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幹部と管理職、現場の従業員との“心の距離”が大切。理念浸透に向けた経営陣の覚悟

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2021.05.27

グミ市場の成長とともに売上、規模も拡大していく中で、部署間の対立や離職者の増加などの問題が浮上していた富士高フーヅ工業。その状況を打開するべく、社長の高橋 保裕は、小宮コンサルタンツの金入 常郎に支援を求めます。今では10年後のビジョンを見据える高橋社長と高橋専務が、金入と共にこれまでを振り返ります

エグゼクティブコンサルタント
金入 常郎 (かねいり つねお)
早稲田大学社会科学部卒業。会計系コンサルティングファームのデロイトトーマツコンサルティング株式会社へ入社。経営支援システムの導入支援に関わり、その後、採用・組織コンサルティング会社などにおいて、採用支援、組織の中間層強化、企業のブランディング、新規事業立ち上げなど様々なコンサルティングやプロジェクトに携る。
現在は、中長期経営計画の策定支援、その後の実行支援に携わり、マーケティング・理念浸透・組織強化などプロジェクトに関わっている。

理念はつくるよりも浸透させることのほうが難しい。必要なのは経営陣の覚悟

▲富士高フーヅ工業 高橋社長

グミキャンディ、ゼリー、製菓材料ゼリーなどの受託製造(OEM)を行っている富士高フーヅ工業の代表取締役社長に就任して、2021年現在で9年。社長就任当時、経営とは何かに悩み、本屋へ行っては経営の本を読み漁っていたと高橋 保裕社長は振り返ります。

高橋社長 「そういった中、社長の就任祝いということで、役員から本をプレゼントしてもらったんです。それが小宮コンサルタンツ代表の小宮 一慶さんの本でした。

読み進めていく中で、『そういえば、以前もこの方の本を読んだことがあるな』と思い出し、そこから小宮さんの本をいくつか読んでいきました。小宮さんの本はとてもわかりやすく、納得できる内容ばかりでした」

実際に話を聞いてみたいと、高橋社長はKC会員という制度で講演が聞けることを知り、2014年に、KC会員へ申し込みます。

高橋社長 「小宮さんの講演に参加するようになり、経営者として勉強になる話をたくさん聞くことができました。そこで、これまで自分が言いたかったことを小宮さんがうまく言語化してくれているという印象を持ったんです。 一方で、いざ社内で話をすると、なかなかうまく伝えられないという現実に直面しました」

そうした中、講演のプログラム内で、会員企業の経営者が話をするコーナーがあり、その話に出てきた課題が富士高フーヅ工業と似ていると感じる点があったという高橋社長。

高橋社長 「その経営者の方にもっと話を聞きたいと思い、尋ねたところ、小宮コンサルタンツの金入 常郎さんに支援をしてもらっているということを知りました。

そのタイミングで金入さんからも連絡をいただき、初めてお会いすることに。第一印象は、真面目で少し堅い印象でしたね」

先代の社長から高橋社長に交代後、グミ市場の成長をうまくつかみ、さらに設備投資を行うことで売上を拡大していました。

その当時は、高橋社長が営業面、実の弟である高橋 英治専務が総務・経理面を担当し、工場は元雪印の幹部が担当。売上とともに規模も拡大する一方で、部署間の対立や離職者の増加などの問題が浮上していました。

高橋社長 「属人的な判断による業務運営が原因のひとつでした。そのため、会社としての判断軸をつくる必要性を感じていたんです。

その課題の解決策について専務が検討していた際に、『経営理念をつくり浸透させることで判断基準ができ、中長期的に良い会社づくりを行っていける』と文献を通して知りました。

そこに可能性を感じ、小宮コンサルタンツの金入さんへ、あらためて声を掛けることにしたんです」

高橋専務 「金入さんと初めて会ったときは、思ったより若い方で経営の相談を任せられるのか少し不安に思った記憶があります。

しかし、話をする中で、その印象は変わっていきました。金入さんの話でよく覚えているのは『理念はつくることよりも浸透させることのほうが難しい。経営陣の覚悟が必要』と言われたこと。理念をつくり、浸透させていくことが自社を中長期的に良くしていくものだということを私たち自身も強く思っていたので、まさにその通りだと感じたんです。

その後、金入さんに具体的な進め方の提案をしていただき、小宮さんの会社の人であるということも踏まえて、話を進めることにしました」

幹部と管理職が対等に話し合える環境に。新プロジェクト始動の裏側

▲富士高フーヅ工業 高橋専務

2018年から理念浸透に向けたプロジェクトが始まりました。

高橋専務 「金入さんは、経営陣だけで理念をつくるのではなく、管理職も巻き込んでつくることを提案されました。その理由は、先ほどの話にあった、理念浸透まで頭に置いていたからです。

