4月、新年度ですね。新しい目標を立ててスタートを切った方も多いと思います。「今年こそは」と今までにないチャレンジをする方もいるでしょう。
ただ、闇雲に新しいことを始めても本質的には進歩していない可能性もあります。お客さまと今期の方針を考えていると「目標未達だったから再チャレンジ」のような発想が少なくありません。目標未達自体は、チャレンジの理由にはなりえません。目標未達だった事実を踏まえ、目的に立ち返って課題を再設定し、やるべきことを定めていくというプロセスが大切です。
これは、目標達成していても同様です。むしろその場合の方が落とし穴は大きいかもしれません。「うまく行っていたから同じことを繰り返せばよい」という発想になるからです。
ドラッカーは、経営者に「ここ半年であえてやめたことはありますか」とよく尋ねていたそうです。この問いを投げかけられて、パッと答えられるでしょうか。私は、いつもうまく答えられず、反省することがほとんどです。
ドラッカーは、「体系的に廃棄せよ」とも言っています。この意味するところは、資源の確保だけではありません。著書『創造する経営者』の中で以下のように述べています。
まさに廃棄は、資源を解放し、古いものに代わるべき新しいものの探求を刺激するがゆえに、イノベーションの鍵である
ここで注目したいのは、『探求を刺激する』という言葉です。選択と集中という言葉もありますが、大切なのは「なぜ、私たちが、それを選び、他を捨てるのか」と考えること自体に意味があります。事業の目的に立ち返る機会としての「廃棄」です。それを「体系的に」行うとは、「組織としての習慣にせよ」ということです。
つい惰性に流されてしまうのが私たちです。それは、楽だからです。組織となれば他の人との関係性もある。「いつもと違うこと」や「やめた方がいいこと」をあげるのは、抵抗感があります。だからこそ、やめることが組織の習慣になっているかどうかが問われます。
新しいことを探求することに時間を使うのは楽しいものです。一方で、捨てることを考えるのは、やや億劫なものになりがちです。ここを一歩踏み出せるかどうか。節目で大掃除をするのと同じように、経営においても「捨てる」習慣を身につけたいものです。