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女性社員の力を引き出すコミュニケーション

ビジネスに活かす秘書力
2023.03.01

(弊社所属のコンサルタントによる長編コラム「KC文集2023」掲載記事)

■はじめに
以前テレビで見た、男女間コミュニケーションをテーマにしたバラエティー番組でのことです。

デートの途中、それまで楽しそうに会話をしていた彼女が、急に黙り込み、不機嫌な様子に変わってしまう。心配した男性が「どうしたの」と彼女に聞いても「何でもない」とぶっきらぼうに答えるだけ。「大丈夫?」と聞いても「大丈夫」としか答えない。男性から見ると全然大丈夫には見えない。明らかに何かある様子であり、態度である。なのに、なぜ女性はそれを言ってくれないのか。

これが男性側の主張です。いかがでしょうか?男性の皆さん、お心当たりありますか。

対する女性の主張はこうです。

本当に相手の様子に注意を払い、相手のことを気にかけていたならば、言わなくたってわかるはず。それなのに、言ってくれなければ分からないとは、どういうことか。言わなくても分かるのが、相手に対する愛情ではないのか。本当に相手を大切に思っているなら、言わなくても分かるのが当然よね。言ってくれなければ分からないなんて言うなら、ああもう、分からなくて結構です!

要求を明確に、言語化して伝えてほしい傾向が強い男性と、相手の表情や態度、ちょっとした視線や姿勢などの、いわゆるノンバーバル(非言語)情報を敏感に読み取って相手の気持ちを推し量ってコミュニケーションをとる傾向が強い女性。どちらが良い悪いという話ではなく、コミュニケーションの取り方、情報の受け取り方、対応の仕方が、男女で異なる傾向があるために、往々にしてこのようなすれ違いが起きています。

男女の感じ方の違いから来る、コミュニケーションのずれは、仕事の場面でも日々起きています。お互い悪気なく、あるいは良かれと思って行なっていることが、ズレを生み、伝わりにくさや、理解のなさ、果ては、男性は分かってくれない、女性社員は扱いにくい、そんな対立を生んでいます。男性上司から見ると、女性部下にどう接していいかわからない。考え方や価値観が分からない。なかなか本音を打ち明けてくれない。優秀でやる気があるように見えたのに、管理職の打診をしたらなぜか断わられてしまった。そんな悩みに繋がります。働く女性から見ると、男性中心の組織の中で、思っていることがなかなか伝わらない、理解してもらえない。会社の戦力として、認めてもらえていない。言われたことだけ黙ってやっていればいいんだと、見られている。そういう悶々とした思いを抱えています。互いの違いを認めて歩み寄ることが、男性女性双方に求められていることはもちろんですが、現状では男性が中心の企業が圧倒的に多く、少数派の女性の意見が埋もれてしまいがちです。だからこそ本稿のように、男性上司の方に女性の視点をお伝えする意味があるのだと思います。

女性社員とのコミュニケーションを図る努力を怠った結果、男性が気づかないうちにハラスメントを犯してしまう危険性があります。組織力が低下し、優秀な人材の流出につながるリスクもあります。女性社員の力を引き出し活かしたいと考えている多くの男性上司の方に、上司としての関わり方、コミュニケーションを取る際に気をつけたいポイントをお伝えします。

もちろん、人はひとりひとり違い、それを属性やタイプで決めつけることはできないのは、言うまでもありません。「女性とはこう接するべき」などという女性万人に通じる方法もありませんし、「女性とはこう接しておけばよい」というマニュアル的な向き合い方こそ、不誠実な人との関わり方でもあります。その上で、男性が多数を占める会社組織の中で、また、長らく女性は男性の補佐という役割に置かれてきた社会の中で醸成された男性的、女性的なものの見方があることもまた事実です。ひとりひとり異なる他者を理解するためのひとつのヒントとして、お読みいただけると嬉しいです。

■相手を承認する、仲間として尊重する
職場で一緒に働く女性を、「派遣さん」とか「パートさん」「スタッフさん」などと呼んでいませんか。働く女性の中には「職場で自分の名前を覚えられていないんです」とか、「名前でなんて呼ばれたことありません」という女性が多くいます。名前を呼ぶことは、その人の存在を認めることです。職場で自分が1人の個人として承認されている、仲間として存在している、と感じるために不可欠なものです。

