最近スーパーの卵売り場を見ているとサイズ無選別のパック卵が増えてきました。一般的にパック卵はMやLなど同じサイズのものを揃えて販売していますが、無選別は複数のサイズの卵が混在してパックに入っています。昨今の卵不足のなか、少しでも無駄をなくし供給量を増やすための策なのでしょう。実は我が家ではこの無選別卵をエッグショック前から好んで購入していました。無選別卵は余剰なサイズの卵を無駄なく出荷できる分、安
く購入できるからです。
競争戦略で有名なマイケル・ポーターは「戦略の本質は、何をやらないかを選択することだ」と言っています。何かをやめればその分、コストを抑えることができます。抑えたコストを価格に反映させて低価格で商品・サービスを提供することもできますし、同じ価格で提供する場合には他の部分にコストを掛けてより付加価値を高めることもできます。それが独自性となり競争優位に繋がります。
熊本に工場を新設することで話題になった、世界最大の半導体受託製造企業のTSMCという会社があります。元々半導体メーカーは半導体チップの設計から製造までを自ら行う垂直統合型メーカー(IDM)が一般的でした。しかし半導体の製造設備は莫大な投資コストがかかるため、中小半導体メーカーは大手半導体メーカーの余剰となった製造設備を借りて製造するというケースが多かったです。しかし、その場合、中小半導体メーカーと
しては常に最重要資産である知的財産権流出のリスクを抱えていました。そこでTSMCは自社製の半導体チップの設計は手掛けないという道を選択しました。自社製の半導体チップの設計を手掛けないことで、他の企業が安心して製造を委託できる仕組みにしたわけです。また設計という機能を持たず製造に集中する分、結果的に低価格・高品質の製造受託をすることも可能になりました。
「何でもできる」は「何もできない」と一緒という言葉がありますが、供給過剰の世の中において、何を持って他社と差別化するのかということを明確にしないと、お客さまに選んでもらえません。そして何かで他社より優位性を持つためには、そのコストの原資を得るために何かをやめる必要があります。前述のマイケル・ポーターは“たいていの事業には、「最高」なるものは存在しない。”と言っています。特に中小企業の場合は資源も限
られているため、自社のターゲットとなるお客さまを明確にして、そのお客さまに選ばれる独自性を追求していくべきです。