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女性の部下の育て方・伸ばし方

ビジネスに活かす秘書力
2022.03.01

(弊社所属のコンサルタントによる長編コラム「KC文集2022」掲載記事)

最近、女性社員の育成や、女性の部下との関わり方接し方について、ご相談をお受けする機会が増えました。私は「女性活躍推進」の専門家ではありませんし、出産子育てと仕事を両立したワーママでもありません。私の社会人スタートは、30年前の当時としては、男女差別の極めて少ない会社で、配属先は課長も部長も女性でした。現在は、秘書という、女性比率の極めて高い仕事をしながら、秘書という仕事について、女性と仕事、組織との関わりについて発信しています。私自身が女性部下として、成長させてもらったたくさんの経験と、企業研修や社員面談で、新人からベテランまで幅広い年代の男性、女性の社員の方と接してきた経験から、女性社員の育成において、経営者や上司の方々に知っておいていただきたいことをお伝えします。

私にご相談いただく多くの企業の経営者の方、上司の方は、自社の女性社員にさらに成長し、活躍してもらうことを願っています。お話を伺っていると、女性社員の能力を高く評価していて、期待をかけていることが伝わってきます。その一方で、男性中心の組織を長年経験してきた方にとっては、これまでのマネジメントやコミュニケーションのスタイルが女性社員に通用しない難しさや煩わしさも感じているようです。また、良かれと思っての配慮や気遣いが、実は女性を傷つけていたり、仕事への誇りを失わせる場合もあります。多数派は少数派の視点には気づきにくいもの、その結果、優秀な女性社員が埋もれてしまったり、活躍を諦めてしまうのは、企業にとって大きな損失です。

私たちはとかく「男性は理性的」「女性は感情的」など、人を属性で括って単純化しがちです。体力や筋力など肉体的な性差を除いては、性別による能力や資質に違いや優劣はありません。人はひとりひとり違い、それを属性やタイプで決めつけ、判断することはできませんから、「女性部下はこう接するべき」などという女性部下万人に通じる方法もありませんし、本稿をそのように捉えていただきたくはありません。しかし、男性、女性がそれぞれに育ってきた社会や教育、置かれてきた環境による影響を色濃く受けているのは事実です。そのことが、性別による違いとして浮かび上がっている点があることも否めません。本論ではあくまで、それを前提として述べていることをご理解いただけると幸いです。

■男性上司の悩み その1=女性にどう配慮したらよいか分からない
そもそも、なぜ「女性社員」に配慮が必要だとお考えなのでしょう。「男性社員」には配慮は必要ないのでしょうか。

女性社員には「特別な」配慮が必要だというイメージがつきまとう原因のひとつには、女性の場合は独身か既婚か、子どもがいるかいないか、子どもは今何歳か、育児中なのか受験なのか…。そういったプライベートな事情が少なからず仕事に影響することが挙げられます。しかもこのプライベートな状況は、その時々で変化します。仕事と家庭とのバランスについての考え方も、その人の価値観や事情によって様々です。子育てのサポートが得られて、出産前とそれほど変わらずに、仕事に時間を使える女性もいれば、そうでない人もいます。子育て期には子どもとの時間を最優先したい女性もいれば、キャリアを絶たずに仕事を続けたい女性もいます。夫の仕事や子育ての状況によっても、大きな影響を受けます。

こうした多様な事情、状況を抱える女性社員を、「女性」だからとひとくくりにしてマネジメントすることなど到底できません。様々な事情があり、様々な考え方がある。状況が常に変化している女性社員ひとりひとりに対して、個別に、それぞれの個を尊重してマネジメントすることは、部下をひとくくりにしてマネジメントするより、はるかに難しいことです。同質性の高い、男性だけのチームを率いて成果を上げてきた上司にとっては、女性部下を持つことは、ともすると手間がかかり、扱いづらい、育成が難しい、という印象に繋がるのかもしれません。女性も企業の重要な戦力として、男性同様に活躍できる組織を作るには、上司自身も、コミュニケーションスキルやマネジメントスキルを学び直し、一層のレベルアップをはかる必要もあるでしょう。

さて、この悩みに話を戻すと、「女性だから」という勝手な思い込みを捨てて、個である「その人」に向き合ってみるしかなさそうです。本人の考えや意向を聞き、事情に耳を傾け、配慮やサポートを必要としていることを聞く。仕組みとして提供できるよう検討する。それが出発点です。