KC会員の医療法人宝歯会の梶原浩喜理事長に伺い、大変感銘を受けたお話を紹介します。

梶原先生は福岡県北九州市で歯科医院を開業された後、分院展開をして次々に医院を増やしていかれました。その過程では、運営が上手くいっている医院もあれば、上手くいっていないところもあったといいます。経営に悩むなかで梶原先生は、自分が働いているスタッフさんたちの名前をきちんと覚えていないことに気がつきます。

スタッフさんが大切だと常日頃言っているならば、全スタッフさんの顔と名前を覚えることこそ、まず最初に自分がやるべきことだと反省された先生は、ご自分の院長室に、全スタッフさんの顔写真を貼りました。写真の下には、名前と誕生日も書かれています。毎朝それを見ながら、スタッフさんのフルネームを漢字で書いて、名前を覚えたのだそうです。直営21医院、500名を超えるスタッフさん全員のフルネームを、漢字でです。今も新しいスタッフさんを迎えるたびに、写真を見ながら名前を漢字で書いて覚えていらっしゃることでしょう。

名前を覚え、名前で呼ぶことは、やはり信頼関係の基本なのだと大変感銘を受けました。私は何度か、先生の歯科医院の研修に伺ったことがあります。研修参加のため各分院から集まったスタッフさんに、こまめに名前を呼び、話しかけていらっしゃる梶原先生のお姿が、とても印象的でした。過去に毎朝ご自分に課した、全スタッフの名前を手で書いて覚えた先生の執念が、その呼びかけを可能にしたのです。

■労い、感謝を伝える
組織の中では、サポート的な仕事をする女性が多くいます。営業事務や庶務、私のような秘書、アシスタントなどもそうです。相手の表情や機嫌の良し悪しを敏感に察したり、細やかなことに気づいてサポートできるのは、女性の強みを活かしやすい仕事でもあります。一方でサポート的な仕事というのは、ミスやトラブルなく、毎日が通常通り運営されることが求められる仕事です。秘書であれば、上司の出張手配が抜かりなく行われ、確実にその時間、その場所に到着して予定通り仕事ができて当然なので、それができたからと言って、達成感があったり、大きな手応えがある仕事ではありません。そしてひとたびミスやトラブルが発生して、時間通り訪問できない、予定に穴をあけてしまったら、大問題に発展する可能性があります。何事もないのが当然で、何か起きればマイナス、そういう仕事です。

私たちが当たり前に享受している毎日の生活も、実は目に見えない裏方の仕事によって支えられて成り立っています。何もないために力を尽くす仕事では、達成感が得られたり、大きな成果や手応えが感じられることは、日々の中ではほとんどありません。そうしたささやかな仕事、目立たない働きに対して、その貢献に気づき、労いの言葉をかける、感謝を伝えることはとても大切なことです。裏方として、陰で支える役割を担っている人にとっても、自分はこの組織の中で、役割があり、貢献しているのだと実感できることは、働く喜び、仕事のモチベーションや働きがいに繋がります。

「大至急と言われて、急ぎ対応した書類を届けたら、こちらの顔も見ずに、『その辺に置いておいて』と言われた。困っているだろうと思い、自分の急ぎの仕事を後回しにして対応したのに、虚しかった。この人は全然分かってくれてないんだと感じた」

こういう話をすると「女性は褒めてくれなければ仕事をしないのか」と思う人がいるかもしれませんが、決してそういう話ではありません。褒めてほしいとか、評価してほしいと言っているのではないのです。小宮がよくお話する「良い仕事の3つの定義」があります。1.お客さまが喜ぶこと、2.働く周りの仲間が喜ぶこと、3.工夫、です。1.はお客さまの評価として、その結果がはっきり分かります。評価されなければ、お客さまを失うという結果になって表れます。しかし2.は「喜んでいる」ことを伝えなければ、本人には分かりません。小さな仕事も誰かが見ててくれる、「有難う、助かったよ」の言葉がある。そうすれば、何かこの人のために頑張ろう、働く周りの仲間が喜ぶ仕事をしようと思い、それが働きがいを生むことに繋がります。ある企業では、営業成績の良い社員の表彰式で受賞社員がスピーチをする際には、自分をサポートしてくれている営業アシスタントへの感謝を述べるのだそうです。社内の仲間のために仕事をする社員の働きがいを高めるためには、その貢献を当たり前と思わず、感謝や労いを伝える組織を作ることが重要なのです。

