真の“人的資本経営”は経営幹部、社員の主体性を引き出すことから | コンサルタントコラム | 中堅・中小企業向け経営コンサルティングの小宮コンサルタンツ
loginKC会員専用お問い合わせ

コンサルタントコラム

ホームchevron_rightコンサルタントコラムchevron_right真の“人的資本経営”は経営幹部、社員の主体性を引き出すことから

真の“人的資本経営”は経営幹部、社員の主体性を引き出すことから

知恵のバトン
2024.06.11

昨今、上場企業を中心に“人的資本経営”なるテーマが重要視され、取り組み事例が開示されています。このテーマ自体はずっと以前(私の知る限り90年代後半)から議論されている経営課題です。或いは、創業者の精神(社是・会社の根本理念)や遺訓を重視して経営されてきた会社さんであれば、何をいまさら、との感をお持ちかと思います。現在パーパス経営や理念経営(共通の目的・価値観を求心力にすることで企業の外への成果を高める経営)を当然とし、その事例の蓄積がプライム上場企業を中心に進んでいますが、人的且つ財政的に相対的に余裕のない中堅中小企業ではこのテーマすら「何のこと?」と思われる経営者さんも少なくありません。理念経営については昭和53(1978)年に松下幸之助さんが『実践経営哲学』のなかで次のように語っています。
「〝事業は人なり〟といわれるが、これはまったくそのとおりである。どんな経営でも適切な人を得てはじめて発展していくものである。いかに立派な歴史、伝統をもつ企業でも、その伝統を正しく受け継いでいく人を得なければ、だんだんに衰微していってしまう。(中略)
 それでは、どのようにすれば人が育つかということだが、これは具体的にはいろいろあるだろう。しかしいちばん大切なことは、〝この企業は何のためにあるのか、またどのように経営していくのか〟という基本の考え方、いいかえればこれまでに述べてきたような正しい経営理念、使命観というものを、その企業としてしっかりともつことである。そうした会社としての基本の考え、方針がはっきりしていれば、経営者なり管理監督者としても、それにもとづいた力強い指導もできるし、またそれぞれの人も、それに従って是非の判断ができるから、人も育ちやすい。ところが、そうしたものがないと、部下指導にも一貫性がなく、その時々の情勢なり、自分の感情に押し流されるといったことにもなりかねないから、人が育ちにくい。だから経営者として人を得たいと思うならば、まずみずからがしっかりした使命観、経営理念をもつことが先決である。」
引用が長文になりましたが、まさに松下電器という巨大な組織を育んだ戦後最大の成功者による実践知です。ということは、中堅中小企業さんであれば、尚のことこの実践知は活かされるべきです。
ただし、立派な経営理念があるからと言って、すんなりと人財が育つことに結びつかないのが現在の“ややこしさ”です。この乖離(ギャップ)を生んでいる根本範囲は、よく考えれば当たり前のことですが、経営幹部はもとより社員一人ひとりの「主体性」の発揮如何にあります。先日とある上場企業さんのマネジャー層の研修で「理念を自分事にして主体的に働いてもらうことは可能なのですか?」という質問を受けました。答えはYESですが、どうすればよいか、は2000年以上前の古典にも最新の人的資本経営に関する研究データでも示されています。主体性を発揮するための取り組みとして会社ができることは、その発露を促進する環境を作ることだけです。あとは個人の問題・課題です。では具体的にどうすればよいか。紙幅の関係上これ以上具体的には書けませんが、個人の主体性発揮に相関が高いのは「教育研修」(特に日本の場合は独自の民族性に基づいた人間教育とかつての寺子屋のような個別教育)と組織開発(人間関係上の善い文化を育むこと)です。要すれば「学び続ける信念と謙虚さを併せ持ったリーダーのもと」で「切磋琢磨」することと「心理的安全性」の両方が統合された会社組織を目指すことです。ここから先は自ら研究(様々な碩学の知見を学習すること)と実践をすることです。知行合一です。一方、喧伝される「リスキリング」も重要ですが、相関的には上記2つの次に高い傾向にありますが、公共心を失いつつわが国ではあくまで自己効力感を向上させることに寄与している程度ではないでしょうか。先ずは心の変革、人間としてのアニマルスピリッツをリマインドすることの方がスキルよりも重要なのです。二宮金次郎が薪を背負いつつ読んでいた『大学』にあるように、いつの時代であっても本末転倒は許されないのです。

【コンサルタント:熊田 潤一】


お問い合わせCONTACT US

コンサルティング、セミナー、KC会員についてなど、
お気軽にご相談ください。