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今週の経済の動きと経営の切り口~ロシアのウクライナ侵攻が与える中小企業への影響~

経済トピック
2022.02.27

今週はやはりロシアのウクライナ侵攻について触れざるを得ないでしょう。

もちろんニュースや新聞など様々なメディアで報道がされているのでそれをなぞるような話では仕方ありません。

 

今回は、中堅中小企業を経営していく中でウクライナ情勢にどのように向き合っていくのかと言うことを触れてみたいと思います。

 

 

■短期的な経営における影響

 

経営者の方や経営陣の方については、まず短期的に自社の経営にどのように影響が出るのかと言う点について気になる方が多くいらっしゃると思います。

 

調達などサプライチェーンに対する影響や、景気や消費者心理に与える影響、そして金融面への影響の3つが考えられます。

紙面の関係上多くは触れられませんが、簡単に考えてみたいと思います。

 

ウクライナ侵攻に伴うサプライチェーンに対する影響は、主に企業経営や生活におけるエネルギー資源の値上がりによって現れてくることでしょう。

皆様ご存知のことと思いますがロシアはエネルギー資源を始めとした天然資源が豊富です。そして、ヨーロッパはロシアからの天然ガスにエネルギー需要をかなり依存している状況です。また、ロシアは世界第3位の石油の産出国でもあります。

今回のウクライナ情勢の変化(侵攻)によって、相応の経済制裁が行われるものの、ロシアからのエネルギー供給を完全に遮断する事は冬の時期と言うこともあり、ヨーロッパにおいては非常に苦渋の選択になることと思います。

米国市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物と英国市場の北海ブレント先物はともに一時1バレル100ドル台まで急上昇しましたまた、欧州の天然ガスの指標となるオランダTTFの取引価格も前日比で7割高と急騰する場面がありました。

 

いずれにしても、脱炭素社会に向けて相対的にCO2排出量が少ない天然ガスに対する需要が高まっている中で、天然ガスや石油に対する供給懸念から相場が上がっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

運送業を経営される企業におかれては、燃料費の向上により経営が圧迫されることが想定されます。もうすでに顕在化していることと思います。

また、運送業に限らずかなり多くの企業が運送業の会社が行っているサービスを受けています。短期的にも、運送業の経営が圧迫されることによって、運賃の値上がりや滞りなど、物流に対する影響が想定されます。

 

また、後述しますがロシアからの輸入品目の中に非鉄金属が含まれており、該当する原料を仕入れる製造業に関連する企業のサプライチェーンに影響を及ぼしていると言う話も聞きます。

 

 

景気や消費者心理に与える影響については、特に日本はもともと需給ギャップが20兆円程度マイナスであり、コロナ対策の遅れ等の影響もあり需要が伸び悩んでいる状況でした。ここに、ウクライナ侵攻による不確実なリスクが提示されることによって、さらに需要の停滞が見られることになる可能性が高いです。

 

また、企業のサプライチェーンだけではなく、我々国民の生活においてもガソリンなどのエネルギー価格の上昇は可処分所得を圧迫します。このことも、消費者心理に対するマイナス影響である事は間違いないでしょう。

今後の消費支出や街角景気(景気ウォッチャー指数)など、経済指標に注目する必要がありますがこのような指標が出るにはタイムラグがあります。まずは、3月の10日頃に出される景気ウォッチャー指数に注目です。

 

 

そして金融面に与える影響です。天然ガスやガソリンの値上がりは、日本だけではなく世界的な動きとなります。

特に消費者物価指数の上昇が著しい米国において、ガソリンの値上がりが今以上に加速する事は、米国における消費者物価指数の上昇を加速させることにつながります。賃金の伸びよりも消費者物価が上がることで実質的な賃金の下落を起こしバイデン政権への不満を加速させる可能性があります。

 