■等しく接する
女性は不平等や不公平、えこひいきに対しても、非常に敏感です。詳しい説明はここでは割愛しますが、相手が自分をどう思っているか、人との関係性を重視する傾向が強い女性にとって、誰かがえこひいきされることへの不快感や抵抗感が強く、それが仕事に支障をきたす場合もあります。女性が少数派であることも、少ない女性同士の関係性や、自分の存在価値、存在意義が脅かされることに敏感にならざるを得ないという面があります。男性上司には、全ての女性部下が、等しく、上司から愛情をかけられていると感じられるような振る舞いをしていただければ、チームが回りやすくなります。あらゆることを平等にやるという意味ではなく、例えば自分が話しやすい部下とだけ話すのではなく、全員に声をかけるとか、同じ部下とだけランチをせず、他の部下とも機会を持つなど、意識して全員と接するように配慮が必要です。

■気遣いのズレ
よかれと思ってしている、女性社員への気遣い・配慮が、逆に女性を傷つけ、仕事に対する誇りや意欲を失わせる場合もあります。

子育て中だから仕事の負荷をかけない方がいいだろうと勝手に判断して、負担の軽い職場に異動させる。女性なので残業させてはいけないだろうと勝手に決めつけて、本人が最後までやるべき仕事を途中で巻き取ってしまう。出張はできないだろうと勝手に気を遣って、本人がやる気を持って取り組んでいた仕事から外してしまう。男性上司にとってはよかれと思ってした配慮なのでしょうが、女性部下は、違う意味に受け取っている可能性もあります。子育て中の私には、責任ある仕事はさせてもらえない。その程度までしか期待されていない。男性社員はどんどん仕事をして成長していくのに、私には成長の機会が与えられない。良かれと思って勝手に判断し、決めつける気遣いは、そんな意味に受け取れるのです。

上司として、部下の状況に配慮するのは、当然のことです。ただし、勝手に決めるのではなく、本人に聞き、その判断は本人に委ねて欲しいのです。「ぜひ君にやってもらいたい仕事がある。責任も重いし、負担もあるかもしれない。残業などはみんなでカバーするから、やってみませんか」「月に一度程度の出張が発生するプロジェクトで、君が適任だと考えているんだけど、どうだろう」と本人の意向を聞き、必要なサポートを申し出ることで、本人が安心してチャレンジできるよう後押しするのが、相手を思った真の気遣いなのです。

■「聞く」「寄り添う」コミュニケーション
男性が女性の買い物に付き合う時、女性から「こっちの赤いブラウスとこっちの青いブラウス、どっちがいいと思う?」と聞かれる場面があります。どちらと答えても、違うと言われると、男性が悩むシチュエーションだそうです。男性の皆さんは、どう答えてらっしゃいますか。

脳科学の中野信子先生によると「どちらも素敵だけど、君はどちらがいいと思ってるの?」と質問してあげるのが、正解なんだそうです。

女性は答えを求めてるのではないんです。自分が今悩んでるということを受け止めて、共感してほしいのです。そして、一緒に考えよう、答えを出そうと質問することで、寄り添う。それがこの場面で女性が求めていることなのだそうです。

職場でも似たような場面があります。

仕事のことで悩んでいる女性社員が、1on1で上司に相談します。「ちょっとご相談があるんですけど、最近ちょっと悩んでることがありまして、いついつ、こういうことがあって、誰々さんがこう言って…」。話し始めるやいなや、男性上司が「ああ、わかったわかった。そういうときはこうすればいいんだよ。僕は以前にこういうことがあってね、こうしたら見事に上手くいってね、ちなみにその時にね…」その後はずっと上司の昔の手柄話が続いて、面談は終わりました。相談しても時間の無駄でした。

