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現象と数字の両方を見る

小宮一慶のモノの見方・考え方
2021.11.24

私は、セミナーのお客さまや当社のコンサルタントたちに、「起こっている現象を見ることも大事だが、その裏付けとなるマクロの数字などもきちんと見て、自分が見た現象が、全体の中でどういう位置づけなのかを知ることが大切」というお話を時々します。つまり、ある現象だけを見て、その感覚で、世の中全体がそうだと決めてしまうことを戒めているわけです。
マクロの数字を見て、全体が本当にそうかどうかを判断しなければなりません。もちろん、これは、会社で起きていることも同じです。また、現象を見ることと、全体の数字を組み合わせることで分かることも少なくありません。

 

例えば、先月、お客さまの経営方針発表会のために京都のホテルに泊まった時には、朝食会場に入場するのに、20分ほど待ちました。10月下旬だったのですが、緊急事態宣言も明け、京都に観光客が戻っていたのです。ただ、私はそのホテルには、年に1回程度しか泊まらないので、もちろん、それで全国的に観光客が戻ったとは判断できません。

 

11月に入って、お仕事の関係で、また京都のホテルに2泊しました。今度は年に6、7回は泊まるホテルです。私はホテルに泊まるときに、混み具合を見たいこともあり、だいたい決まった時間に朝食会場に行きます。その京都のホテルでももちろんそうしています。そうすると、昨年の同じころに泊まったときよりも朝食会場は空いていました。もちろん、数か月前の緊急事態宣言中に比べれば格段に増えていましたが、それでもGoToトラベルのキャンペーンがあった昨年とは比べ物にならないと感じました。

 

先週も、当社のセミナーの関係で大阪のリッツ・カールトンに3泊しました。
昨年の今頃は、チェックインに1時間ほどかかったことや朝食会場に入るまでにやはり1時間ほどかかったという話を聞かされました。このホテルでも数か月間に比べればかなり宿泊客は増えているように見受けられましたが、昨年の今頃と比べるとかなり少ないと感じました。ここまでは、私が見た現象です。そこでマクロの数字と重ね合わせます。「旅行取扱状況」という、主要旅行会社から観光庁に、毎月、海外、インバウンド、国内旅行に分けて提出している数字があります。それによると、昨年では、コロナの影響が本格化して以降、コロナがなかったその前の年(2019年)と比べて最も良かったときでも45%程度の売上しかありませんでした。
それが昨年の11月でした。そして、コロナ以降の統計上はそれが昨年のピークで、GoToトラベルのキャンペーンがあっても旅行業全体では、惨憺たる状況だったのです。

 

多くの方は「最近は人流が増えている」とおっしゃいます。緊急事態宣言中に比べるとその通りなのですが、先ほど述べた今年の状況を見ていると、今の売上げはおそらく、昨年程度もないと考えられます。とても厳しいのです。12月以降の旅行の伸びをもちろん考えなければなりませんが、一部の業種、特に旅行関連の企業の一部はかなり疲弊していることは間違いありません。
政府は55兆円規模の景気対策を考えているようですが、できるだけ早く、疲弊している業種や職を失っている人たちの業績回復や雇用確保の施策を行って欲しいものです。それが岸田内閣の腕の見せ所だと思います。

 


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