ガソリンや、牛乳、住宅はインフレの3種の神器と言われており、米国における消費者物価へのインパクトが高いものとなっています。

このことにより、さらに金融の引き締めが加速される場合には、米国の政策金利の上昇が想定よりも加速される可能性があり、日米の金利差及び金融政策の差がさらに浮き彫りになってくる状況になります。

 

日銀としては、政策金利だけではなく、10年物国債金利についてもイールドカーブコントロールとしてコントロールをしていますが、今後は読めません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろん日本が今の弱い景気状況で金融引き締めを行う事は自殺行為とは言えますが、諸外国との金融政策の差によって生じる影響(例えば日米のマネタリーベースの差によって円安傾向に触れる可能性があるなど)を考慮し、金融政策の変更やその他の影響によって結果的に金利に影響が出る可能性も否定できません。

 

歴史的な低金利である今よりも金利が低い水準になる事は考えづらく、いずれにしても金利はほとんどの状況においては徐々に上がっていくことが想定されるわけです。

経営判断としては、今の金利水準の中で、なるべく固定で低金利の長期資金を調達をすると言う事は、資金需要がある程度ある中では必要な施策と言えるかもしれません。

 

なお、日本とロシアの貿易に関してはロシアからの輸入は2020年においては約1.2兆円程度であり、液化天然ガス、非鉄金属、石炭、原油及び粗油が上位に並んでいます。とは言え液化天然ガスにおいても、2019年における日本の総輸入量の8%程度であるため、決して少なくはありませんがエネルギー政策そのものに壊滅的な影響与えるほどではないと言えるのではないでしょうか。

 

非鉄金属については、一部の製造業の会社さんからはステンレスなど関連する資材のことが現実化してきていると言うような話も聞きます。

またロシアへの輸出については、2020年においては約7000億円程度であり、そのうちの50%程度は自動車及び自動車部品で占められています。自動車業界においてはこの影響は少なからずあるものと想定されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出所:東洋経済オンライン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出所:東洋経済オンライン

 

 

■中長期的な経営における心構え

 

中長期的な経営における影響は、今回のウクライナ侵攻がどれぐらいの期間継続するのか、チェルノブイリ原発や核に関する動向といったようなことを始めとして不確実な要素が多く絡みます。

このようなことについての分析はそれぞれの専門家からの情報にお任せするとして、経営において重要な事はダウンサイドリスクを認識する事です。

最悪な事態になったときに、経営にどのようなインパクトを及ぼすのかと言うことを想定し、それについて準備をしておくと言うことです。

※ダウンサイドリスク ⇒ ダウンサイドリスクとは、「下振れリスク」とも言われ、相場や株価、物価などが、事前の想定よりも下回る可能性のことを言います。企業経営において、考えられる最悪の失敗のことをダウンサイドと呼びます。

 

人間予想外のことが起きると感情的に揺さぶられます。一方で、心のどこかで予期していた事については感情的に大きな影響を受ける事は少なくなります。

経営者や経営陣の皆様は、経営の先行きについて感情的にならないことが重要であると考えます。そのため、中長期的に想定されるシナリオや、それぞれにおいて自社の経営にどのような影響が出るのかといったことを、ダウンサイドリスクを意識しながら検討していただくことがこれから大切になってくると言えるでしょう。

 

書籍「7つの習慣」に書いてる第一の習慣、主体性を発揮すると言う章に、関心の輪と影響の輪と言う言葉が出てきます。

主体的に生きる人は、自分自身が影響することができる影響の輪に集中してやれることをやる、一方で自分自身が影響を与えることができない関心の輪だけにとらわれてしまう人もいます。

 

世の中の様々なことに関心を持ちアンテナを立てる事は非常に重要です。一方で、有事の際に自分自身が、そして自分の会社が影響できる事に集中することも必要なことです。

経営者や経営陣として主体的に経営をしていくために、関心のアンテナを立てながらダウンサイドリスクを認識し、その対策を視野に入れつつ今できる影響の輪に集中すると言う事が大切ですね。

 


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