こんな経験を繰り返すと女性は、悩みがあっても上司に相談しなくなり、一方男性上司は、女性社員が相談してくれない、本音を話してくれないと嘆くようになります。

一般的に男性は、相談を受けると、解決策を提示すべきだと考えるようです。一方女性は、必ずしも解決策を求めているわけではありません。まず自分の話しを聞いて悩んでいることを受け止め、寄り添って欲しいのです。相談しながらも、実は自分の中で答えを持っている場合もあります。自分なりの答えはあるのだけど迷っていたり、その答えに自信が持てないだけだという場合もあります。そんな時、上司が親身になって話を聞いてくれ、迷っている答えを引き出してくれたり、その答えでいいのだと背中を押してもらえることで、不安を解消して前に進むことができます。女性はこうしたコミュニケーションを積み重ねて、上司に信頼感を抱き、心を開いていくのです。

これまでは、雄弁に語り、相手を説得して引っ張っていくのがリーダーシップだとされてきました。これからは、相手の話をよく聞き、相手に寄り添い、納得を得ながら背中を押すのが、求められるリーダーシップのあり方なのかもしれません。

■聞き上手になる
説得するリーダーシップから、納得を得るリーダーシップが必要になると言いました。それはつまり「話上手」なリーダーから、「聞き上手」なリーダーが求められていると言い換えることができます。話を聞いて欲しいという期待に対して、それを受け止める聞き方ができれば、コミュニケーションは大きく改善します。

そもそも人は自分の話を聞いてほしい、理解して欲しい生き物です。そして私たちは、相手の話をよく聞くことによって、その欲求を満たしてあげることができます。コミュニケーションは相手が受け取った分だけが成立していると考えるならば、コミュニケーションの主体は、話し手ではなくむしろ聞き手の側にあると言えます。明らかに話を聞く気がない相手を前に、話す気力が失せた経験はありませんか。聞き上手な相手のおかげで、時を忘れて話が盛り上がったり、話しているうちに思いがけないアイディアが閃いたり、内省が進んだりすることもあります。会話の主導権は、実は聞き手が握っているとも言えるのです。

そして人は「自分の話を聞いてくれる人」の話を聞くものです。良い聞き手でなければ、自分の話も相手は聞いてくれないと思った方がよいでしょう。

良い聞き方のポイントをお伝えします。

  • 相手に純粋な関心を寄せ、心を空にして、素直にきく

キャリア面談のロールプレイングを行なった時のことです。相談者役が、仕事に関する悩みを話し、キャリアコンサルタント役はそれを傾聴するのがロープレの目的にも関わらず、多くのコンサルタント役は、相手の悩みを聞くやいなや、自分の経験やアドバイスを長々と話し、ロープレ時間のほとんどを、コンサルタント役が話してしまうのです。「人は自分の話を聞いてほしい」生き物であると同時に、「人の話は聞けない」生き物でもあるようです。

相手の話をきっかけに、意識が自分に向いてしまうと、もはや相手の話に集中して聞くことができなくなります。また思い込みや勝手な解釈は、相手の話を歪ませることになります。

  • 途中で遮らず、最後まできく

頭の回転の速い人は、途中で相手が言いたいことが分かった(と思う)ことがあります。せっかちにそれを自分が奪ってしまう人もいますが、相手の言葉を待つことが聞くということです。また相手の話の途中で、「でも」「しかし」などと反論すると相手の話す気を失わせます。

  • 話しを聞く時間を持つ

時間を持つということは、相手に集中するということです。パソコンに向かいながら、本や新聞を読みながら、など「○○しながら」という動作は、相手に集中するつもりがないと表明しているようなものです。手を止めて顔を上げ、相手に正対する姿勢が、真剣に相手に向き合う気持ちを伝えます。

  • アイコンタクト、表情、うなづき、あいづち

相手と目が合わないと、相手は自分の話を聞いていないと感じます。目を見て会話をする姿勢は、信頼感や誠実さを伝え、目を見ない人には警戒心や嫌悪感を覚えます。見つめすぎるのは不自然ですが、話を聞く時は相手の目を見て、相手に意識を向けます。

そして聞くというのは、つまらなそうに無表情で黙っていることではありません。アクティブリスニングという言葉もあるように、積極的に相手の話に興味を示し適度にうなづき、あいづちを打つことで、相手は「熱心に聞いてくれている」「このまま話してよいのだ」と安心して話をしてくれます。男性上司には、聞いている表情が怖いと感じる人もいます。威圧感は、相手の話を封じてしまうもの。話しやすい、穏やかな表情を心がけましょう。