実際の現場への落とし込みを担うのは、管理職の社員です。その管理職の社員が理念を自分のものとして実感し、いかに現場へ落とし込んでいけるのかがポイントでした」

しかし、これまで管理職に対して「経営とは何か」という教育がされていなかったこともあり、まずは金入が研修という機会を通してトレーニングを実施していきました。

高橋社長 「振り返ると、ここは大きなターニングポイントでしたね。というのも、研修を通して、新たに経営幹部と管理職の間に大きな溝があることがわかったんです。

理念をつくっていくこともそうですが、現状の業務を進めていく上で、この課題に対して早期に解決をしていかなければならないと考え、金入さんに相談して経営幹部と管理職が会社の課題について議論する場をつくることにしました」

金入 「この議論の場を合同ミーティングという名で行うことになりましたが、とくに印象に残っているシーンがあります。合同ミーティングが立ち上がって間もないときのことでした。部署と部署の間にまたがる課題が宙に浮いていたこともあり、その点ついて、ミーティングの後に別途時間を取って社長と話をすることにしていました。

そうした中、そのミーティングの最後に専務が突然、『部署と部署の間の課題について総務部がその仕切りをする』という提案を出されたのです。総務部は、専務が統括されている部署でした。このとき、私はふたつのことを思いました。

ひとつは、『専務がやってしまったな』ということです。もちろん専務として良かれと思っての発言だと思いましたが、その提案は専務主導で進む可能性が高く、管理職の考えを尊重しない、これまでのトップダウンのやり方と変わらない手法になると感じたからです。

もうひとつは、『管理職がどう反応するか』ということでした。何も言わずに、『はい、わかりました』ということでは、会社は良くなりません。そこで、私はあえて様子を見ることにしたんです。すると、専務の意見に賛成する管理職もいましたが、何人かの管理職から納得がいかないという意見や反対の意見も出てきました。

最終的には、私が管理職側に立ち、管理職の意見を尊重して進めていくのが今回のミーティングの趣旨であることを伝えた上で、一旦、私にあずからせてもらい、この件についてあらためて社長・幹部で話し合いましょうという流れで終了しました。

その後、専務から幹部宛にメールがあり、『今回は私の考えが間違っていた。合同ミーティングの原点に立ち返って、管理職同士で話し合って進めていく流れをつくっていきたい。管理職の気持ちに応えることを優先したい』と伝えられていました。

私は、とても良い機会になったと実感しました。この機会を通じて、会社のことに対して、幹部と管理職が本気で意見をぶつけ合うことが今後できるようになると感じたからです」

高橋専務 「今考えると、ちょっと恥ずかしいですね(笑)。一方で、私は自分自身の姿勢が変わったと感じています。以前までは自分の考えがすべてだったのですが、他者の多様な意見を聞き入れられるようになったと感じています。

ミーティングでいろんな意見が出て、その意見に対して金入さんは絶対に否定せず、必ず良い部分を見つけて角度を変えてみることを示唆したり、前向きにコメントしてくださったり、そういう部分に触発されたのかもしれないです。自分目線ばかりじゃダメなんだなと思いました」

理念浸透の活動で見えてきた、社員の“前向き”かつ“主体的”な姿勢

▲合同ミーティングの様子

高橋専務 「『会社に対して意見を言い合う場」が今までありませんでしたが、金入さんがうまく関係がつながるようなセッションを担ってくれたおかげで、お互いの距離が近くなったと感じています。

加えて、みんなで顔を合わせて意見を交換する場が増えたことで、社内に安心感が生まれた印象もあるんです。今まで物理的な距離は近かったのに心の距離が遠かったんだと思います。

やはり、第三者の力は大きいですね。社内では言いづらいことも、金入さんは冷静に言ってくれる。そのおかげで、社内全体が言いたいことを言って良いという雰囲気になりましたね」

金入 「『全社視点で考える力』、『何が課題なのかを考える力』が上がってきていると感じています。継続的な取り組みの成果ですね」

高橋専務 「所属部署のことだけではなく、全体を考えた上での頼りになる発言が増えていますね」

幹部と管理職が議論できる環境が整い始めたところで、本格的に理念づくりがスタートします。

金入のファシリテーションのもと、管理職が他社の理念の事例を持ち寄り、富士高フーヅ工業の理念にどのようなものを取り入れたいかのイメージのすり合わせを行い、具体的なキーワードを挙げていきました。

さらに、自社の製品を通じて喜んでもらったエピソードを社員の方々からも集め、管理職と検討したキーワードとそのエピソードをもとに、社長・専務が理念のたたき台を作成。それを金入と一緒にさらに掘り下げていくということを繰り返し、理念づくりを進めていきました。

金入 「最終的にできた理念が『自然とこぼれる笑顔をつくる』というものでした。そして、その理念とつくられた経緯や想いを管理職の皆さんへお伝えし、この理念のもととなったエピソードをまとめたスライドムービーを流しました。

