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「マニュアル」ではなく「備忘録」

知恵のバトン
2022.10.25

知人のAさんが、子ども向けのサービス業でシルバー人材として勤めはじめました。その勤務先では、業務内容・業務プロセスが可視化されていません。場面ごとに従業員がどのような対応をすべきなのかが、各従業員の属人性に委ねられているようです。業務の全体像が把握しづらい状態で、何が子どもに対する適切な対応なのか、人によって解釈も違うそうです。

 

経験豊富なAさんはこの状況にとても違和感があり、業務の標準化・マニュアル化を提案したそうです。「マニュアルがあれば、メンバー間の業務品質のばらつきも少なくなって業務プロセスも安定・効率化する。新しく入ってくる人の困りごとも減る。自分が主導して作ることでよい」と説明しましたが、部門長や周囲のメンバーの反応は冷ややかだったそうです。

 

「うちのサービスは、マニュアル化するようなものではない。各場面でお客さまの顔を見ながら対応を考えるものだ。お客さまによっても求めていることは違う」というのが理由のようです。

 

そこで、アプローチを変えたそうです。「自分は学卒社員と違って若くないから、忘れっぽいんですよ。それで、いろいろな場面や場所でどう対応したらいいか忘れてしまわないように、備忘録をまとめています。これがサンプルです。よかったら、周りのメンバーとも共有したいのですが」 すると、部門長も周りのメンバーも「これは便利でいいね」とすんなり通ったそうです。結局は、Aさんの提案には現場のニーズがあったということです。

 

Aさんに言わせると、「やろうとしたことはまったく同じ、「マニュアル」を「備忘録」と言い換えただけ」です。

 

この出来事から感じたことは、大きく2点です。ひとつは、「ものは言いよう」です。

 

同組織のメンバーは、「マニュアル」と聞くといかにも機械的な響きがし、冷たいイメージがするようです。人相手のサービス業、それも子ども相手が主な仕事ということで、「決まった通りに杓子定規にするためのものは容認できない」とでもいうような拒否反応があるのでしょうか。

 

マニュアルとは本来そのようなものではないと思います。その商品・サービスを使うユーザーの視点に立って、品質を安定させ、より便利に使っていただく結果につながる考え方、やり方をまとめたもののはずです。相手や場面によって対応に可変性のある業務であれば、それを踏まえた上でマニュアル化すればよいだけです。また、どんな相手であっても落としてはならない共通の作業や手順もあるはずです。

 

しかし、聞き手がそのような認識をしていない場合は、ひたすらマニュアルの意義を説明しても理解が得られるとは限りません。聞き手が拒否反応をもつ言葉をわざわざ使わなくても、受け入れやすい別の言葉を使って物事が進むのであれば、それに越したことはないと思います。

 

もうひとつは、具体的な事例を示すことの有効性です。上記の例では、試しに作ったサンプルも見せながら説明しています。「マニュアル化」とだけ聞くと身構えてしまう聞き手も、「備忘録」と聞きさらに具体的な仕上がりイメージもあることで、「これはいいね」となったのでしょう。

 

相手や抵抗勢力が受け入れにくいことも、アプローチを少し変えれば展開がまったく変わるかもしれない。どの組織でも当てはまる事例だと思います。


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