ある女性社員の話をご紹介します。その女性社員が担当者として数ヵ月に渡って進めていたプロジェクトが無事に成功し、社内外の関係者が集まっての打ち上げの夜。一次会が盛り上がり、二次会に向かおうとしたその時、彼女は「もう遅いから帰っていいよ」と上司に言われたそうです。遅い時間からの二次会で、女性が深夜の帰宅になることを心配してのひと言だったのは想像できます。ですが、そもそもプロジェクトを進行していた数ヵ月間、残業も多く、遅い時間の帰宅になることは何度もあったそうです。担当者としての責任感から、弱音を吐かず進めてきたという自負が彼女にはありました。そのプロジェクトがやっと終わり、皆と成功の喜びを分かち合ったその打ち上げの日だけ、帰り時間を心配された彼女の気持ちは虚しいものでした。責任を持って何時までかかってもやり抜いてほしい等と、はなから期待されていなかったのではないか。自分は無用な責任感で働いていたのか。この会社は、自分のような女性は求めていないのではないか。「女性だから」という勝手な決めつけや思い込みから発せられたひと言が、本人を傷つけ、仕事への意欲を失わせる理由になるのです。

もしこの上司が、「君のおかげで成功したプロジェクトだから二次会にもいて欲しいけど、帰り時間はまだ大丈夫?帰らなければならない時間だったら、無理せず言ってね」と本人の事情を聞き、どうするかは本人に委ねる言葉であったなら、何の問題もなかったでしょう。

妊娠中、育児中の女性社員に対しても同様です。仕事への意欲や能力は劣っていないと自負している女性社員に「簡単な仕事の方が、気が楽だろう」「責任ある仕事を任されると大変だろう」と勝手に決めつけて業務負荷を軽くするような配慮は、例えそれが好意からのものであっても、本人を深く傷つけることがあります。

「厳しい仕事を与えては、女性が責任を負わされてかわいそう」というような間違った庇護や、良かれと思っての女性社員への遠慮や配慮が、却って本人を傷つけ、仕事への意欲を失わせることがあります。過剰な配慮から、負担の大きい仕事や重要な仕事を任せず、定型業務や補助的な業務だけを任されることは、本人が実力を発揮する機会も、スキルアップの機会も奪ってしまい、結果的に成長することができません。昇進意欲や、管理職を目指そうという意欲も育みにくくなります。

前提として、女性へのセクシャルハラスメントがないことや、女性であることで不当に差別されない職場環境であることは当然です。その上で、「女性だから」と勝手に決めつけ思い込みで配慮するのではなく、個に向き合い、その人の活躍を一緒に応援していくマネジメントが求められています。

■男性上司の悩み その2=女性は積極性や主体性に欠ける
お悩みの上司の方は、これまでたくさんの男性女性の部下をマネジメントしてきた経験から、この結論に至ったのでしょうか。サンプル数が何名なのか気になるところです。言うまでもなく、女性でも積極的で主体的な方もいますし、消極的で主体性に欠ける男性もいらっしゃるはずです。しかし女性社員が少ない組織では、数名の女性社員の印象があたかも女性全体と映ってしまうのかもしれません。

その上で、もし、そういう印象を与える要因があるとするなら、女性にかけられた「わきまえる」という呪縛のせいかもしれません。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の前会長、森喜朗氏の発言により一躍脚光を浴びた「わきまえる」という言葉。女性に対して「わきまえている」と評価することで、暗に発言を控えるよう強いられた社会に、女性は今も生きていることが浮き彫りになりました。

日本は、「性別役割分担意識」の根強い国です。本来、役割分担は、男女を問わず個人の能力等によって決めるのが適当であるにも関わらず、「男は仕事・女は家庭」「男性は主要な業務・女性は補助的業務」等のように、男性、女性という性別を理由として役割を分ける考え方のことを「性別役割分担意識」といいます。私が10年以上担当している「秘書」という仕事はまさに、この性別役割分担意識が色濃く反映された職種です。男性秘書なら会社の出世コース、将来の幹部候補と言われるのに対して、女性秘書はあくまで上司のお世話係と見なされるのは、その典型でしょう。

もちろん近年は、そのような意識にも変化が見られます。内閣府の「2019年度男女共同参画白書」によると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」との考え方に代表される性別役割分担意識を問う質問では、「賛成」は35.0%と、過去最少の割合となり、「反対」は59.8%と過去最多となりました。昭和54年の調査結果では、『賛成』(「賛成」「どちらかといえば賛成」の合計)とする回答が 70%を超えていましたから、長期的には「賛成」が減少、「反対」が増加していく傾向が見られます。

