがより活きる業務を担当できるための調整
などが必要になります。

逆に言うと、これらが実現できていれば、自ずと各人のエンゲージメントは高まるはずだと言えます。

「個人と組織の成長の方向性が連動」「結果として高まるもの」という観点から、組織活動について振り返ってみるとよいかもしれません。


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