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成果を生む「経営計画書」の作り方のポイントとステップ

経営計画策定
2023.12.01

中堅・中小企業では経営計画をそもそも策定していない、策定していても目標数字が中心である、または社長がひとりで作っている、ということが良くあります。
様々なやり方がある経営計画書の作り方ですが、経営計画書を作る意義や、そのプロセス、ポイントについて詳しくまとめました。
経営計画の作り方は、同時に事業戦略の作り方でもあります。基本的かつ重要なポイントを押さえて頂くことで、企業にとってより良い「方向付け」を行って頂きたいと思います。

<こんな課題をお持ちの方におすすめ>
・事業の先行きが心配
・新しい取り組みがうまくいかない
・経営者の求心力が弱い

・幹部人材が育っていない
・計画は作っているが達成しない

・部門間の連携が悪い
・現場から意見や提案がない
・社員のモチベーションが低い
・離職率が高い

INDEX:

0.経営計画書を策定する意義

・組織をまとめ方向性を示す

・経営のPDCAを回す

1.どのような経営計画書であるべきか
・数字だけではだめ

・10年先を見て3年計画の1年目を毎年行う
2.どのようにつくるべきか
・社長がとことん考える
・幹部を巻き込む
3.経営への想いとミッション・ビジョンを確認する

・経営者の想い
・ミッション・ビジョン・バリュー
4.環境分析(内部環境と外部環境)

・外部環境分析
・内部環境分析(自社の強み、弱み)
5.顧客と自社の提供価値の検討
・自社のお客さまは誰か
・変化するお客さまのニーズと自社の提供価値
6.10年後のビジョンと3年後の目標設定
・10年後のビジョンを描く
・3年間の中期計画を策定する
7.商品・サービス(QPS)の具体化とマーケティング戦略
・QPSの設計
・ビジネスモデル
・マーケティング戦略

8.計画を実現する組織と人材の計画
・3年後、10年後の組織像を描く
・人材の育成計画と人事制度
9.財務計画を立てる
・計画を数字に落とし財務規律を確認する
10.3年間の実行計画と1年目の具体計画
・「やること」と「やめること」

・誰が、いつ、何を行うかの具体化・明確化
11.KPIの策定とPDCAサイクル手法の具体化
・目標となるKPI、そのためのCSF

・実行度を上げPDCAを確実に回す
12.経営計画書の組織への浸透
・経営計画の社員への説明
・各チームや個人の目標と重ねる

0. 経営計画書を策定する意義

・組織をまとめ方向性を示す

ミッション・ビジョンを具体化するための道筋を示すものが経営計画書です。
企業の目的と目標を明らかにし、社員一人ひとりが理解することで、自らの仕事の意味を理解し取り組むことができるようになるのです。社員のモチベーションが低い、ということは自社の仕事に意味を見いだせていないということです。何のために仕事をしているのかを社員全員が理解し同じ方向を向くために必要なものが経営計画書なのです。

・経営のPDCAを回す

経営に正解はありません。お客さまや環境が目まぐるしく変わるなか、どのような方針で経営を行うか、そのときに最適解と考えるものが経営計画です。計画は実行されるためのものであり、実行されれば、必ず新しいフィードバックがあるものです。その結果をみて、最初の仮説を見直し柔軟に修正することで、経営の方針は磨かれていきます。計画(仮説)がないと、結果の検証は行うことすらできません。日々の事業活動の結果が正しく活かされることもなく、ただ時間を浪費することになります。

1. どのような経営計画書であるべきか

・数字だけではだめ

社員一人ひとりが会社の目的・目標を理解するためのものですから、数字の計画だけでは経営計画とはいえません。
ミッション・ビジョンを定め、目指す姿を描くこと、今の姿を客観的に見つめ、バックキャスト思考で現在からビジョン実現までの線を描くのが経営計画書です。
そこには社員一人ひとりが肚落ちするストーリーが必要です。売上や利益の目標はそれを最終的に数字で表したものでしかないのです。

10年先を見て3年計画の1年目を毎年行う

ビジョン(自社が目指すありたい姿)として10年先を見てみましょう。その姿を実現するために大きな道を描きます。ただし今の時代に10年先のことまで細かな戦略を立てるのは難しいため、3年間の中期計画として具体的な3年後の中間地点までの戦略を立て、3年計画の1年目の実行計画を策定するのです。

かつての企業は中期計画を確実に実行することを行っていましたが、今の環境変化の時代にそれでは変化に適応できません。上記で述べたように計画はその時の最適解の仮説です。変化に対応し、実際に経営を行うなかで見えてきた修正点を反映するためにも、毎年3年間の中期計画を見直し、そしてその1年目を実行する、それを繰り返していくことが今の時代の経営計画には必要であると考えます。