将来的には、女性は男性の補助役に徹するという性別的役割分担意識は薄れていくのではないかと期待していますが、まだ現状では、前述の森氏の発言にも見られるように根強いものがあります。長年「わきまえる」ことを暗に要求されてきた(と感じてきた)女性自身が、その殻を破るのは簡単なことではありません。大勢の前で自分の意見を述べたり、目立つ成果を上げることに抵抗を感じる女性も多く、口ぐせは「私なんて」。せっかく褒め言葉を言ってもらっても内心では嬉しいはずなのに、居心地の悪さを感じる場合さえあるのです。余談ですが、私が昨年から始めた「働く女性塾」では、受講者相互に、相手の強みや良さを伝え合い、自分への褒め言葉を「ありがとうございます」「嬉しいです」と受け取るワークをしています。せっかく褒められたり評価されても、「そんなことないです」「いえいえ、自分なんて全然ダメなんです」と謙遜し卑下することにあまりに慣れすぎている彼女たちは、その言葉を素直に受け取ることさえ大きな抵抗があるのです。

「女の子らしく」「控え目にしていた方が得」という学習もしてきています。重要な会議の参加メンバーに選任されたのに、女性であるというだけでお茶出しを求められたり、逆にわざわざ自分からお茶出しを申し出たり、議事録作成を引き受けたりする女性もいます。みんなの役に立ちたいという優しさから出る行為ではあるのですが、本来その会議の場で求められている役割は、お茶出しや議事録ではないはずです(それらの役目が必要なら、持ち回りで行なえばよいのです)。しかしお茶出しや議事録で貢献すると、他の参加メンバーが喜んでくれたり、「さすが〇〇さんは気が利く」などと褒めてもらえたりします。さらにそれによって本来の役割である発言をすることや、意思決定に参加する責任を見逃してもらえる、免除してもらえる空気が生まれたりします。

その会議の参加メンバーに、他にも女性がいて、彼女は本来の役割で貢献しようとしてそこにいると、さらに話は複雑です。お茶出しをする女性に較べられ、「それに引き換え〇〇さんは、女性力ゼロだな」と言われたり、会議での発言内容について厳しく突っ込まれたり、反対意見を浴びることもあるでしょう。本来の役割をお茶を出すことでかわす女性と、本来の役割を引き受けて苦しい思いをする女性。中には殊勝にも、両方の役割を引き受けて必死に立ち回り、密かになぜ自分だけが大変な思いをするのかと悩む女性もいます。自分はどちらの立場をとるべきか、どちらが得なのか損なのか。働く女性が過去の経験から学習し強化してきたものは、非常に複雑です。

こうして女性は、自ら手を挙げることに消極的になります。そもそも自分にそれが求められていることさえ認識していない場合もあります。また、真面目で責任感が強い人ほど、与えられた職務を全うするだけの能力が自分にあるだろうかと、厳しく自己採点をする傾向にあるようです。ですから自分から手を挙げてこないのは積極性が足りない、と簡単に決めつけるのではなく、上司から期待を伝えて働きかけたり、新しいチャレンジにあたっては不安を解消したり、支援を約束して背中を押すことが必要です。

女性の働き方や、社会の意識が変化しつつある現実や、求められる役割が変わってきていることを伝えていくのも大切だと考えています。私が、性別役割分担意識が色濃い「秘書」という仕事をしながら、単なるお世話係ではない秘書を志しているのも、それを体現して、働く男性女性に知っていただきたいという思いがあります。女性が自立して生きていけるキャリアを描くことの重要性を認識し、長期で働けるキャリアプランを描けるような意識改革を後押しすることが重要です。

■男性上司の悩み その3=女性を管理職に登用したいが、必要な経験スキルが足りない。女性は管理職になりたがらない。
自社では、女性はアシスタント以外に配属する部門がない、もしくは、自社の業務は女性には難易度が高くて任せられない。そんな考えが根強い会社は、その思い込みを払拭しない限り、女性が管理職になるための経験を積む機会も得られず、管理職を目指す女性も現れないでしょう。

現状では、男性のみで行なっている職種や部門であっても、女性の配属を検討する必要があります。難易度が高くて女性には任せられないとされている業務も、なぜそう思われているのか、本当にそうなのか。他社で女性が行なっている例はないかを調べてみると、ヒントがあるかもしれません。女性にはできない、と決めつけるのでなく、どうしたら女性に任せることができるかを考える柔軟さが求められているのです。

