今回の年末年始は、個人的な用件もあった関係で、ベトナムで過ごしました。ベトナムへの渡航は3年ぶりになります。3年前の渡航時もそうでしたが、今回改めて、同国の経済力・物価が上がっていることを感じました。
この時期の交換レート(1円=167ベトナムドン)で換算すると、日本の物価と比べて明確に安さを感じたのは、ホーチミンの高級レストラン大人9人・幼児2人で約45,870円と、タクシー料金20分で約720円ぐらいでした。街中のフォー店のフォーが約420円、ユニクロのジャケットが約7,780円など、物によっては日本と価格がほぼ同じかあるいはそれ以上で、ユニクロの場合は日本と価格が逆転するそうです。
都市にもよりますが、中部のフエでもミンマン帝陵(第2代皇帝のお墓)入場料が約900円、自販機で250ミリのジュースが約120円など、日本と比べて割安感はあまりありません。3年前に増して物価が上がっているのを体感します。
これは、円が弱くなっている影響もありますが、同国が毎年高い経済成長を続けているために必然的に物価が上がっていることも影響しています。世界銀行によると、同国の2024年実質GDP成長率は約7.1%、消費者物価上昇率は約3.6%で、経済が好循環し実質所得も増加する中での物価上昇であることが見てとれます。
こうなると、渡航の負担が重くなることで必然的な結果と想定されるのが、日本人の存在感の低下です。20年前はどこを歩いても日本人に出くわしたイメージがありますが、今回はほとんど見かけませんでした。かわりに、(その外見と話す言葉の様子から)インド人と思われる人をたくさん見かけました。
生成AIに聞いてみたところ、訪越者数(観光以外の目的も含む場合がある。集計元も一致していないため正確な比較には限界もある。その前提でご参照くださいとのこと)の推移は次の通りということです。
【2014年】
1位:韓国1,949,433、2位:中国849,384、3位:日本648,612、4位:米国443,776、5位:台湾391,040、インド:圏外につきデータなし
【2024年】
1位:韓国4,569,000、2位:中国3,738,000、3位:台湾1,289,000、4位:米国780,000、5位:日本711,000、6位:インド501,000
日本からの訪越者は他国・地域に比べて伸びが少なく、外国人の中で日本人の占める割合が減っていることがわかります。加えて、技能実習生の受け入れや企業の現地展開強化などで日本人の商用渡越者も増えていると想像されます。商用者もカウントされているとすれば、観光客だけなら日本人はマイナスかもしれません。上記の体感と合っています。
また、インフラが急速に変化しながら発達していることも、今回改めて痛感しました。
個人経営の飲食店を含めて多くの店や施設でフリーWi-Fiが使え、通信に不自由することはほぼありませんでした(時々途切れましたが)。個人的に驚いたのが、ダナンから車で向かい、世界最長級のロープウェイ・ケーブルカーを乗り継いだ先の標高約1500メートル地点にある観光名所バーナーヒルズの周遊エリア一帯でもフリーWi-Fiが得られたことです。
このような高地に、シンボルともなっているゴールデンブリッジ(2018年に完成・公開)をはじめとする観光施設、レストラン、ショップが多数集結し、フリーWi-Fiも通じるということは、当初からデジタル経済を前提に大規模な民間投資が行われ、インフラを整備したであろうことが見てとれます。このあたりも、10年以上前のような頃のベトナムのイメージを引きずっていると、想像しづらい実情です。
ベトナムと言えばバイク大国です。まだまだ四輪車より二輪車のほうが数が多いのですが、3年前と比べてやはり四輪の比率が高まっています。そして、四輪の多くがEVです。目立つのが自国のビンファスト社製。他には中国のBYDなど。ショッピングモールなどの施設でEV充電設備も見かけるなど、EV走行のためのインフラも次第に増えてきています。都市部を中心に道路が狭く渋滞が激しい国情からも、安価な小型EVというビンファストの主力車種は環境に合っていると言えそうです。
二輪についてはEV化が緩やかですが、「首相指令20号」(2025年7月にベトナム政府が発表した、首都ハノイの中心部でのガソリン二輪車走行を禁止する方針。30年までに禁止区域を段階的に広げる見込み)などEV化を推進する政策も影響があるのか徐々に広がっています。私がお世話になった知人宅にはEV二輪車のところもありました。
フードデリバリーサービスも充実しているようです。ウーバーイーツは東南アジア全域で撤退しグラブに売却・統合されたため今は見かけませんが、グラブフードや地場のビーフードなどのユニフォームを着たフードデリバリーのバイクをあちこちでみかけます。
そして、多くがキャッシュレス決済です。日本同様の現金主義の個人や店舗、あるいはクレジットカードのみ使用不可のポリシー(おそらく手数料の支払いを避けたいため)の店舗などもありますが、多くの人がスマホでキャッシュレス決済の印象です。改めて、Wi-Fi・スマホの威力を感じます。
これらのことからは、例えば次のように想定してみることもできます。
・今現在世界的にEVは逆風が吹き停滞しているが、流れが逆流すること自体はないのではないか。長期的にはEV化が着実に進むのではなかろうか。
・Wi-Fiやスマホの流通が、情報にさらされすぎたり、セキュリティ不安を引き起こしたり、新たな社会問題の要因になっていることは事実である。そのうえで、人と人や地域間での資産や情報の格差を縮め、社会全体を発展に導く効果を勘案すると、全体的にはやはり恩恵のほうが大きいのではないか。
・他のアジア諸国やアフリカ諸国などの地域でも、デジタル化・インフラ発達に伴う同じような変化が起こっている、あるいはこれから起こっていくのではないか。
・日本では物価上昇への懸念や物価対策の必要性などが叫ばれている。もちろん、賃金上昇率を上回る物価上昇率(=実質賃金の低下)は問題で、対策が必要。そのうえで、2~3%程度の物価上昇は長期的には必要。さもなくば日本・日本人の他国に対する経済力・購買力はさらに低下していくという前提に立って経済活動に参画することも必要ではないか。
上記のような思考も、他国に実際に足を運んでみて、仕事空間や生活空間を肌感覚で体感するからこそ促される面があると思います。業務上での国外出張という用件があまりない環境にいるとしても、何かの機会をつくってまとまった日数国外を見に行くことは、やはり有意義だと思います。
藤本 正雄