2. どのようにつくるべきか

・社長がとことん考える

まずは経営者自身がとことん考えることです。中堅・中小企業において社長の影響力は大きいものです。経営者自身がとことん考えることが大前提となります。経営者自身が心から信じることができ、どれだけでも語ることのできる計画である必要があります。

・幹部を巻き込む

そのうえで、幹部を巻き込んで一緒に考えることをお薦めしています。よくありがちなのは、社長一人で考えた計画を幹部に渡し、その実行部分だけ考えさせ責任を持たせる光景です。その結果、実行計画が達成されない、幹部が言い訳ばかりする、ということになっていないでしょうか。中堅・中小企業の幹部は役員・事業部長・部長など企業の大きさによってその役職の呼び名は変わりますが、社長一人では組織は動かせません。現場の社員へ多く関わりその仕事を差配する幹部クラスも、同じように肚落ちし、自身の言葉で語ることができるようになることが必要です。
そのためには、下記の策定のプロセスの最初から幹部を参画させることです。前提から共有することが肚落ちするための一歩です。彼ら自身にも考えさせ発言させることは彼らのコミットメントを上げるだけでなく、衆知を集めることにもつながります。そのうえで最終的な難しい判断は社長が行うべきです。

幹部を巻き込むプロセスは、幹部自身が肚落ちするだけでなく、幹部を「経営」という視座に引き上げる人材育成にも非常に有効です。社長の周りに頼れる本当の意味での「経営幹部」を育てるプロセスでもあるのです。

 ここからは、経営計画策定のプロセスとそのポイントを見ていきます。

下記に紹介するのは標準的な進め方ですが、課題感に応じて重点を変えたりしながら行っていきます。情報収集や分析を挟みつつ行うため、ゼロから経営計画を策定する場合、初回は半年以上かかるものだと思って時間をしっかり確保して取り組んでください。

 3. 経営への想いとミッション・ビジョンを確認する

・経営者の想い

経営者自身がどのような信念を持ち経営を行いたいと思っているか、自分自身に向き合い言語化していきます。自社は何のために存在しているのか、自身は何のために経営をしているのか、答えられるでしょうか。また、企業の歴史を紐解くことも、その企業らしさや大切にしたいDNAを考えるうえで有効です。

・ミッション・ビジョン・バリュー

ミッションやビジョンは、経営者よりもさらに上の存在として、企業を導きます。そのミッションやビジョンは信じられるものになっているでしょうか。歴史ある企業においては、ミッションやビジョン(経営理念など呼び方は様々です)が形骸化していることもあります。その場合は本当に心から信じられるものにするべく、改めて考え直すことも有効です。

バリューは行動指針です。弊社ではウェイ、と呼んでいます。自社らしさ、自社の価値を生み出すための行動の基準・あり方を定めたものです。 

4. 環境分析(内部環境と外部環境)

・外部環境分析

外部環境の分析では、今起きている環境変化だけでなく、10年後までの変化を想像してください。
PEST分析が一般的ですが、政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)の4項目で見ていきます。具体的には日本経済と海外の関係や、規制緩和、人口動態の変化、社会の価値観の変化、そしてテクノロジーの進化などです。自社を取り巻く環境がどのように変化をしていくのかについて考えますが、その場で慌てて情報収集をするのではなく、普段から関心を持っているかどうかも問われます。業界における競争原理を中心に分析する5-force分析などもあります。
中堅・中小企業は思わぬ外的環境の影響を連鎖的に受けることもあります。また、業界内においてはいかに自社のポジショニングを確立するかが重要になります。

・内部環境分析(自社の強み、弱み)

内部環境分析では、自社の強みと弱みを洗い出します。お客さまから見えている部分と、自社のなかにあり外には見えていない部分があります。また、強みや弱みは、競合企業と比較してこそ明らかになるものです。そのときのポイントとして、「お客さまの目から見て」考えることが重要です。自社において強みと認識していることが実はお客さまから見ると重要ではない、ということもあります。
ここで、自社の強みをより多く見出すことが、これ以降の良い戦略作りのポイントとなります。目に見えることだけではなく、自社が差別化できている根本の要因はなにか、技術力やノウハウ、人的なリソースなど目に見えないものを細かく分解して考えてみると良いと思います。

 また、外部環境と内部環境分析を合わせてSWOT分析を行うことで、機会をどう強みを持って活かし、脅威に対応するかを検討することができます。
環境分析において重要なことは思い込みを捨てて、素直に客観的にみることです。 