女性に能力が備わっていないという問題は、女性に能力を身につける機会を与えてこなかったという自社の問題の裏返しです。ひとつの部署の業務には精通していても、他部門の業務についての知識や経験を積めていない女性が多く、全体感を持った視点や考え方が持てないこともあります。私が接するお客さま企業の女性社員には、名刺を与えられていない女性社員も多くいます。お客さまや外部の協力会社さまとの折衝や交渉、接待など社外の方と対面で関わる機会がないため、名刺の必要がないという判断なのでしょう。外部との接点が少なく、お客さまの情報が社内で共有されにくい組織では、内部志向に陥りやすく、対外的な場に出ていく経験を積んでいないと、社外の人脈が不足している場合もあります。秘書は職業柄、男性幹部の日常業務を間近でサポートしているので、会社の業務を大局的に捉える力や、意思決定のプロセスを学ぶことができます。上司の人間関係に関与することで、社内外に人脈もできます。そのため大企業では、幹部候補の男性社員が秘書室に配属されることはよくあることです。幹部登用を前提とした女性社員であれば、一定期間このような経験をさせる取り組みも考えられます。

日本の長時間労働も、女性活躍を進める上で大きな問題です。もちろん男女に関わらず、昇進することだけが活躍ではありません。管理職にならない働き方もありますから、管理職になりたがらないから即問題だという話ではありません。ただ本当は管理職になりたいという意欲がありながら、昇進をためらう傾向があるとしたら、長時間労働はその大きな原因になっています。

残業を厭わず、長い時間をかけて成果をあげる人が評価される日本の風潮は、子育て中の女性など時間的制約のある人が管理職を目指す上では大きな障害になっています。自分の周りで、昇進するにつれて益々長時間労働が常態化していくマネジャーの現実を目の当たりにしていると、昇進したら自分もこんな働き方をしなければならないのか、時間的制約がある自分にはできないと考えてしまいます。朝早くから夜遅くまで働いている、休日もいつも仕事していることが、仕事への意欲や会社への忠誠心の表れと見なされる組織では、長時間労働をしない限り評価されないというメッセージを発しているのです。

重要な会議を、早朝や夜など定時外に開催することが常態化していると、時間的制約のある女性は、会議に参加して重要事項の決定に関わったり、意見を述べたりすることができません。今現在、時間的制約のある社員だけでなく、将来的に結婚出産で時間的制約のある働き方になることが予想されるすべての女性にとって、長期的に昇進して、キャリアを築いていける場所ではないと映ります。

新型コロナウイルスの感染拡大により、リモートワークやオンライン会議システムが普及したことは、働き方の大きな変化でした。長時間労働を是正し、時間あたりの労働生産性を重視する評価の仕組みに変えていくことが急務です。

■男性上司の悩み その4=女性は出産や育児を機に退職してしまう
女性は出産、育児などライフイベントによる影響があることは、避けられない事実です。しかし皆さんご存じの通り、いかに女性を活用するかは、少子高齢化社会を迎えての貴重な労働力確保の鍵になります。また、ライフイベントによる影響を受けるのは、今後は女性だけとは限りません。女性の社会進出により、男性も家事や育児を引き受けていくことになりますし、介護離職も社会問題です。働きたい意欲のある社員が、やむなく退職せざるを得ない状況は、改善する必要があります。

前述した通り、長時間労働など時間的制約のある人が働けない問題の解決を目指し、女性が長期的に活躍できる組織づくりに向けて取り組むことを社員に約束し、長く活躍してほしいという会社からのメッセージを伝えていくことが大切です。テレワークやオンライン会議の活用も、多様な働き方を実現するための強力なツールになります。実際に弊社でも、初の産休・育休取得の女性社員が、テレワーク+時差勤務制度を活用して復職しました。社内外の打ち合わせも、Zoomを活用して進めてくれています。

女性活躍が進んでいない会社では、「自社の本音は、出産を機に辞めてほしいのだろう」と女性社員が勝手に思い込み、復職をためらうケースもあります。私も親の看病のために離職をした経験があります。働き方改革という考えのなかった頃、出張も多く、連日深夜まで残業していた環境では、仕事を続けながら看病をするという選択肢などあり得ないものと思い込んでいました。実際に会社とそのような可能性が話に上ることもなく、退職するしかありませんでした。今なら両立のための方法は色々と考えられますし、その可能性を一緒に探ることで、自社に長く勤めて欲しいという意思を女性社員に伝えることができます。

本当は働きたいという意思のある社員が、様々な事情により退職せざるを得ない状況は、企業にとってとてももったいないことです。新たに人を採用し、育てるためには、大きなコストも時間もパワーも必要です。多様な事情を抱える人も、柔軟な発想で働き続けられる方法を提示できることは、優秀な社員を確保する上で重要な要素になっていきます。