  • オウム返し

相手の言葉の一部を繰り返すことを、オウム返しと言います。「最近頭痛がひどいんです」⇒「頭痛か、それはつらいね」、「週末、旅行に行ってきたんです」⇒「旅行ですか、それはよかったね。どちらに行ったの?」、と相手の話した言葉を返すことで、自分の話を聞いてもらっていると感じ、話しやすさを覚えます。

  • 要約

ここまでのポイントを織り交ぜて、熱心に話を聞きながら、話の内容や主題が見えてきた段階で「つまり~ということなんですね?」と要約してあげるのです。適切なタイミングで、的を射た要約を返すことで、この人はよく分かってくれている、自分の伝えたいことを理解してくれていると感じます。

ただし、要約は相手が充分話したと感じるまで聞いてこそ、効果を発揮します。話し始めの段階でまとめようとすると、「途中で遮られた」「さっさと切り上げようとしている」と感じ、不満や不信につながります。

■「組織の都合」ではなく、その人に向き合う
女性は昇進したがらない、管理職になりたがらないという話も、多くの組織でよく聞くお話です。例えばある女性にぜひ管理職になって欲しいという話になったら、なぜあなたなのか、あなたの何を評価し、何を期待しての昇進なのか。管理職という仕事の経験は、あなたのキャリアにどういうふうにプラスになるのか、その人の立場で説明していただくことで、受け取り方も変わっていくものです。

その説明がなく、突然、管理職の内示や意向だけが本人に伝わったら、それは本人も難色を示すだろうと思います。今までアシスタントの仕事しかさせてこなかったのに、なぜ突然管理職なんだろう。このポジションに就く人がいなくて困ってるからだろうか。女性活躍推進が叫ばれているなか、当社も女性管理職を増やしたいという理由だろうか。結局、会社の都合だろう、そういう受け取り方に繋がるわけです。入社時点から成長の機会が与えられ、段階的に教育育成のステップを踏んで昇進していくことを当たり前に捉えてきた男性とは、受け取り方が大きく違うのも当然です。

もちろん組織決定事項に従ってもらうことも大切です。ただし、コミュニケーション不足の状態で、決定事項だけが言い渡されるのは、押しつけであり、主体的なやる気を失いかねません。押しつけるのではなく、また無理に説得するのでもなく、納得を得るということが大事なポイントです。自分にとってプラスだから、不安はあるけどやってみようと思える。支えてくれる上司の気持ちに応えたいという信頼関係が構築されていけば、女性の、管理職への受け止め方も徐々に変わっていくと思っています。

そしてこれは、女性社員に限ったことではないと感じています。私は毎年、新入社員研修で多くの新人さんと接しています。最近の若い男性社員への接し方も、全く同様だと感じています。男女の差がなくなってきているということです。

会社や組織の都合で、命令されたり説得されることを、若い男性社員の方は非常にネガティブに捉えています。ブラック企業やハラスメントが社会問題になり、そうした不安に直結することもあるのかもしれません。命令や強引な説得ではなく、丁寧に説明し、納得を得るコミュニケーションが、新人受け入れやOJTの現場でも求められています。今の上司の世代では、今までなら黙ってついて来いと言えば、通じ合っていけたという体験を持っています。飲みに行ったり、一緒に残業しながら話をしたりして、共に過ごす時間が長かったこともあるでしょう。しかし今の若い社員を見ていると、黙ってついて来いでは多分ついてこないと感じている上司も増えています。

「女性社員に対するコミュニケーション」と題した本稿は、実は、男女を問わず、これからの組織において必要とされる上司のコミュニケーション力であるとも言えるのです。

■人を育てる、ということ
メジャーリーガーの大谷翔平選手や菊池雄星選手を輩出した、岩手県花巻東高校野球部の佐々木浩監督は、選手には4つのものをかけるとお話されています。

時間をかけて

負荷をかける

そして期待をかけて

言葉をかける

今仕事にやりがいや働きがいを持って働いている人はきっと、これまで出会った上司や先輩、師から、この4つをかけてもらったはずなのです。男性社員には、確かに4つをかけてきたけれど、女性社員には期待をかけて来なかったとか、負荷をかけて来なかったと思い当たることがあれば、その分だけ女性社員が育つ要素が足りなかったのかもしれません。

皆さんは部下に、この4つをかけていますか。


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