5. 顧客と自社の提供価値の検討

・自社のお客さまは誰か

「顧客は誰か」とは、ドラッカーも最初に行っている重要な問いです。自社のお客さまのことを本当に分かっているでしょうか。一つは今のお客さまのことをどれだけ理解できているか、つまり本当のニーズが見えているか、お客さまの置かれている環境をどれだけ理解できているかという観点です。もう一つの観点は、これから自社がお客さまと考えるべきは、今のお客さまだけなのか、他にも自社の価値を提供し喜んで頂ける潜在的なお客さまが存在しないのか、ということです。

・変化するお客さまのニーズと自社の提供価値

お客さまの置かれている環境も変化しているのは自明のことです。お客さまのニーズをつかむためには、小さな購買行動やご要望の変化をつかみ、アンテナを立てること、そして何よりその声を直接聴かせていただくことです。どれだけお客さまのお話を聴くことができるかにかかっています。

そしてそのお客さまに、自社が持つ強みをどのように価値として転換しご提供できるかを考えるのが商品・サービス開発の基本であり、イノベーションの源泉ともなります。

 6. 10年後のビジョンと3年後の目標設定

10年後のビジョンを描く

ミッション(企業の使命)に従って、10年後のビジョン(目指す姿)をできるだけ、いきいきと描きます。どのようなお客さまに、どのように喜んで頂く存在になっているだろうか、そのときにどのように外部から評価されているだろうか、働く社員や自社の組織はどのように働く喜びを得ているだろうか。必ず実現したい、ありたい姿の像を結ぶことが、幹部や社員みんなの心を一つにする目標となります。

3年間の中期計画を策定する

10年後の事業の詳細は曖昧でも、3年後であれば解像度はより高く描けるはずです。10年後のビジョンを実現するために、3年後にはどういう姿になっているかを詳細に描きます。
そしてその姿に到達する計画については、この後のプロセスを通じて具体化していきます。

 7. 商品・サービス(QPS)の具体化とマーケティング戦略

QPSの設計

お客さまに提供する商品・サービスについて、その提供価値をベースに改めて考えます。
弊社が使っているQPS(クオリティ、プライス、サービス)というフレームに分解し、その組み合わせでお客さまに選んで頂けるものをお客さまの視点で考えます。
お客さまは他の商品・サービスと意識的または無意識に「相対的に」比較し選ぶ、ということを忘れてはいけません。何をもって差別化するかを考え、最もお客さまに選ばれるポジショニングを目指します。
また、クオリティとサービスはコストと連動します。プライス=価格戦略とコストのバランスで必要な利益水準を確保する観点も必要です。

・ビジネスモデル

商品・サービスを設計するだけでなく、それをどのようにお届けするか、どのような形で対価を頂くかを考えます。お客様の利便性の観点はもちろんですが、自社が商品・サービスを磨き込みながら継続的に提供し続けられるために工夫し知恵を絞ることも重要です。お客さまに価値をお届けするために、実際には企業では様々なプレイヤーと協業し連携しながらビジネスを提供していると思います。最近では新しい商流やバリューチェーンの在り方も増えています。他業種などの例も参考にしながら工夫することで、成果にも大きく影響します。

・マーケティング戦略

お客さまは誰か、商品・サービスでどのような価値を提供するか、どのようなビジネスモデルで提供するかを踏まえ、市場におけるマーケティング戦略を立てます。
既存のお客さまはもちろん、新しいお客さまへどのようにアプローチするか、チャネルや訴求内容、営業活動を想定することで、目標となる売上の計画を立てることができます。売上は、顧客数×販売価格×頻度で表されます。

 8. 計画を実現する組織と人材の計画

3年後、10年後の組織像を描く

上記の商品・サービスとビジネスモデルを実現するために必要な組織像を描きます。
今の社員構成を書き出し、3年後、10年後にどの人材がどのポジションで活躍してもらうかを考えてみましょう。人数もさることながら、スキルや能力的に足りない人材がいれば採用計画を考えなければなりません。10年後の組織の人材は今より10歳、歳を取っています。若い世代に活躍してもらう必然も実感できると思います。

・人材の育成計画と人事制度

上記で考えた組織を実現するために、社員一人ひとりの育成計画、キャリアパスを描きましょう。ポジションに合わせたマネジメントスキルやビジネススキル、専門性や技術力など育成するために行うべきことは多くあるはずです。OJTやOff-JTなどの教育体系、目標管理制度、評価・報酬制度などまで見直しを行う必要性が感じられるでしょう。ただし、人事制度、特に評価制度は社員に大きな影響を与えるため、拙速に変えるのではなく、丁寧な検討と導入プロセスが必要です。行うべきことと優先順位を考慮し、丁寧に計画に落としていきましょう。