■女性自身もまた、学び成長する
ここまでは女性社員、女性部下を持つ上司に向けて、接し方や考え方をお伝えしてきました。そしてもちろん、女性社員もまた、自ら学び成長していかなければなりません。

「女性はアシスタント」のような決めつけは、長年女性を苦しめてきた差別であり、偏見です。その一方で、間違った意味で「女性に優しい」社会でもあったと言えます。責任ある仕事につけない=責任ある仕事を求められないとなると、積極的に学び、スキルを身につけて成長しなくてもよかったとも言えます。厳しさも責任もなく、成長できない仕事をし続けていった結果、給与が上がらない、IT化やAIにより仕事を奪われる、非正規社員に置き換わる等、そのツケは女性社員に回ってきます。そのことに気づいている女性は、自ら学び成長したいと思っています。

働く女性に ” ない”とされている3つのものをご存じでしょうか。
1)成長、教育の機会がない
2)10年後のキャリアが見えない
3)ロールモデルがいない

その3つを働く女性に提供する場になればと、2021年7月より「働く女性塾」をスタートしました。機会を増やすために、自分ができることを考え、長期的なキャリアを描くために必要なことを整理し、多様な働く女性と出会い、同じ立場で意見交換ができる場が必要だと私自身が実感したからです。

「女性のロールモデルがいない」という声は、企業からも女性社員からも必ず挙がる話題です。しかし皆、そもそもどんなロールモデルを探しているのでしょうか。①仕事で成果を上げている、②結婚、出産を経験している、③育児と仕事を両立している、④マネジャーに昇進している。この4つをすべて満たした女性を皆求めているのでしょうか。もちろんそういう女性が活躍することは素晴らしいことです。いるに越したことはありません。では、そういう人が身近にいたら、私もそれを目指して頑張ろうとなるのでしょうか。

私は女性の皆さんに、「ロールモデルは探さない」「あなたがロールモデルになる」とお伝えしています。ロールモデルがいないから女性が活躍できないと言っていたら、永遠にできません。上記4つの条件を満たす完璧な女性像が、女性活躍の目指すところでもありません。女性の中にも、結婚しないという考え方の人もいれば、既婚であっても子どもは持たない、あるいは持ちたくても様々な事情により子どもを持てない女性もいます。結婚し、子どもがいても働き続けられる環境整備は喫緊の課題です。一方で、結婚し子どもがいる人だけが期待され昇進していくと見なされるような、謝ったロールモデルの押しつけは、子育て中の女性の仕事のしわ寄せが、独身女性にふりかかるとか、子どもがいないから残業して当然、という、新たな分断を生んでいます。誰もが望ましいキャリアを築けるように、ひとりひとりがロールモデルになればよいのです。

また、ひとりの完璧なロールモデルを探すのではなく、パーツモデルをたくさん持つことは、自分を成長させてくれます。周囲の協力を得て仕事を進めるのが上手いAさん、社内外の人脈づくりに長けたBさん、意見の通し方はCさん、という具合に、社内外に自分が目指したい姿をパーツで実現している人をたくさん持つのです。その人はどんなことをしているのか、どうしてそれができるのか、言動や仕事ぶりを観察して、できることを真似してみることは、自分がなりたい姿に一歩近づくことになります。

■女性が活躍できる社会は、誰もが活躍できる社会
女性社員をいかに育て、活躍してもらうかについて、上司の悩み別に述べてきました。そして改めて思うのは、これは女性部下に限ったことではなく、働くすべての人に当てはまるのだということです。

途中にも述べた通り、時間的制約のなかで働くのは女性だけではなくなっていきますし、すでにそうなりつつあります。家事や育児だけでなく介護など、男女に関わらず多様な事情を抱えた社員が増えることは間違いありません。多様な価値観を持っていることは、女性だけでなく、最近の若手社員に男女を問わず感じています。個に向き合い、個を尊重した組織づくりは、女性だけでなく、誰もが活躍できる組織になるのです。

女性の育成は、上司の3つの“き”にかかっていると言われています。(日経BPヒット総研所長 麓幸子氏インタビューより)
1)女性に「期待」して
2)「機会を与えて」
3)「鍛える」ことができる上司がどれだけいるかです。

しかしこれ、本来は男女を問わず、人を育てるために誰にでも当てはまる話です。男性は、日常業務の中で、上司が自然に3つの“き”を行ない育ててきました。しかし女性は、「期待」されず、「機会を与え」られず、「鍛え」られないままにきました。

自分は期待されていないのだと思うほど、虚しく悲しいことはありません。期待をかけて伝えれば、人はその期待に応えようとするものです。改めて自社の社員への期待を伝える、まずそこから始めていただけたらと、切に願っています。


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