感触はまずまず、否定的な意見はなく、肯定的に受け止めてもらうことができたと思います。その後、行動指針・浸透活動の進め方についても同じ流れで検討・作成し、幹部・管理職の方々に共有しました」

高橋専務 「正直、管理職が本音ではどう思っているのかわからなかったため、その後の浸透活動に一抹の不安を感じていました。

また、当社の従業員は100人ほどいて、そのうち8割ほどが役職につかない一般の従業員。そして、さらにそのうちの9割ほどが製造現場で働く従業員で、どちらかというと寡黙な印象が強くて、コミュニケーションを取るのも苦手な方が多いということにも不安を抱いていました。そういった状況の中、理念浸透の活動がスタートしました。

しかし、我々の想いは良い意味で裏切られましたね。管理職にやらされ感はなく、前向きかつ主体的に浸透活動を率先して行う姿がありました。それにつられてなのか、製造現場の社員も前向きに捉えて取り組む姿がありました。

行動指針に対して個人ごとに目標設定をし、四半期に一度その振り返りを記入するのですが、その内容に前向きさが表れていて、本当に嬉しくなりました。

また、そこに上司からコメントを書いてもらうのですが、そのコメントも社員の良い部分を見ていないと書けないような内容ばかりで、この喜びを金入さんにも知ってもらいたいと思い、そのデータをすぐに送りましたよ(笑)」

高橋社長 「浸透活動もまだ始まったばかりですが、管理職の動きを見ていると今後にとても期待が持てます。あらためて良い社員がいるということと、これまで積み上げてきたことは間違いではなかったということを実感しています」

10年後を見据えた経営指針。“強くて良い会社”であり続けるためのしくみ

高橋専務 「経営理念の浸透もそうですが、最近あらためて感じるのが、中長期の自社の方針をしっかりと固めていくことが重要だと考えています。

理念と同様、中長期の方針は、社員の考える基準・軸になると思っています。それが明確になることで、社員はもっと自分で考えて動けるようになると思うんです。2年ほど前から金入さんにも関わってもらっていて、今後もっと力を入れていきたいと考えています」

高橋社長 「理念の浸透については、良いスタートを切りましたが、継続させていくことはそんなに簡単なことではないと思います。

管理職の意識ややる気に頼るのではなく、会社として活動がしっかりと継続していけるようなしくみや仕掛けを今後、考えていきたいですし、そこも引き続き金入さんと相談してやっていければと思っています。

ひとつ考えていることは理念の浸透度合いを数値化して定点観測をすることです。そこに対して目標を掲げて進めていけば、よりスピード感を出せると考えています。

小宮コンサルタンツさんに入っていただいてから社員も変わりましたが、専務との関係も変わりました。お互い自分優先で、バチバチすることもありましたし、近いがゆえに言わなくてもわかるでしょうと思ってしまうこともありましたね。

こういった機会を通してお互いの考えや意見を聞き、相手を尊重するようになったと思います。小宮コンサルタンツさんからさまざまな気づきを得るきっかけを与えてもらいました」

例えるならば互いに切磋琢磨している関係だと話す高橋社長は、こう続けます。

高橋社長 「新工場の投資に関わる案件では、金入さんは財務に対して深掘りをして分析してくださったり、忙しい中で我々の会社の改善のために資料をつくってくださったんです。

金入さんもがんばっているんだからとこちらもがんばろうと、互いに切磋琢磨できる環境が循環していたんじゃないかなと思っています。

ただ心地良いことを言うだけでなく、ちゃんと社内に入って伝えるべきところははっきり伝えてくれています。言いにくいことを言ってくれる、泥臭いこともやってくれる、そういう部分が重要なんだと思います。

我々だけではなく、管理職の社員も金入さんに直接相談したりすることもありますし、そこで良い方向に進んでいくこともあります。付き合いも長く、客観的な視点もあるので、そういった意味でいろいろなことを相談できる金入さんは本当に良いパートナーですね」

金入 「富士高フーヅさんとの取り組みは、対処法的なアプローチではなく、継続性と一貫性を持たせながら進めることを意識して関わらせていただいています。ここまでは順調にきていると感じています。

幹部・管理職の年齢が若く、素直で会社を良くしていきたいという想いを持った方が多い印象があります。従業員の方々とはまだそこまで関わったことはありませんが、行動指針の目標のコメントなどを読むと、一人ひとりが仕事に対して前向きに取り組んでいる姿が透けて見え、可能性を感じました。

2年ほど前から10年後を見据えた経営を行っていくための方向づけの支援に関わらせていただいていますが、今後はその関与をもっと濃くしていきたいと思っています。

社員の方々に理念だけではなく、今後のビジョン・中長期の方針についてもしっかりと指し示して、強くて良い会社となっていけるよう支援をしていきたいと思っています」

企業理念づくりから浸透までを共に歩んできた富士高フーヅ工業の皆さまと金入。「自然とこぼれる笑顔をつくる」という企業理念を胸に、また新たな目標へと歩み始めています。


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