9. 財務計画を立てる

・計画を数字に落とし財務規律を確認する

目指す市場、商品・サービスの設計、ビジネスモデル、必要な投資、人的コストがここまでの段階で明らかになりました。これを年間計画へと落としていき、3年後に目指す水準を定めます。目指す組織像を実現するために十分な付加価値額の水準を満たしているでしょうか。
人を含む資源を最適に配分し、成長する財務的な計画を立てることができるか、様々な角度から検証することが大切です。事業成長を目指すことが目的ですが、急激な成長でキャッシュアウトすることがないでしょうか。特に中堅・中小企業の規模においては、資金繰りや借入れの基準の規律など、成長と安全性のバランスを確認することが重要です。

10. 3年間の実行計画と1年目の具体計画

・「やること」と「やめること」

3年間の中期計画がここまでの要素でほぼ揃ってきたと思います。これらを統合して実行的な計画としてまとめていきます。ここでやっておきたいのが、「やること」と「やめること」を改めて検討することです。往々にして、この段階でやることやアイデアがどんどん積み上がってしまっていることが多いのです。計画は実行するために作るものです。本当にできるのか、という観点で、必要に応じて優先順位をつけ無駄なものを見直すなどの「やめること」を決める作業を取り入れてください。

・誰が、いつ、何を行うかの具体化・明確化

1年間の計画は特に実行計画として具体化します。誰が、いつ、何を行うのか、です。責任者を決め、責任者が考えて、期間を設定し実行するべきタスクをブレイクダウンして設定します。この実行計画では、各組織のメンバーが何に関わるのかが明確になるように、機能単位(営業、清算、技術、管理等)を明確にして作成します。

 11. KPIの策定とPDCAサイクル手法の具体化

・目標となるKPI、そのためのCSF

経営計画を実現するために、指標とするべきKPIを設定します。KPIは誰もが分かるようにシンプルかつ成果につながるものを設定するのがコツです。KPIは数値で表されるもの(例えば新規顧客獲得数〇名/社、市場シェア〇%、リピート率〇%など)ですが、その手前にCSF(重要成功要因)という、そもそも目標を達成するために必要な要因は何か(例えば別のサービスからスイッチするお客さまを増やす、市場での占有率を上げる、顧客満足を高め再購入頻度を高める)ことを設定することで、社員にも分かりやすいものとなります。

・実行度を上げPDCAを確実に回す

計画を実行するために、PDCAの仕組みを作ることも重要です。どれくらいの頻度で実行を確認するのか、その方法や会議などの目的・頻度・メンバーを設定しておきます。会議だらけにならないように、共有ファイルの活用を取り入れるなどの効率化も図りたいところです。特にC(Check)→A(Action)にも気を配り、想定や仮説と違う点を発見した場合に、仮説の見直しや、手法の見直しなどの対策を同時に検討し素早く回せるような仕組みを工夫して構築したいものです。

 12. 経営計画書の組織への浸透

・経営計画の社員への説明

策定した経営計画は、社長が直接社員全員に話す場を設けましょう。策定した背景や課題意識、目指す姿、そしてその目標と達成が、その会社を通じてお客さまや社会への貢献につながっていることを、是非真剣に語ってください。そして社員一人ひとりにとって、お客さまに喜んで頂くことにより自分の働く幸せ(働きがい)につながり、成長を目指すことで社員の経済的幸せ(報酬水準)につながることを伝えて頂きたいと思います。
経営者が本気で信じているかは社員には伝わるものです。一度だけでなく、繰り返し、繰り返し、飽きるほどに伝えてください。そして幹部メンバーも同じ方向を向き、自身の言葉で同じことを伝えていければ、組織全体へ浸透していくことができるでしょう。

・各チームや個人の目標と重ねる

経営計画によって組織を動かし、社員一人ひとりが自律的に動くには、ミッション・ビジョンと経営計画をチームの目標や個人の目標へ重ね合わせていくことが重要です。幹部メンバーが中心となってリーダーと連携しながら、チーム目標はもちろん、社員一人ひとりの成長目標や想いと丁寧にすり合わせ、個人の目標へ重ねていきましょう。この設定と丁寧なフィードバックが、自律して動く人を作り、組織として成果を上げることに繋がるのです。


以上、成果を上げる経営計画の策定プロセスをご紹介しました。

いきなり全部を完璧に行うことは難しいものです。重要なポイントを理解したうえで、まずは取り組みを開始し、人や仕組みを育てながら経営計画自体も成長させていくことで、企業の成果も成長していくものです。

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